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児童セックスワーカーへの導線は野放しにする児童ポルノ法の問題点

TABLO / 2014年5月19日 16時25分

児童セックスワーカーへの導線は野放しにする児童ポルノ法の問題点

 前回に引き続き、児童ポルノ法のあまりに酷すぎる欠陥を指摘していく。今回は現行の児童ポルノ法によって "現場" がどれだけ混乱しているのか、また現行法でも改正案でも野放しにされてしまう妙な矛盾点などを取り上げる。

 まず、ごく最近話題になった「CG児童ポルノで初の摘発!」というニュースを覚えておいでだろうか?

(http://n-knuckles.com/serialization/series/news000129.html)

 記事でも何度か取り上げたニュースだが、現在行われている公判でちょっと気になる動きがあった。

『裁判所が改めて事件の重大性を認識! CG児童ポルノ裁判で被告人質問・冒頭陳述が急遽中止に』(http://otapol.jp/2014/05/post-898.html)

 5月14日の法廷で行われる予定だった、被告人質問、冒頭陳述が急遽中止になったことがわかった。過去2回の公判を通じて、裁判所が事件の重大性を認識したことが大きな理由だ。

 この事件は、昨年7月にCGで描かれた少女のヌード絵画を販売していた岐阜県在住の男性が、児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で逮捕されたもの。CGが「児童ポルノ」に当たるとする検察側に対して、被告の男性は、実際の写真をトレースしたものではなく、あくまで創作物であるとして無罪を主張している。5月14日の公判では、被告人質問と冒頭陳述が行われる予定であった。ところが、5月2日になり弁護団の山口貴士弁護士より内容の一部が変更になった旨のアナウンスがなされた。

 山口弁護士は「これまで単独の裁判官が担当していましたが、3人の裁判官による合議制になります」と言う。裁判官の数が増えるということは、"その事件が重要である"ということを示している。過去2回の公判を通じて、東京地裁はこの事件の重大性を認識したというわけだ。(続きはソース元でお読み下さい)

 この記事の著者である昼間たかし氏(マンガ論争などの著者)とは、以前から表現規制問題などで情報・意見交換をしていたのだが、彼は事件当初にこんな事を言っていた。

「これって発禁写真集を元にCG加工したからとか、実在児童が特定できるからとか、そういう次元の話じゃないかもよ? そもそも児童ポルノではないから、警察の望むようには裁けないかもしれない」

 私は当初この問題を「発禁処分を受けている幼女のヌード写真集をデータとして取り込み、CG作品だとして売っていたから摘発された」と認識していた。ところが、今回の法の専門家達の慌てようを見るに、どうやら昼間氏の指摘の方が事実に近かったようだ。

「とりあえず目障りだから適当な理由で拘束して罪状は後で考える」という、警察・検察の "いつものアレ" をヤラれてしまっただけという可能性まで浮上している。

 時期が時期だけに、裁判に関わる方々は「自分達の判断が今後の児童ポルノ法を巡る攻防に大きな影響を及ぼす」と重々承知しているはず。 それもあって迂闊な事が出来なくなり、今回の決断に至ったのだろう。 児童ポルノ法とは、現行のままでも「法の専門家ですらここまで緊迫する代物」なのである。

 次に「なんでここまで自主規制や摘発騒ぎが相次いでいるのにコレが無視されているのか?」という事例を出そう。

 この記事でも指摘したが、現行の児童ポルノ法では「子供を着エロ紛いのイメージビデオに出演させること」を裁けない。実物を見た事がない方にはピンと来ないかもしれないが、現在のジュニアアイドルのDVD作品は(一時よりはマイルドになっているものの)明らかに性欲を刺激する事を目的としているとしか受け取れない内容である。

 あちこち見えない方が不思議なデザインをした水着を着せてみたり、ぬいぐるみを相手にセックスの体位そのままの動きをさせてみたり「いったい児童ポルノ法とは何だったのか?」と言いたくなるような映像ばかりだ。にも関わらず、何故かこれらが摘発されていないのである。児童ポルノの改正案を見ても、こうした作品を取り締まれるような条文は追加されないようなので、これらは今後も合法という話になってしまいそうなのだ。

 児童ポルノ法成立前夜には、ジュニアアイドル業界は震え上がって萎縮していたものの、法律の文面が明らかになると一斉に網の目をくぐる作業に入った。そして 「水着はOKだけど下着はNG」だとか「室内で水着を着せると必然性がないからアウト」だとか「股間(衣装越しのスジ・ワレメ)を静止した状態で映すとNGだけど、一連の動きの中で映る程度ならOK」といった、よく解らない抜け道が見つかった。

 さらには下着に見える水着などが増えたため、今では水着を着せようと下着を着せようとスルーされているし、室内で水着はNGという点も各メーカーのチキンレースのお陰でなかった事にされているようだ。雑にぶった切ると「よほどの描写をしない限りほぼ野放し」になっているのである。

 児童ポルノ法の第二条の3-三にはこうある。『衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの』 このボヤ~っとした文面はいったい何を意味しているのだろう? こんな具体性の欠片もない文面を作ってしまうから、取り締まるべきものが取り締まれないのではないか?

 ジュニアアイドルと呼ばれる子供達は、早い子は10歳に満たない内からDVDのお仕事を始め、周りのオトナ達の言う通りにオマタを広げる。そしてAVと同じように本数を重ねるごとに内容が過激になっていき、10代半ばになると身体の成長もあってズリネタとして申し分ない内容になり、10代後半になるとロリコン層の射程距離から外れるため、ほぼAVと変わらないようなハードな内容で新たな層を取り込みにかかる。ここ何年かで「元アイドル○○ちゃんデビュー!」 というAV作品が増えているが、あれなどジュニアアイドルの成れの果てだ。彼女達は見事なまでに性の対象として消費されており、簡単なお仕事から慣れさせられているため、すんなりとAV業界に入って行ってしまう。彼女達の人生はそれで良かったのだろうか?

 本来児童ポルノ法とは、こうした子供をセックスワークの世界に放り込んで搾取するような行為を禁じるために施行されたのではなかったのか? マンガがどうの、アニメがどうの、単純所持がどうのの是非はさておき、このように子供がセックスワークから抜け出せなくなるようなルートが完成されている現状に何も手を打てない法律など存在する意味がない。

 そうかと思うと、海外で実際にあったような「子供の成長記録が児童ポルノだとして逮捕」という危険性が消えた訳ではない。(幼児と一緒にお風呂に入っている場面など、全裸シーンが含まれる可能性があるため)

 このようなやるべき事がやれていない法律なのに、明後日の方向を向いた規制ばかり追加して何がしたいのだろうか? 昨今の警察の無茶苦茶さを見る限り、冤罪で地獄に落とされる無実の国民が続出する事が目に見えているだろう。

 また、東京ブレイキングニュースに先月このような記事をアップさせて頂いた。

 この記事の中で『現時点でも未成年者を守る法律や条例は様々あるが、今回のJKリフレがどんな罪状で挙げられたか確認して欲しい。なんと労基法違反である。今後捜査が進めば何か他の罪が追加される可能性はあるが、現時点では「ソープやヘルスの類と同じようなシステムで、未成年者と客を個室に入れ、その中でサービスを行う業態」は、性行為さえなければ労基法違反にしかならないのだ』 と指摘したが、問題はAVやイメージビデオばかりではない。 こうしたJKリフレからプロの風俗の道へ進むコースも完備されてしまっている。

 さて、ここで児ポ法の第一条をもう一度読んでみよう。

『児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律』

第一条 <目的>

 児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的とする

 何度読んでも虚しくなることこの上ないが、最後に政治家の皆様に心温まる数字を教えて差し上げる。 児童買春の摘発件数の推移についてだ。

 昭和30年頃までは1600件以上あった児童買春の摘発件数が、昭和33年の売春防止法の完全施行により200件程度まで減少した。それが昭和60年頃に爆発的に増加してしまったのだ。 理由が何か解るだろうか? ずばりバブル景気である。バブル時代の拝金主義に染まったオトナ達が、それまでは買春ツアーといえば韓国や東南アジアがお約束だったのに、日本国内で日本人の少女を買い始めたのだ。これによって児童買春の摘発件数が700件以上に膨れ上がってしまった。

 そんな時代に好き勝手やって下さっていたオトナ達が、今さら子供を守るだなんだという建て前で、まともな効果が望めないガラクタのような児ポ法改正を推し進めている。もし本気で児童を性被害から守る気があるのならば、いっそプチエンジェル事件の真相解明でもしてみてはどうか? 親に虐待されるケースを別とすれば、どういう人間が子供を食い物にしているのか、それを防ぐにはどうすればいいのか、嫌でも解るだろう。

 お世話になっている永田町の古老が調べても肝心の部分で真相に届かなかった事件なので、是非とも新生・児ポ法はプチエンジェル事件にも本気で切り込めるような内容にしていただきたい。

Written by 荒井禎雄

Photo by bokeh burger

[Frameチャンネル]http://ch.nicovideo.jp/frame

 新宿歌舞伎町のBAR『Frame』で夜ごと繰り広げられるアングラ&フェティッシュワールドを、ニコニコユーザーの皆様に覗き見して頂くチャンネル。『東京ブレイキングニュース』の執筆陣(草下シンヤ・荒井禎雄)らによる「勝手に公開編集会議」を放送しています。記事に対するご意見ご要望などありましたら、ぜひご参加ください。

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