「死ね、クズ」万引き常習犯がスーパー店長に罵倒され、まさかの行動に

TABLO / 2014年6月11日 20時42分

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 ここ数年、お金を持っていない万引き犯が少なくなっている。無論、転売目的や高額品狙いの事案は別であるが、盗んだ商品を買えるだけのお金を持っているのに、買うのが勿体ないとか生活費の節約を理由に万引きする自分本位な被疑者が多いのだ。しかし、真の生活苦から犯行に至る者も数多く存在しており、その生活環境を聞かされて同情してしまうケースもある。今回は、筆者が遭遇した常習万引き犯の悲劇を、ここに報告する。

 都内にある中規模スーパーの店長から、惣菜や食品ばかりを狙って犯行を繰り返す中年女性の常習犯を捕捉してほしいという依頼を受けた。早速、現場に赴いて防犯カメラの動画を確認してみると、常習犯の顔は不鮮明な状態にあるものの、特徴的なロゴが入ったバッグに商品を隠し込んでいる現場は確認できた。店長に聞けば、いつも同じバッグを持って来店するというので、それを目印に警戒することにする。

 集中警戒を始めて三日目。例のバッグを持った女が、ようやくに現れた。手に取った商品を、次々と何食わぬ顔でバッグに隠匿する女の手付きは手馴れていて、その機械的ともいえる動きに瞠目する。そして、特売品のキャベツだけを購入した女は、バッグの中に隠した商品の金を払うことなく店外に出た。逃げられぬよう、盗品が満載されたバッグの持ち手に手をかけて、そっと声をかける。

「ちょっと、何するんですか! 離してください」

 人通りの激しい店の出入り口で声を荒げた女は、俺の手を振り払うべく自分のバッグを引っ張って逃走する姿勢をみせた。しかし、力の差は歴然としており、一歩も進むことができない。否認するなら警察を呼ぶと伝えると、諦め顔で犯行を認めた女は、嫌々ながらも事務所への同行に応じた。

 この日の被害は、生鮮食品や菓子、日用品など十四点にのぼり、被害総額は五千円ほどであった。盗んだ商品を買い取れるだけの金は持っているようだが、これを払うと家の電気が止められてしまうらしく、なるべくなら払いたくないと主張している。さらには、警察だけには言わないでくれと、土下座して懇願する始末だ。前回捕まった時に、今度やったら逮捕すると、刑事に脅かされたらしい。勝手な言い分ばかり主張する女に、万引きを繰り返していた理由を聞いてみる。

「離婚してから、生活保護をもらいながら障害を持つ子供をひとりで育てているんですけど、子供を置いて仕事に行くわけにもいかないし、病院とかにお金がかかっちゃって......」

 出会ったばかりの見知らぬ人に、自分の人生を告白されるのは、この仕事が持つ特異なところだ。その窮状を聞いて言葉を失っていると、傍らで話を聞いていた店長が吐き捨てるように言った。

「国から金もらって生活している上に、人様のモノを盗むとは、とんでもねえ野郎だな。ウチの店は、あんたの倉庫じゃないんだよ!」

「もう二度と来ませんから、警察だけは勘弁してください。いま生活保護を打ち切られたら、私達生きていけなくなっちゃう......」

 生活保護受給者が逮捕されると、刑事収容施設において最低限の生活水準が保証されるために、その支給を止められてしまう。そのことを恐れているようだが、この店は警察を呼ばない代わりに、店長が万引き犯を罵倒するスタイルだ。それを伝える訳にもいかずに見守っていると、怒り心頭の店長が泣きじゃくる女を追い込んだ。

「それなら、死んじまえばいいじゃねえか。どうせ生きていたって、人様に迷惑ばかりかけるんだからよ。この、クズ。金払ったら、とっとと帰れ。二度と来るんじゃねえぞ!」

「店長、いくらなんでも、ちょっと言いすぎですよ」

 痛烈な言葉を浴びせ続ける店長を制止すると、黙って涙を零していた女が呟いた。

「私に生きる価値がないことくらい、言われなくてもわかっています......」

 結局、盗んだ商品の代金を支払わされた女は、二度と来店しないという誓約書を店に差し入れることで解放された。

 およそ三十分後。この日の業務を終えて最寄り駅に向かうと、数台のパトカーと救急車が駅前を占拠していた。耳に入る通行人の話によれば、ちょっと前に人身事故が発生したようだ。うんざりした気持ちで運行状況を確認するべく改札に向かうと、駅員に先導された救急隊員が担架を持って歩いてきた。

(あのバッグは......)

 驚くべきことに、救急隊員に付き添う駅員の手には、先程捕捉した女のバッグがあった。店長に罵倒され、自分に生きる価値がないと呟いた彼女の姿が、鮮明に思い出される。彼女の子供の行く末を案じ、言い知れぬ絶望感に支配された俺は、警察に引き渡しておけばよかったと後悔した。すぐ店に引き返して、目の当たりにした事実を店長に報告する。

「まさか本当に死ぬとは思わなかったな。俺は間違ったこと言ってないけど、誤解されても困るから、余計なことは言わないでおいてくれ......」

 翌年、この店長は、五十六歳の若さでこの世を去った。死因は不明だが、仕事中に事務所で倒れて、そのまま息を引き取ったという。女が涙を流した場所で倒れたことに、因縁めいたモノを感じたのは言うまでもない。

 罪を憎んで人を憎まず。

 商店の皆様には、こうした悲劇を繰り返さないためにも、この精神を忘れることなく万引き犯に対応していただきたいと願う。

Written  by伊東ゆう

Photo by m-louis

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