大手メディアまでが毒されるヘイトの病根 差別を煽動する雑誌に市民権を与えたのは誰か|青木理
TABLO / 2019年9月7日 16時37分
批判を浴びた『週刊ポスト』の嫌韓ヘイト特集。その背景が何かといえば、「貧すれば鈍す」に尽きると思う。少し前の『新潮45』と同様、雑誌の売り上げが軒並み苦境に陥って久しいなか、どうやら「一定の読者」がいるらしき「ヘイトビジネス」に大手出版までが手を出してしまった、と。
まことに憂うべきことではあるが、そういう時だからこそ、『ポスト』を声高に難じるだけでなく、あえて状況や物事を俯瞰してみたい。
果たして『ポスト』だけか。
もっと与太な差別扇動記事を連発している雑誌や書籍はいくつもあり、だからこそ『ポスト』も「この程度なら」と感覚を麻痺させることになったのではないか。
参考記事:室井佑月さんに聞くネット言論とヘイトとフェイク 「Twitterを始めて分かったこと」(前編) | TABLO
代表的なのが、新聞に毎号派手な広告を掲載する複数の月刊誌である。どんな形でも宣伝になるのは避けたいので誌名は記さないが、そのうち1誌の最新号の特集は「韓国という病」。批判された『ポスト』の記事見出しと相似形であり、そこには「反日で韓国は滅びます」「反日大統領の勘違い」「韓国の肩を持つ反日日本人」といった記事が並ぶ。
もう1誌は「さようなら韓国」などと題する別冊を出していて、その見出しを列挙すれば、「韓国人はなぜウソつきなのか」「文在寅に囁かれる『認知症』疑惑」「日本人と韓国人はまったく違う民族」……。
本来なら引用したくもない(引用すべきでもない)見出しを鼻をつまんで引き写したが、最低最悪という表現でも生ぬるいくらいのクズっぷり、明々白々たる差別扇動ヘイトの典型がここにある。
参考記事:能町みね子×吉田豪 対談『ヘイトとフェイクニュース』を語る|第一回 「あなたの正義」を疑え | TABLO
こんなものが堂々と出版されて書店に並び、それなりに売れてしまっているからまさに末期的、世界に恥を振りまいているのはお前らではないかと私は思うのだが、こうした現状に節操なき出版人が感覚を麻痺させてしまったのは間違いない。しかも政権がこうしたクズ雑誌に平然とお墨つきを与えているのだから。
先に紹介したうち「韓国という病」と題する特集を最新号で組んだ月刊誌には、特集の目玉企画として現職の経済産業大臣が対談に登場し、ほかにも外務副大臣まで誌面に名を連ねて韓国批判を繰り広げている。もう一誌には、少し前に首相自らが目玉企画の対談相手として登場し、「令和の国づくり」なる提灯記事が誌面を大々的に飾っている。いずれもまるで“政権広報誌”と見紛うばかりではないか。
もちろん、いくら政権が後押ししているといっても、こうした恥知らずな月刊誌などとは一線を引き、大手出版には大手出版なりの良識と自制が必要であって、だからこそ『ポスト』の安直なヘイト特集に批判が集中した。その点は私もまったく異論がない。
おすすめ記事:「韓国の話するとキーキー言う人多いね」 元AKB48・大島麻衣さんが“韓国好き”を批判されてファンと大激論 | TABLO
ただ、こうした恥知らずな月刊誌に“お上公認”のお墨つきを堂々と与えてきた政権の責任は見逃せない。そこを問わずして『ポスト』誌を批判するのは、悪化する病状に対症療法を加えるようなものであって(対症療法はもちろん必要だが)、病根はそのまま放置されているに等しい。
以下は余談になるが、振り返ってみれば、こうした恥知らずな月刊誌に集うような面々は以前から一定程度はいた。それを右翼とか保守とか呼ぶべきかどうかはともかく、以前なら道の端っこに佇んでいるだけで、「変わったことを言っているおかしな人たち」とみなされ、蔑まれ、相手にもされていなかった。
だが、現政権の登場とともにはしゃぎ、次第に道の真ん中を堂々と歩き、ついには平然とレイシズムをばらまくような風景が常態化してしまった。結局のところ、そうした奇矯な連中やレイシズムに一種の“市民権”を与え、さらに拡散させてしまったという意味で、現政権の罪こそが問題の核心なのだと私は考えている。(文◎青木理)
あわせて読む:「戦争で取り返すしかない」 丸山穂高議員、杉田水脈議員らネトウヨ議員は『言論の自由』を謳歌しています|久田将義 | TABLO
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
都内イタリアンの人種差別に非難殺到。「ヘイトを見過ごしてはいけない 放っておくと人が死ぬから」
オールアバウト / 2024年7月19日 11時20分
-
書店には放火予告まであった…一度は発売中止になった"トランスジェンダー本"がアマゾン1位のワケ
プレジデントオンライン / 2024年7月9日 9時15分
-
有名小説家、トランスヘイトに加担か。否定するも批判の声止まず「こんな人だったんか」「ひどい内容」
オールアバウト / 2024年7月3日 18時10分
-
中国で過激な反日言論の「大粛清」―台湾メディア
Record China / 2024年7月1日 21時0分
-
中国ネット大手、反日ヘイト投稿を批判 母子襲撃受け
ロイター / 2024年7月1日 15時23分
ランキング
-
1立民・野田氏、代表選出馬に慎重=「保守系」望ましい
時事通信 / 2024年7月22日 16時19分
-
2東海道新幹線の復旧遅れ 「衝突した保守車両、破損ひどく」
毎日新聞 / 2024年7月22日 20時54分
-
35歳娘と52歳父親の遺体見つかる 父親はダムに浮かんだ状態、娘は橋の付け根の土台に横たわる
MBSニュース / 2024年7月22日 19時15分
-
4「金を出せ」郵便局に強盗 “刃物”を持った30代くらいの男が現金約150万円を奪って逃走 奈良・下市町
MBSニュース / 2024年7月22日 21時40分
-
5「人によって態度変わる」石丸伸二氏、ビートたけしの前では“借りてきた猫”に批判殺到
週刊女性PRIME / 2024年7月23日 6時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)