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巨人・原監督の深すぎる愛と笑顔の物語...プチ鹿島の『余計な下世話!』vol.46

TABLO / 2014年6月3日 11時0分

巨人・原監督の深すぎる愛と笑顔の物語...プチ鹿島の『余計な下世話!』vol.46

 

「原辰徳」という名前を聞いて、あなたはどんなイメージが浮かぶだろうか。「どこか軽く見られる」人ではないだろうか。

 現役時代は長嶋・王と続く巨人の四番を任されたために、実績は決して悪くなくても「プレッシャーに弱い」「お嬢様野球」とマスコミに叩かれ続けた。

 監督になってからは巨人を何度も優勝させ、WBCの日本代表監督で世界一になったが、時代を代表する名将扱いは受けていない。どこか軽く見られる。

 たぶん、あの爽やかすぎる笑顔なのだと思う。原が爽やかな笑顔でしゃべるほど心に響かない。右から左に抜けてゆく。かつて原が監督に就任して「ジャイアンツ愛」と爽やかに言いだしたときには世の中にはクスッとした笑いが発生した。それはアンチ巨人だけでなく巨人ファンにも。なんなら巨人の選手も。

 むしろ空虚さすら感じさせるあの原辰徳の笑顔って一体なんなのだろう。私はずっと不思議だった。そんなとき、その名もズバリ『ジャイアンツ愛 原辰徳の光と闇』(赤坂英一・著)を読んで答えが遂にわかったのだ。2003年に出版された本である。

 これを読むと、原辰徳に対しての認識が変わる。原辰徳が明子夫人と結婚したのは入団6年目のこと。「6歳年上のバツイチ女性と結婚」というので、当時アイドル視されていた原の結婚相手としてはなんだかイメージが違うな、と少年だった私もザワザワした覚えがある。この本に「真相」が書いてあった。

 本当は入団1年目のオフに原はプロポーズをした。しかし野球の師匠でもあり絶対的な存在である父親の貢氏に反対されたのだ。いつしか交際は途絶え、彼女は別の男性と結婚してしまった。

《失意に沈む原の元に、次から次にCM出演の依頼が持ち込まれた。合計七社。いくら巨人が原の売り出しに血眼になっていた時期とはいえ、尋常な数ではない。貢が、動いていた。七社のうちには、貢を通して持ち込まれた話もあった。戸惑う息子に、貢は言っている。「CMに押し潰されたらプロじゃない。プレッシャーをはねのけていい成績を残してこそ価値があるんだ」》「ジャイアンツ愛 原辰徳の光と闇」

 予想を超える厳しい師弟関係がうかがえる。

《テレビに、新聞に、雑誌に、原の爽やかな笑顔が溢れ返った。ファンの好感度を高め、消費者の購買意欲を煽る<若大将>を、原はきっちり演じきった。最愛の人を失って悲嘆に暮れていようとは、想像だにできないほどの完璧さで。あの爽やかな笑顔が時折不自然なまでに作り物めいて見えるのは、このときの経験に由来しているのだろう。》「同」

 そう、原辰徳のあの爽やかすぎる笑顔はそもそも「不自然」なものだったのだ。あの笑顔は世間に対して本音を見せない「技術」だった。爽やかすぎて違和感があるのも実はそういうことだったのだ。

 この後、原はスランプに陥る時期が多くなり、マスコミから袋叩きにあう。しかし1985年のシーズンになると、原のバットは復活の兆しを見せる。実はこの年、原は明子と再会していたのだ。彼女は離婚していた。今度は父親・貢の反対を押し切って原は一直線に結婚まで突き進んだ。

《この結婚は、原辰徳という人間像に新たな側面を与えた。いっそのこと、魅力と言ってもいい。ジャイアンツの監督に就任した原が世間の失笑をものともせず、<チーム愛>、<ジャイアンツ愛>、<巨人軍愛>、と<愛>という言葉を連発した源泉がここにある。原にとって、<愛>とは、最後まで貫き、堂々と言葉にして表すのもなのだ。》「同」

 なんと、原監督が使う「愛」はガチだったのだ!

 もしかしたら数年前の「浮気に1億円」騒動のときも愛情が深すぎてあんなことになってしまったのかもしれない。やはり「原はプレッシャーに弱かった」のかもしれない。それはともかく、原が愛を語るときはいずれにしても本気なのである。

「父・貢」の、時には深すぎて巨大すぎる愛に鍛えられてきた原。

 先週、貢氏の死去が発表された。翌日の各報道を見ると、待ち構えていた報道陣に原はやはり笑顔だったらしい。「原監督が穏やかな表情で報道陣に挨拶」という見出しもあった。

 人前に出る限り、原辰徳は笑顔なのだろう。「どこか軽く見られる」とか「爽やかすぎて空虚」とか思っていてすいませんでした。

Written by プチ鹿島

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プチ鹿島●時事芸人。オフィス北野所属。ニッポン放送「プチ鹿島と長野美郷 Good Job ニッポン」金曜18:00-20:50 ◆TBSラジオ「東京ポッド許可局」◆書籍「うそ社説 2~時事芸人~」◆WEB本の雑誌メルマガ ◆連載コラム「宝島」「東スポWeb」「KAMINOGE」「映画野郎」「CIRCUS MAX 」

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