政治力学で専制政治から独裁国家へ...問題山積みの安倍政権 by岡留安則

TABLO / 2014年6月4日 13時35分

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元『噂の真相』編集長・岡留安則の「編集魂」

 

 集団的自衛権行使容認に向けた衆議院、参議院の予算委員会が開かれた。安倍総理が、この集団的自衛権行使へのこだわりの意欲だけはよくわかったが、答弁がどうにも行き当たりばったりで、国民や世論の支持を得るのは難しいだろうと痛感できた。

 自ら指示してつくらせたというパネルも、目的のためには手段を選ばずという電通流の意図が透けて見える。有識者や専門家たちの意見も極端な想定しにくい局面を突きつけて、「それでいいんですか」と国民を恫喝する手法であることを的確に指摘していた。

 現行法で十分に対処可能な局面をわざわざグレイゾーンとしてデフォルメしているのも、最終目的の集団的自衛権行使に向けてのステップを踏んでいるつもりなのだろう。むろん、連立を組む公明党が慎重姿勢を崩していないために、そこに楔を打ち込む作戦でもある。

 安倍総理が御用文化人を集めて作った「安保法制懇」に対抗して「国民安保法制懇」も結成された。孫埼享元外務省国際情報局長、伊藤真弁護士、小林節慶応大学名誉教授、柳沢協二元官邸秘書官らが名前を連ねている。御用文化人の安保法制懇より格段に優秀なメンバーが集まっている。

 安倍総理は先の記者会見で「国民の生命と財産を守る」と何回も繰り返した。だったら、福島第一原発のメルトダウンを教訓にして脱原発へのエネルギー政策に転換すべきではないのか。

 いまだに原発施設内では放射能汚染水が垂れ流され、廃炉への道筋はおろか、汚染物質の最終処分場も決まっていない。原発を再稼働すれば、こうした根本的な課題にどう対処するつもりなのか。国民の生命と財産を守るというのは安倍総理の口先だけの美辞麗句にすぎない。

 水面下で進むTPP交渉も牛肉、豚肉の関税引き下げの方向で進むでいるようだが、既に国民に対する公約破りの先行きも見えてきた。支持率の高さと一強多弱という政治力学を巧妙に利用してやりたい放題。専制政治から独裁国家への道を歩もうとしているのは明白だ。

 そんな中、日本維新の会の橋下徹共同代表と石原慎太郎共同代表が名古屋会談で分党を決めた。直接的には石原慎太郎代表が自主憲法の制定にこだわったことで、結いの党との連携、野党再編を模索する橋下代表との路線の対立が決定的になった。しかし、太陽の党を解体して日本維新の会を旗揚げした当時から、個性と独断が際立つ石原、橋下の対立シーンは目に見えていた。よほどの信頼関係が無いと一隻の船に船頭は二人いらないのだ。石原代表を支持する平沼赳夫議員らのグループは本来の保守タカ派で一本化して原点に戻るのだから、元の鞘に戻ったという事でしかない。これで、老齢の石原代表の政治生命も収束に向かうのではないか。

 むろん、石原抜きとなった日本維新の会の先行きも不透明である。維新の会は結の党よりもみんなの党に路線が近いだけに、民主党の一部を巻き込んだ野党再編も一筋縄ではいかないだろう。民主党内の前原グループには期待しない方が賢明だ。

 結局一人ホクソ笑んでいるのは、安倍政権のみである。集団的自衛権行使に関しては連立与党の公明党との協議が待ち受けているが、政権与党の旨みを知り尽くした政党がそう簡単に下野するとは考えにくい。しかし、連立政権がバラけることで、よりダメージを受けるのは自民党の方である。公明党の極力なしには、自民党は議員数を大幅に減らす可能性が高いからだ。

 集団的自衛権行使にしてもどこで歯止めをかけるのかも曖昧な答弁しかできなかった安倍総理だが、久々に意気揚々と記者会見に臨んだのが、北朝鮮との間で拉致事件の再調査合意だった。日本側は経済制裁の一部解除と人道支援などの方針を積極的に打ち出した。日朝の局長級会談は、今年に入って水面下で調整されてきたが、当初予想されたような電撃的成果までには至らなかった。

 小泉元総理が北朝鮮訪問で拉致被害者を日本に帰国させたことで支持率を上げた事例を安倍総理も期待していたのだろうが、日朝交渉の行方はまだ先行き不透明である。何よりも米国や韓国の意向を抜きに会談で成果を上げることは難しい。安倍、プーチンの親密関係もウクライナ問題で雲散霧消した事例を教訓化すべしである。

Written by 岡留安則

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