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児童ポルノ規制強化で揺れるアニメ・漫画・CGの立ち位置 by渋井哲也

TABLO / 2014年6月6日 15時30分

児童ポルノ規制強化で揺れるアニメ・漫画・CGの立ち位置 by渋井哲也

 児童買春・児童ポルノ処罰法の改正案が成立する見通しになった。4日の衆院法務委員会で審議が行なわた。従来の自民、公明、維新の三党合意があったが、それに民主、結いの党を含めた5党の実務者協議で改正案を修正した。これにより、児童ポルノの単純所持が禁止されることになる。

 なお、アニメ、漫画、CGに関しては、表現の自由が脅かされるとして検討対象から外した。ただ、問題視している議員は多く、「(同法とは)別枠で議論すべき」との声も多かった。

 実務者協議で修正された主な内容は、明確ではないとされていたいわゆる「三号ポルノ」の定義を、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等もしくはその周辺部、臀(でん)部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」とした。つまり、「殊更に児童の性的な部位(性器等もしくはその周辺部、臀(でん)部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり」が追加されたのだ。

「児童ポルノ」ではなく、「児童性的虐待描写物」に名称の変更を求める署名活動も展開されていたが、考慮されなかった。これにより、児童の性的虐待行為を撮影したものでも、「児童ポルノ」に入らなければ、規制対象にはならない。過去に児童の顔に精液をかけられた写真が「児童ポルノ」にならないとの判決もあった。

 児童ポルノの所持の処罰対象については、「自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至ったものであり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)」に限定した。また、盗撮も対象に入れた。

 ただし、自民、公明、維新の3党合意の際には、アニメ、漫画、CGと児童の権利侵害の関連性について調査研究を推進する、といった附則があったが、5党合意ではその文言は除外された。適用上の注意については、「学術研究、文化芸術活動、報道等に関する」が入り、これらの権利を侵害しないように留意することを例示した。関連団体からの反対の声が多かったことが影響した。

 今回の改正案で、アニメ、漫画、CGに関する調査研究が除外されたことで、表現の自由問題について決着がついたかのようにも見える。しかし、法務委員会での議論では、谷垣禎一法務大臣が「コミックスには、性的虐待を含むものがある。社会的害悪から逃れられない」との答弁があったり、「社会的害悪の表現を守るべきなのか?」といった声も大きかった。同法は、子どもの権利侵害を具体的に救済していくものであり、アニメ、漫画、CGを規制すべきかどうかの社会のあり方を問うものではない。そのため、「別枠で議論すべき」といった意見もあった。

 自民党は選挙公約で「青少年健全育成基本法案」を掲げている。自民党では1999年から「青少年社会環境基本法」の草案を公表したことがある。また04年には「青少年健全育成法案」を参議院に提出したことがあった。しかし審議未了で廃案となった。今回の改正案議論での「別枠」とは、いわば、児童ポルノの存在と関連事件との因果関係ではなく、「青少年の健全育成」の名のもとに、アニメ、漫画、CGの規制すべきかどうかだ。規制問題の議論はこれからが本番だと言える。

Written by 渋井哲也

Photo by halfrain

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