W杯日本代表に迫る危機!? ヤバすぎるブラジル犯罪事情
TABLO / 2014年6月6日 16時35分
Photo by ブラジル 裏の歩き方
いよいよ13日に開幕を控えたサッカーワールドカップ。日本選手たちの活躍も気になるところだが、ワールドカップ関連のニュースで目に飛び込んでくるのは「会場の設営が遅れている」「試合会場の近隣は治安が悪すぎる」などといったものばかり。本当にワールドカップは無事に開催されるのだろうか?
以前も当ニュースサイトでインタビューに答えてくれた旅行作家の嵐よういち氏が先日『ブラジル 裏の歩き方』(彩図社)という本を出版した。興味をそそられるタイトルだが、内容としては「一般的な旅行ガイドには載っていない、ブラジルのナイトスポットや治安情報、アングラ情報などを集めたもの」とのこと。
嵐氏は過去に10回以上、ブラジルに行き、その刺激的な空気を肌身で知っている。今回は嵐氏にブラジルの治安情報、そしてワールドカップ開催について尋ねてみた。
◇
――ブラジルの治安は悪いといいますが本当ですか?
「悪いよ。最近は特に物価が急上昇しているからね。『持つ者』と『持たざる者』の格差がますます激しくなってきて強盗被害などが増えているように感じる。ブラジルで日本食レストランを経営している友人がいるんだけど、その友人は『面倒を避けるために』それまで乗っていた高い日本車を売ってブラジル製の安い車に乗り換えたんだ。そうしないと強盗に狙われてしまうからね」
――ワールドカップは無事に開催されると思いますか?
「ブラジル政府は軍隊や警察を動員してファベイラ(※ブラジルの貧民街)のギャング団を壊滅させたり、警察官を大量雇用するなどしているけど、スリや強盗などの犯罪は避けられないだろうね。俺が過去に行ったサルバドールのカーニバルなんかになると、地元のギャングたちがそのイベントを狙って大挙して押し寄せてくるんだ。『観光客がたくさん来るから稼ぎ時だぞ!』ってね」
――観戦に行く人は気をつけなければいけませんね。スリや強盗の他に注意したほうがいい犯罪はありますか?
「金目的での誘拐だね。以前、俺がサンパウロに滞在しているときに起こった事件なんだけど、日本人旅行者のBが夕方宿を出てグアルーリョス国際空港に向かったんだ。広場まで地下鉄に乗って、そこからバスで空港まで行く予定だったんだけど、広場のバス乗り場がわからない。困ってしまったBが近くにいた黒人の若い2人組に場所を尋ねると『俺たちについてきなよ』と歩き出したんだ」
――嫌な予感しかしないんですけど......。
「黒人たちの後についていくと、突然1台の車の前で男たちの態度が急変した。さっきまでにこやかに冗談を話していたのに、真剣な顔付きになって『車に乗れ!』と言い始めた。Bはもちろん拒否しようとしたけど、1人の男がBの腹に拳銃をつきつけてきたんだ。
Bを乗せた車は郊外に向かって走り始めた。ブラジルではこういう監禁強盗の場合、ひとけのない場所に車を停めて、金目のものを奪ったらそのまま降ろされることが多い。だけど、このときは違った。車が一向に停まる気配がないんだ。
数十分間、車は走り続け、ようやく停車した。車から降ろされるとそこは見覚えのない住宅街の一角で、粗末な家屋が並んでいる。そのことからBはここはサンパウロに無数に存在するファベイラのどこかに違いないと思った。
男たちはBを一軒家に連れ込んで、現金、カード類、カメラ、パスポート、荷物など金になりそうなものはすべて奪った。カードの暗証番号も聞き出され、限界まで引き出されてしまった。もう金目のものは何もない。Bはようやく解放されると思ったが、男たちはどうしたわけかBを帰してくれずに、そのまま一軒家の狭い部屋に監禁されることになった」
――どれぐらいの期間監禁されていたんですか?
「一週間だ。強盗の仲間は5、6人いて、こまめにBの様子を見にきた。事情を知らない強盗たちの子どもも部屋に来ることがあって、子ども好きのBは彼らと一緒に遊んでいた。ある日、強盗たちが部屋で相談を始めた。Bをどうするのか、その処分を決めているんだ。1人の強盗が冷たい目でこう言った。
『盗れるものはすべて盗った。解放すればこいつは警察に行くはずだ。面倒だからここで殺してしまおう』。それを聞いて何人かの仲間が頷いた。ポルトガル語がわかるBは生きた心地がせずに頭から血の気が引いていった。だけど、その時、リーダー格の人間が異論を唱えた。『この男は子どもたちをかわいがっていた。子どもたちも懐いている。解放してやろう』ってね。それでBは目隠しをされて車に乗せられ、街の中心部で降ろされた。Bは命があっただけでよかったと心から言っていたよ」
――非常に怖いエピソードなんですが、今の話から得られる教訓とはなんでしょう?
「これはどの国でも言えることだけど、特に治安の悪いブラジルのような国になると、見知らぬやつについていくのはリスクを伴うということだね。そしてもちろん、夜間の外出やひとり歩きなんかは避けたほうがいい。こちらは『観光』しているつもりでも、強盗にしてみたら『獲物が舞い込んできた』ようにしか見えないかもしれないからね。あとは仮に飲食店なんかにいるときに強盗が襲ってきたときのことを想定してみよう。強盗は銃を持っている。もちろん抵抗するなんてもっての他だ。そういうとき気をつけなければならないことがあるんだけど、なんだと思う?」
――静かにしていることぐらいしか浮かびません。どうすればいいんですか?
「決して顔を見ないことだ。先程のファベイラに監禁されたケースもそうだけど、強盗たちは顔を見られることを極端に嫌がる。実際に俺の友人がある店にいるときに3人組の強盗団が押し入ってきた事件があった。友人は恐ろしさのあまり、俯いたまま強盗たちの指示に従っていた。すると突然、隣に座らされていた男の頭がライフルで撃ち抜かれた。俺の友人は、次は自分の番だと覚悟したが、強盗たちはすぐに立ち去っていった。後日、犯人の1人が捕まり、警察に供述をしたんだけど、なぜ、客を殺したのかという問いに『顔を見られたからだ』と答えたんだ」
――なるほど。これは役に立つことを聞きました......って、相当ヤバイ状況でしか使えない話ですよ。
「でも、ブラジルでは知っておいたほうがいい。いつ巻き込まれるかわかったものじゃないからね」
――なんだかサッカーではなく犯罪のワールドカップが催されるような気がしてきましたが、肝に銘じておきます。
「だけど、俺も注意喚起のために怖い話をしたけど、ブラジルはとても魅力的でいい国なんだ。そうじゃなかったら高い旅費と膨大な時間と手間を使って10回以上も遊びにいかないよ」
――ブラジルの魅力ってなんですか? まさか、女性が美人だとかいう理由じゃないですよね。
「それもある。他にもなんだその......まあ、空気感がいいんだよ、非常に」
――これ以上、突っ込むのはやめておきます。先日、嵐さんが出版した『ブラジル 裏の歩き方』(彩図社)には、「ナイトライフの楽しみ方」「ディープな観光スポット」「治安情報」「旅のお役立ち情報」などが満載のようですが、それを読めということでよろしいですか。
「そういうことだ」
――わかりました。本日は貴重な話をありがとうございました。
インタビューを終えて思ったのは、正直狙われたら防ぎようがないではないかということだった。嵐氏もブラジルなどの治安が悪い国になると、いくら注意をしていたとしても「ヤラれるときはヤラれる」という。
それでも、高級な時計やバッグを身につけない、ひとけのない場所に足を踏み入れない、ひとり歩きは極力避ける、夜間は短い距離でもタクシーを使う、街歩きで携帯電話は使わない(※特にスマートフォンは簡単に換金できるため標的になりやすい)ことなどに気をつければ犯罪遭遇率はぐっと下げることができるという。
現地入りして日本選手を応援する方々はくれぐれも注意した上で存分に楽しんでいただきたい。
連載:草下シンヤのちょっと裏ネタ
Written by 草下シンヤ
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