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ホテル女性殺害・高齢者殺人運転・通り魔・飛び降り自殺… なぜ世間を騒がせる事件は池袋で起きるのか

TABLO / 2019年9月22日 10時8分

雑司ヶ谷霊園から見上げるサンシャイン60(筆者撮影)

9月12日、池袋にあるホテルの一室で、圧縮袋に入れられた女性の遺体が発見された。警察はすぐに殺人事件として捜査を開始し、18日には埼玉県に済む大学生の北島瑞樹容疑者(22)を逮捕するに至った。この事件の方を耳にした時、「また池袋か」と感じた方も多いのではないだろうか。

記憶に新しいところで言えば、母子二人が亡くなった高齢者の暴走運転や、危険ドラッグ使用者による暴走運転により死者を出した事件など、ほかにもサンシャイン60からの飛び降り自殺なども思い出され、池袋は殺しや死のイメージが強い。都内でも屈指の繁華街なので、当然という向きもあるとは思うが、私たちのこうした直感は意外に間違えていないかもしれない。

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引っ越し先を探す際に「水場の近くは避けよ」という話もある。これは、オカルト的で非科学的な言説ばかりでなく、統計学や風水などの科学や長い歴史に裏打ちされたものであることも多い。

「池袋」という地名の由来は、事件現場と同じ現在の西池袋にかつてあった「袋池」という池である。池袋もやはりその名の通り、水場が元になった土地なのである。こうした場所には幽霊が出るというような話には眉唾だが、水の多い湿地やかつて湿地であった場所は、時代が流れ街の様子が変わってもその奥に通底する「ジメジメした地場」が変わらないということは、文化人類学者の中沢新一氏も著作「アースダイバー」などで詳らかに語っている。

この袋池は水源だったようで、現在は埋め立てられ暗渠となっているが、ここから弦巻川が始まっており、その痕跡は今も南池袋に弦巻通りという道の名に残っている。その先は、雑司が谷霊園。やはり「水と死」は常にそばにあることがわかる。

事故物件サイト「大島てる」を見ても、今回の事件現場となったホテルの周りは、飛び降り自殺や殺人の現場がいくつも見つかるし、その流れはこの街が人がまだ繁華街ではなかった江戸時代にまでさかのぼることができるのである。

参考記事:元関東連合・石元太一氏が答える 絵本作家のぶみさんが総長だった『池袋連合』について|久田将義 | TABLO

8代将軍吉宗の治世であった享保年間、池袋では追い剥ぎや辻斬り(通り魔)があとを断たなかった。そして享保6年、一晩で17人もの死者を出す辻斬り事件が発生。現場は血の海の中に死体の転がる凄惨なものだったという。それを受けて、池袋四面塔稲荷大明神が建立され、雑司が谷鬼子母神の高僧が供養にあたった。この四面塔は現在も残っており、その場所が今回の事件現場から線路を挟んで目と鼻の先なのだ。表向きと第一義はもちろん死者の供養であったが、殺しの繰り返される土地の「祓い」の意味も大いに込められていたことは想像に難くない。

四面塔からもわかるように、鎮魂や祓いには「塔」を建てることが多い。池袋の塔といえばサンシャイン60が思い浮かぶ。ご存知の通り、あの塔はかつて巣鴨プリズンと呼ばれた旧東京拘置所があった場所だ。ここでは東条英機をはじめとしたかつての英雄が、何人も死刑に処されている。雑司ヶ谷霊園から、このサンシャイン60がよく見えるが、その眺めはまさに墓標そのもので、深層心理で鎮魂と祓いが行われているように感じられるのである。

こんなにも祓いを行なっても、池袋から「死」が剥がれないのはなぜか。

それは同じく池袋という地名から見ることができる。「池」という字から水場であったことが偲ばれるが、一方で「ふくろ」の語源は「ふくらむ」という動詞である。その言葉にはとりもなおさず「増殖」の意味が込められており、前述した通り袋池が水源であったために、ふくらむ(増殖する、湧き出る)池としてこの名がついたことがわかる。

つまり、池袋はたんなる水場ではなく渾々と水の湧く場所だったのだ。古くから現代に至るまで、いくつもの祓いが行われても池袋から剥がれ落ちない「死」の影。それは、今でも多くの人が行き交う池袋のアスファルトの下に湧き出る水から来ているのかもしれない。(文◎Mr.tsubaking)

あわせて読む:「元官僚」で「上級国民」だから私刑に処するのか 71歳男性が90歳女性を轢き殺した裁判を思い出した池袋の母子死亡交通事故 | TABLO

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