車暴走「脱法ハーブ」の実態とは? 不倫カップルによる使用例も

TABLO / 2014年6月30日 14時0分

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 6月24日の夜、東京・池袋駅近くで暴走した車が歩行者を次々にはね、1人が死亡、6人が怪我をするという事故が起こった。自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致傷)の疑いで現行犯逮捕された名倉佳司容疑者(37)は警察の調べに「運転前に脱法ハーブを吸った」と供述しているという。

 以前から脱法ドラッグの吸引が原因と見られる事件・事故は数多く報告されている。2014年5月には長野県で脱法ドラッグを吸引後無免許で車を運転した19歳の少年が1人を死亡、4人に怪我を負わせる事故を起こしている。また、2012年10月には東京都練馬区で脱法ドラッグを吸った上半身裸の男が小学校に乱入し、児童を追いかけまわして怪我をさせるという事件も起こっている。

 わたしも脱法ドラッグを吸引したことがあるからわかるが、吸引後、自らの気分や意識がコントロールしにくくなり、不安定な状態に陥った。過去にさまざまな非合法薬物を経験したことがあるわたしでさえそうなのだから、「警察に逮捕されないから」などという理由で手を出した薬物経験のない人間が激しい混乱状態に陥ることは容易に想像できる。

 厚生労働省は2013年3月に脱法ドラッグの主成分772物質を新たに包括規制したが、その後もトラブルは頻発している。今回は1年ほど前まで脱法ドラッグ店で店員をやっていたわたしの知人O氏(32歳・男)に話を聞いてみた。

――今回の事故をどう思いましたか?

「どうもこうもないよ。あー、またバカがやったかって感じ」

 死者が出ているにも関わらず、O氏は見下すような口ぶりで答えた。

――Oさんは1年ぐらい前までショップで店員をやっていましたよね。なぜ、やめたんですか?

「警察もうるさくなってきたしね、規制も厳しくなるっていうからやめたよ。その頃はイリーガルネタもやってたから、マークが厳しくなってパクられるなんてシャレにならないでしょ」

 O氏とは10年以上の付き合いになるが、昔から重度のジャンキーだった。今はやめたというが、どこまで信じていいのかはわからない。

――脱法ドラッグ店のバイト代はいくらでしたか?

「1000円。ま、基本的には楽な仕事だし、不満はなかったよ」

――お客さんはどんな人が多いですか?

「いろいろいるよ。イリーガルをやったことがなくてこれなら捕まらないからやってみたいっていう若い子も多いし、絶対に不倫セックス目的だろうっていう気持ち悪いおっさんもいるし、カップルもいる」

――やけにドラッグに詳しい客は?

「来るよ。昔はイリーガルやってたけど社会人になって今はやめてますっていう感じの人。俺としては親近感を抱くけど警戒はしていたよね」

――警戒というと?

「警察が内偵に入っているかもしれないからさ。商品は建前上、観賞用、お香って言って摂取は勧めちゃいけないだろ。警察の指導がうるさくなってオーナーもナーバスになってた。だから『これを吸ったらどうなるんですか?』とかって聞かれたら、こっちも相手を見るようにしていたよね」

――どういうところを見るんですか?

「本当にドラッグのことを知っているかとかキーワードで探るんだ。『お客さん、箱とか行くんですか?』って聞いてクラブに行ってるか探るとか、『ウィドー(※ホワイトウィドー。マリファナの品種)っぽいって言う人もいるけどどうなんですかね?』って言って反応見るとかね」

――Oさんは脱法ドラッグをやったことはありますか?

「もちろんあるよ。商品のテイスティングをすることもあるし、俺も嫌いじゃないから」

――なにか怖い体験をしたことはありますか?

「何度もある。キマった状態で近くのコンビニに行ったときのことなんだけど、買い物を終えて自分の家に戻っている途中でグリングリンになってきて帰り道が分からなくなった。自分が自分じゃなくなった気がして猛烈に不安になったね。たまたま通りかかったタクシーを停めて、なんとか住所は頭に残っていたから運転手に伝えたんだ。運転手がナビに住所を打ち込むと、その道の30メートルぐらい先が俺の家だった。家の前まで乗せてもらったけど、こんなことも分からなくなるんだと思うと、本当に怖かったよ。こういう経験があるから、合ドラをキメたまま車の運転をするなんて正気の沙汰じゃないと思うね」

――他にヤバイ経験はありますか?

「家の風呂で溺れたりとか、勘ぐり入って部屋から一歩も出られなくなったりとか、そんな話はいくらでもあるけど、ダチの中にはヒドイのもいるよ。彼女のことが化け物に見えてエグイDVやってパクられたりとか、合ドラにハマりすぎて精神病院に入院しちゃったやつとかね」

――やはり危険性が高いということですね。厚生労働省による包括規制の効果は出ていると思いますか?

「店をたたんだやつもいるし、俺だって店をやめた。そういう意味ではまったくの無意味じゃないと思うけど、正直どうだろうね。合法ハーブって言ったって植物を育ててるわけじゃない。合成した化学薬品を霧吹きで植物に吹きかけてるだけなんだから、規制逃れの新商品なんていくらでもできるよ」

――その過程でより危険な効果をもつ薬物が生まれているという見方もあるようですが。

「それは当然あるね。俺は初期の頃から合ドラを見てきたけど、初期のネタはコントロールしやすいものが多かったし、草(※マリファナのこと)と見分けがつかないのもあった。だけど、規制と製造のイタチごっこでどんどんイカれたものが出てくるようになっていったって感じかな。最近のものなんて3服しただけでグリングリンになるし、普通のやつがやっちゃいけないレベルになってきている気がするね」

――今後、脱法ドラッグはどうなっていくと思いますか?

「シャレにならない事件や事故が起こっているし、これまで以上に警察も本腰を入れてくるんじゃない? 事故に直結したネタを売った販売店を幇助罪でパクるとかね」

――Oさんが売った脱法ドラッグが原因で事件や事故に発展したものはあると思いますか?

「そんなの考えたこともないし、関係ない」

 今回のインタビューを通して感じたのは、脱法ドラッグを摂取する側も販売する側も危険性に対する意識が非常に低いことだった。O氏の口ぶりからは終始、自分は関係がない、バカな事件を起こしたやつが悪いんだという意識が垣間見れた。非合法・脱法に限らず、ドラッグの世界の基本ルールは自己責任である。しかし、周囲に多大な損害を与える事件が頻発していれば、それはもう自己責任の枠を逸脱していると言わざるをえない。

 マスコミが危険性を伝えていくことは重要だが、もはや厳しい法規制で縛ることでしか、脱法ドラッグの蔓延を防ぐことはできないのではないか。今回のような事故を再び起こさないためにも一刻も早い対処を望みたい。

連載:草下シンヤのちょっと裏ネタ

Written by 草下シンヤ

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