世界最強オールブラックスのハカにどう対抗すれば良いのか 2008年のウェールズ戦は異様な雰囲気に包まれた
TABLO / 2019年10月3日 11時47分
世界最高のラグビー。それはニュージーランド代表(オールブラックス)と言って良いでしょう。そのプレイもさることながら、試合前のウォークライ。いわゆるハカというニュージーランドの先住民族マオリ族の舞踊がファンの人気を博しています。今や、ハカは試合前の儀式として認識されていますが、実はかなりイレギュラーなのです。
ラグビーは、
1 両チーム30人がグラウンドにそれぞれのポジションに着く
2 レフリーが笛を吹く
3 キックオフ(試合開始)
という手順で試合が成立します。ラグビーは規律を重んじるスポーツです。選手はレフリーにほとんど抗議をしない事でも分かると思います。しかし、ニュージーランドは1と2の間に、「ちょっと俺たちの闘志を高まらせる為と相手をリスペクトする為にマオリ族のハカをやらせてくれ」とハカを始める訳ですから。
ハカの歴史は古く(1900年代と言われる)、ニュージーランドを含めた南太平洋のチーム(サモア、フィジー、トンガ)の国と対戦する際はウォークライが前提となっています。
その迫力はテレビ画面で見ても、会場で見ても十分伝わってきます。190cm100kgくらいのラガーマンたちが、相手を睨みつけながらウォークライをする模様は、相手チームの闘志を削ぎかねません。
しかしハカに対して「ふざけんな」と思う、荒々しいチームも当然います。そこでハカに対して最も、凄まじい対抗をした、ある国の「ハカ対策」を挙げてみたいと思います。
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2008年のウェールズ戦は異様な雰囲気でした。ニュージーランドラグビー史上最高の選手と言われるキャプテン、リッチー・マコゥ(フランカー)を擁しまさにスター集団。ウェールズとの力は圧倒的に差があると言われていました。
試合前、両チームがグラウンドで相対します。オールブラックスはハカの体制を取ります。ウェールズはチームメイトと肩を組むわけでもなくただ、呆然と立ち尽くしているように見えます(後述しますが「呆然」とではなかったのです)。
ハカはリッチー・マコゥの他、怪物と言われたセンター、マア・ノヌーらと共に行われていきます。観客の声援は最高潮に達していきます。そしてハカを躍り終えた後、「それ」は起こりました。
レフリーがボールを蹴りながら、両チームの間に向かって行きます。通常、両チームはハカが終了した時点で各ポジションに散って、試合が始まるのですが、ウェールズの選手は睨むでもなく、一見無表情でずっとその場に立ち尽くしたままです。
オールブラックスの選手たちも「おや?」という感じで、一度ポジショニングしようとしましたがそのままの状態になります。
レフリーは両チームを分けようとしますが、ウェールズは引きません。無表情のまま相手を睨むでもなく、視線をそらさずそのまま立っています。
ここで観客は初めて、異様な事態に気づきます。ハカを見て盛り上がったとは質の違う声援がグラウンドを包みます。
そう、ウェールズは茫然と立ち尽くしていたのではなく、覚悟を決めていたのです。格上のオールプラックスに対して静かな闘志で圧倒していたのです。その様は、まさにウェールズのニックネーム「レッドドラゴン」です。龍が暴れる前に目を覚まし、敵をじっと見つめているかのようでした。
それが約数数10秒続きます。レフリーはオールブラックス、ウェールズに試合を始めるように言いますがウェールズはその場から一歩も引こうとしません。これが殺気というものでしょう。ヤンキーがオラオラするのは全く違う、本物の殺気。静かな闘志を秘めたウェールズの男たちの顔。覚悟を決めたウェールズの選手たちの心情が表情に出ていました。
試合の結果は、下馬評通りオールブラックスの勝利。しかし、この試合で見せたウェールズの気迫はラグビー史上に残るものでした(因みにフランス代表が、センターラインぎりぎりまで迫ったシーンもありましたがウェールズの気迫をここでは取ります)。
ハカは今やすっかり定番となりましたが、こういった、テレビで言う「放送事故」並みのラガーマンたちの意地の張り合いも見たいものです。(文◎編集部 画像は全てYouTubeより)
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