【高校野球】選手宣誓のJポップ化はいつから? プチ鹿島の『余計な下世話!』vol.55

TABLO / 2014年8月5日 12時30分

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 高校野球 「夏の甲子園」が9日から開幕する。昨年、私は久しぶりに開会式をテレビで見たのだけど相変わらずの「大げさ」にしみじみした。一糸乱れぬ入場行進、エライおじさん達の仰々しい挨拶。高校野球のああいう雰囲気は苦手な人もいるだろう。

 でもふと思った。「選手宣誓」は激変してないか? と。私の記憶だと昔はとにかく絶叫調で「スポーツマンシップにのっとり、正々堂々とたたかうことを誓いますっ!」がお約束だった。

 それがいつの頃からか、淡々と、落ち着いて、なんなら「いいこと」を言い始めたのだ。昨年も優秀だった。北海道帯広大谷高校の杉浦主将。

《宣誓。私たちは今、この甲子園球場に立てることに幸せを感じています。第95回を数える長い歴史の中で、様々な困難を乗り越え、本当に多くの先輩方が、前を向き、夢、感動、勇気を与えてくれました。それを、私たちも継承し、また、先輩方に負けないように、決してあきらめず、仲間を信じ、未来を信じ、今よりも一歩でも前進します。

 今、生きていること、全てのいのちに生かされている重みをしっかりと受け止め、高校生らしく爽やかに、すがすがしいプレーをすることを誓います。》

 なんていいことを言うんだ。いったい、あのアホっぽい絶叫調はいつから消えた? 疑問に思った私はさっそく調べてみた。そしたらなんと「高校野球の選手宣誓」を研究している大学教授がいたのだ!

 関西学院大の陣内(じんのうち)正敬という社会言語学の教授。研究の様子は朝日新聞でも紹介されていた。「高校野球宣誓、絶叫調から語り調への転換点は80年代?」(2009年08月08日)という記事。

 それによると「陣内教授は、毎年同じ場で行われ、記録が残りやすい選手宣誓は、言葉と社会の関係をはかる資料として貴重と着目」した。

 選手宣誓の変化の口火を切ったのは意外に早い。1984年夏の福井商主将だという。「若人の夢を炎と燃やし(中略)甲子園から大いなる未来へ向かって......」と詩的な表現ではきはきと話し、聞き取りやすかったらしい。

 そして陣内教授は2011年に「高校野球・選手宣誓の時代性」という論文を書いている。

 論文を読み進めていくと「宣誓文における出現語句の年代的傾向を知るために、よく出現する典型的な語句を選び、それを宣誓年順にならべて対照表を作った」とし、90年代以降は「仲間」「感謝」「感動」「心」「甲子園」「舞台」「全力」「白球」 という語彙が多く見られると指摘している。

 ひとつのポイントは、甲子園が夢舞台とみなされるように劇場化したことであり、そこでのプレーを通じて人々に感動を与えるという球児の「自負」だ。

「純粋な競技者としてよりも甲子園という劇場で演技をする者としての視点である」と陣内教授は述べる。

 つまり「球児への賛歌」を球児自身が表明しているのだ。大仰な高校野球も、選手宣誓にかぎっては「自由」を獲得したのだ。

 しかし自由の度が過ぎると、極端なわかりやすさとうっとり感に今後覆われてゆくのではないか。選手宣誓のJポップ化である。友人のマキタスポーツは、Jポップにおける歌詞が似たような言葉が多いと数年前から指摘(というかネタに)している。

 たとえば「翼」「扉」「奇跡」「桜」。

「仲間」「感謝」「感動」「心」が頻繁に出てくる最近の高校野球の選手宣誓もどこか似ていないだろうか。一見「いいこと」を言ってるようで、どこかで聞いたことがあるわかりやすいフレーズの洪水。

 高校野球全国大会の開会式は9日におこなわれる。今年はどんな選手宣誓が飛び出すのだろう。注目である。

Written by プチ鹿島

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プチ鹿島●時事芸人。オフィス北野所属。◆TBSラジオ「東京ポッド許可局」◆TBSラジオ「荒川強啓ディ・キャッチ!」◆YBSラジオ「はみだし しゃべくりラジオキックス」NHKラジオ第一「午後のまりやーじゅ」◆書籍「うそ社説 2~時事芸人~」◆WEB本の雑誌メルマガ ◆連載コラム「宝島」「東スポWeb」「KAMINOGE」「映画野郎」「CIRCUS MAX 」

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