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西成あいりん地区の泥棒市が一斉摘発へ「フリーマーケット化で観光の目玉に」

TABLO / 2014年8月11日 20時0分

西成あいりん地区の泥棒市が一斉摘発へ「フリーマーケット化で観光の目玉に」

 大阪市があいりん地区・泥棒市の一掃に本腰を入れ始めたようだ。"泥棒市"とは泥棒市場の略称で、あいりん地区の南海電車高架下を中心とする、色々なモノを売る簡易の露店の総称だ。当初は労働者相手の日用品等を扱っていたが、今では闇タバコ、違法DVD、その日に勝手に新聞ポストから盗んできた新聞等、その名の通り盗品や拾ってきた景品なども売っている。

 だが、それらの見栄えがあまりに悪く、周辺の治安も悪化させるため、あいりん地区のど真ん中に来春、荻ノ茶屋の小中一環教育の新しい学校施設が開校することもあって一掃が決定した。橋下市長の西成特区構想の一貫でもある。

 この西成特区構想では巨額の資金が動いているが、その中心にあるのは「貧困利権」を手にした企業である。大阪市と西成区では今までの露天をあいりん地区内の特定市有地に移して管理する「西成フリーマーケット構想」を打ち出しているが、それを申請して露天を出すのは、この界隈では悪評高いNPO団体ばかりだろうと危惧されている。西成区の担当者は電話取材に対してこう答えた。

「まだ正式決定ではないですが、市有地で露店の営業を認めるのは異例です。今度こそ違法露店は完全に無くなるでしょう。成功すれば観光名所になるはずです」

 そんな簡単なことで西成は本当に観光名所になれるのか。たしかに最近ではバックパッカー系の外国人旅行者の姿を多く見かけるようになった。海外のスラム街を知っている彼らにとっては、あいりん地区も安全に見えるのだろう。だが、家族連れなどのファミリー層が訪れる観光地にはとてもじゃないがなれそうもない。西成で露店を出していた男性が語る。

「大阪・鶴橋の駅前も同じことを考えていたけど、完全に失敗してるやろ。地権者が複雑なのも大きな理由だが、未だに海外ブランドのコピーなどが堂々と売られていて、とても観光客相手とは思えない品揃えになっている。西成のフリーマーケットに若者や家族連れが来るかって? そんなの誰も期待していないし、成功するはずがない」

 先日、萩ノ茶屋へ行くと、かつて人通りの激しい小学校の東側道路には、出店避けなのかフェンスが設置されており、露店は1軒も見あたらず、しきりにパトカーやら警備員が行き来するなど物々しい雰囲気だった。あいりん地区在住の男性は、「ここらで座り込んでるだけですぐに注意や。西成特区構想は一部の人間だけの利便を図ってるだけで、わしらにはほんまに迷惑な話や」と吐き捨てていた。

 今まで日常的に行われていた泥棒市は、最盛期には500店以上あったと言われている。しかし、本当の危険な商品、例えば向精神薬や睡眠薬などはゲリラ的に商店街のシャッター前で夜明け前に売られ、日の出には撤去されるというのが常だった。一見、覚せい剤の売り子も減ったように見えるが、実際には場所を変えただけで依然として売買を続けている。前出の泥棒市露店の男性が語る。

「行政に管理されたフリーマーケットが観光の名物になるわけないやろ。それが名物になるんやったら、炊き出しだって名物になっとるで」

 他人に干渉されるのが嫌でここの住人になった人間は数多い。それらの住民感情を無視してまで一部の人間の為の政策を行う意味がどこにあるのか。過去に西成の小学校の裏で覚せい剤が売られていた、と大ニュースになったが、確かに小学校の裏の屋台であったが、ついでに言えば西成警察署の真裏でもあった。どこか政策の論点がずれている、と思うのは筆者だけではあるまい。

Written by 西郷正興

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