朝日新聞「慰安婦報道の訂正」を検証する...プチ鹿島の『余計な下世話!』vol.56

TABLO / 2014年8月12日 15時0分

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 先週大きな「事件」があった。朝日新聞が5、6日付の紙面で「慰安婦問題を考える」という検証特集をしたのだ。

 そのなかで、朝日新聞が何度も報じてきた「吉田清治」の証言について「虚偽だと判断し、記事を取り消します。当事、虚偽の証言を見抜けませんでした。」と記事を取り消した。吉田清治の著書「私の戦争犯罪」は創作であり、吉田本人もそれを認めていた。ゆえに朝日に対してのツッコミが絶えなかった。

 それにしても、なぜ今「慰安婦報道検証」を朝日がしたのか。当時の記者が引退したから? 部数が落ちたから? バッシングに耐えられなくなったから? 私は思い当たることがあるのです。それは6月だ。

 朝日がスクープとして報じた「吉田調書」である。吉田調書とは東京電力福島第一原発所長で事故対応の責任者だった吉田昌郎氏が「政府事故調査・検証委員会の調べに答えた「聴取結果書」。これを朝日新聞が入手して暴露し反響を呼んだ。

 そのあと6月、週刊ポストにこんな記事が出た。「朝日新聞『吉田調書』スクープは従軍慰安婦虚報と同じだ」(6月20日号)。

 これに怒った朝日はすぐさま動いた。「週刊ポスト記事に朝日新聞社抗議 吉田調書めぐる報道」(朝日新聞・6月10日)

 朝日側は自信を持って送り出した記事を「捏造」と言われて頭にきたのだろう。でも一方で私はこう思ったのです。

「では、ここ20年以上"捏造だ"と攻撃されている"朝日慰安婦報道バッシング"についてはなぜ反論しないのだろう? 抗議しないのだろう」と。

 もし朝日が慰安婦報道の記事に絶対の自信があればすぐさま反撃しているはずである。しかしそうすれば「では吉田証言は?」というツッコミが必ず返ってくる。今回の朝日の検証記事を読むと、どうやら朝日自身も1997年くらいに「吉田証言は虚偽」とわかったらしく、沈黙を始めたことがわかる。

 しかし今後も沈黙を続けたらどんなに大スクープを報じても「"慰安婦虚報"と同じだろ?」という野次が飛んでくるだろう。それにもう朝日は耐えられなくなったのではないか? 言ってみれば東電の「吉田調書」スクープを守るために、慰安婦の「吉田証言」虚偽を認めたのだ。と思ったらさっそく【朝日新聞社、FLASHに抗議文「捏造は一切ない」】(8月6日)という記事が。興味深いので全文を載せる。

《5日に発売された光文社の写真誌「FLASH」8月19日・26日号に掲載された「『従軍慰安婦捏造(ねつぞう)』朝日新聞記者 大学教授転身がパー」の見出しの記事について、朝日新聞社は5日、朝日新聞の報道を根拠なく「捏造」と決めつけ、名誉と信用を著しく傷つけたとして、FLASH編集長に抗議するとともに、謝罪と訂正の記事掲載を求める文書を送った。

 朝日新聞社広報部は「5日付朝日新聞の特集『慰安婦問題を考える:上』で報じた通り、慰安婦問題を報じた記事に朝日新聞記者による捏造は一切ありません」としている。》

 ご覧のとおり、朝日はさっそく抗議を開始した。今までは沈黙するしかなかったが検証報道をやって一部を虚偽と認めたので、そのほかは「捏造はない」と反撃できるようになったのだ。

 では、慰安婦報道バッシングに対しての朝日の反撃はいつ以来なのだろう。朝日新聞に電話して聞いてみた。私が「慰安婦検証報道を読んでお伺いしたいことがあるんですが......」と言うと、最近「お叱りの電話」が多いのか「お客様窓口」の男性(30代くらい)の少し身構えた雰囲気が受話器越しからも伝わってきた。

 しかし「今回光文社に抗議しましたが、過去に他社の"朝日慰安婦報道に対する記事"に対して抗議した事実はあるのですか? 記事にしているのか知りたいのです」と言うと、お叱りのお電話とは違うと安心したのだろうか、さっそく調べてくれた。数分後、答えが出た。

 朝日のデータベースによると直近の抗議は「2002年12月25日」。相手は「読売VS朝日―社説対決50年」 (読売新聞論説委員会 ・中公新書ラクレ) という本。この本のなかで書かれた「女子挺身隊を慰安婦狩りの制度と書いた朝日新聞」という記述に対して抗議をし、記事も書いたという。

 逆に言えば、この2002年から今年の8月まで抗議していないことになる。2002年以降も朝日・慰安婦報道に対するツッコミは怒涛のように多かったはずなのに。電話口の男性は「キーワードを"慰安婦"のほかにもいろいろ入れて検索しましたが2002年のこの抗議記事以外は見当たらないですねぇ......」

 やはり2002年以降、朝日はずっと「沈黙」していたのである。朝日慰安婦報道のツッコミに対し。しかし今回の検証報道で一部を虚偽と認めたことで反撃できるようになったのだ。

 そう思ってあらためて読んでみると、あの記事の本当の読みどころは「謝罪してるようにみえて一切謝罪していない」ことである。ふつう、「証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します。当時、虚偽の証言を見抜けませんでした」ときたら謝罪の言葉が続くのに、そのあとなんだか開き直っている。あのエラそうな感じ、たまりません。

 私はあの日、検証記事を載せているという驚きに「朝日が謝罪してる」と思わずツイートしてしまった。しかし、じっくり読んでみるとそのあとに朝日に謝罪の言葉はなかった。

 私のツイートは虚偽でした。謝罪いたします。

Written by プチ鹿島

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プチ鹿島●時事芸人。オフィス北野所属。◆TBSラジオ「東京ポッド許可局」◆TBSラジオ「荒川強啓ディ・キャッチ!」◆YBSラジオ「はみだし しゃべくりラジオキックス」NHKラジオ第一「午後のまりやーじゅ」◆書籍「うそ社説 2~時事芸人~」◆WEB本の雑誌メルマガ ◆連載コラム「宝島」「東スポWeb」「KAMINOGE」「映画野郎」「CIRCUS MAX 」

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