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【未解決事件の闇2】女性編集者失踪事件の容疑者逮捕...しかし一転無罪へ

TABLO / 2014年8月29日 16時0分

【未解決事件の闇2】女性編集者失踪事件の容疑者逮捕...しかし一転無罪へ

▲辻出さんが働いていた出版社・伊勢文化舎。

特集ルポ:未解決事件の闇2 ~伊勢・女性編集者失踪事件

 辻出紀子さん失踪の鍵を握るXを三重県警は翌年1月下旬から9日間、任意同行を求め連日取り調べをした。Xが怪しいと踏んだのは、彼女の携帯電話の通話履歴を調べたところ、24日当日、何度か辻出さんに電話をかけたことがわかったからだ。

 辻出さんの働いていたのは伊勢文化舎という地方の出版社。そこの主力雑誌である「伊勢志摩」の制作にかかわっていた。一年目小間使いだった彼女も、2年目には特集を任せられるほどに成長した。そして「磯の食べ物を食べる」という特集で、彼女の案内役を務めたのがXだった。

 取材後、Xは何度か辻出さんに会い、食事をしたり電話で話したりしている。地元の子ども向けの自然ふれあいイベントで講師を務めるXに尊敬の念を抱いたり、女性に優しく接することのできる性格に好意を抱いたりしたのかもしれない。少なくとも辻出さんは、雑誌に掲載するXの顔写真を同僚に見せて「かっこええやろ」といっていたことがわかっている。

 辻出さんは当日、午後11時すぎに退社し、会社から車で約5分の保険会社の駐車場でXに会っている。伊勢市の中心部からさほど遠くないが夜になると、ほとんど人通りのない寂しい場所。辻出さんと会って、車内で1~2時間一緒にすごしてから、朝方に自宅に戻っている。

 任意同行による取り調べで県警はXの犯行だという供述を引き出せなかった。その間、直接的な証拠も揃えられなかった。しかし一方、辻出さん失踪の一年前に東京でホテトル嬢を逮捕監禁していたという疑いが関係者の証言により、浮かび上がってきた。地元の青年会議所に属していた彼は、その関係からか東京に来ることが多かった。上京するたびに会っていたなじみのホテトル嬢の手を縛り、部屋に閉じ込めたというのだ。県警はさっそく容疑をかため、Xを逮捕する。2月に入ってからのことだ。

 県警は別件で引っ張り、辻出さんの失踪について供述させようという目論見であった。ところがXは徹底的に黙秘を貫いた。別件についてはある程度、話はしたが、被害者のホテトル嬢と話していることが食い違った。

 3月に入ると、ホテトル嬢逮捕監禁事件の裁判がはじまった。法廷では被害者による生々しい被害の供述(強姦や暴力)がなされた。監禁中の証拠写真やメモ帳といった物的証拠と供述との整合性が問われ、10月に無罪の判決が降りた。

 釈放後、Xは反撃に出た。捜査を担当する県警、そして立件した検察、当のホテトル嬢らを訴えたり、日本弁護士連合会に人権救済の申し立てをしたりした。前者の告訴は途中で取り下げたが、後者に関しては日弁連が県警や検察に警告書を送っている。

 反撃が効力を発したのか、県警は以後、Xに簡単に手出しができなくなってしまった。

 獄中にいたときXは、辻出さんの両親と接見、「無罪になれば(辻出さんの件について)お話しします」と約束したが、釈放後、口を開くことはなかった。

※次号「突如浮上した某国拉致説...その真相は?」(近日配信予定)に続く

Written by 西牟田靖

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