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【カジノ法案】パチンコ利権争いで対立する自民党議員と警察庁の思惑

TABLO / 2014年9月1日 21時0分

【カジノ法案】パチンコ利権争いで対立する自民党議員と警察庁の思惑

 前回は、パチンコの法整備を進めたい自民党の議員連と、建て前と利権を守りたい警察庁との間で争いが起きているという話を紹介させていただいた。今回はもう少し踏み込み、パチンコ法制化の障害になっている部分を具体的に解説しようと思う。

 その前に、最低限必要な基礎知識として、昨年10月に連載させていただいた下記の記事をお読みいただきたい。

 さて、今回自民党の『時代に適した風営法を求める議員連盟(通称:風営法改正議連)』が中心となって押し進めているパチンコの法制化だが、これには非常に高いハードルがいくつもそびえ立っている。

 まず大前提として、この議連はパチンコ業界がどれだけグレー......を通り越してブラックな存在かという認識が甘かったように思う。というのも、パチンコ・パチスロとは三店方式という憲法違反の疑いすらあるグレーゾーンで守られているだけで、実際は換金行為とワンセットの「れっきとした賭博」だという点。建て前としては賭博と呼んではいけないのだが、法制化ともなればそういう言葉遊びをしている段階ではないので、ハッキリと「パチンコは賭博だ」と言わせていただく。

 今回の法制化は、これまで違法行為とされていた「民間企業による賭博行為」を、どのような新しい言い訳で合法化すればいいのかという点が最大のポイントとなる。

 しかしながら、パチンコ業界にはもうひとつの暗部がある。それが「脱税額NO.1を誇る不透明な業界」という点だ。脱税が発覚する件数でいえば、飲食・水商売が最も多い業種なのだが、金額の大きさでは長年に渡ってパチンコ業界が不動の一位である。一件当たりの金額が他の業種とは段違いなのだ。

 パチンコ産業には外からでは解らないブラックボックスが多すぎ、それを見張る役目のはずの警察とズブズブの関係にあるため、例えば「当たり確率が本当にカタログ性能通りなのか?」という一点だけでも不透明すぎる。よく「ホルコン制御」などという単語が出て来るが、パチンコホールがコンピューターを使って出玉を意図的に制御しているのではないかという疑いが、それこそ前世紀から囁かれているにもかかわらず、未だにハッキリした事はよく解っていないし、警察も本気で調査しようとは考えていない。ゲームの核になる部分なのにこの有り様なのである。

 また細かい不正でいえば、玉やコインの計測器の中には、設定によって一定の割合で数を抜く(わざと少なく数える)機能が付いている物がある。閉店した店舗から流れたこのような裏物は、たまにネットオークションなどに出品されているので、興味のある方は暇潰しに探してみるといいだろう。

 パチンコという賭博(建て前としては遊技)には、これら以外にも様々なモヤモヤがあり、何が信じられる情報なのか客にはサッパリ解らない。近頃はパチンコ業界への締め付けが厳しくなったと言われているが、それは遊技の内容(ゲーム性)などに対する規制が殆どだ。ホール経営に関するブラックボックスは相変わらず手付かずなので、ここにメスを入れない限り法制化など夢のまた夢である。

 おまけに言っておくと、何か不正が発覚した場合の厳罰化も必須となろう。どんなに大きな企業であっても、問答無用でホール経営の免許を取り上げるとか、それくらい厳しい姿勢で臨まない限り長年に渡って当たり前とされて来た「業界の暗黙の了解」はなくならない。自民党の議連は本当にそこまで切り込む覚悟があるのだろうか?

 また仮に法制化が成功し、パチンコが "合法賭博" になったとしよう。そうなれば三店方式という言い訳が必要なくなるのだから、店が賞品を買い取れるようになるはず。そうなると似て非なる他の風営法管轄の業態も換金行為を行わせろと言い出すだろう。まず思い浮かぶのは、メダルゲームのメダルや、UFOキャッチャーなどの景品を換金する行為だ。ただ、パチンコは風営法の7号営業で、ゲーセンなどは8号営業になっており、8号営業では遊技に対して賞品を出す事が禁じられているため、この辺りで無事に差別化が出来るかもしれない。

 では、パチンコ店と同じ7号営業である雀荘などはどう扱われるのだろうか?  区分が同じである以上、パチンコ・パチスロという賭博だけを合法化するというのは意外と難しいかもしれない。下手な法律文を作ってしまうと、法律の網を掻い潜って思いもよらない手法が生み出される可能性が高いし、法律の存在自体が不平等だとなれば憲法違反と看做される可能性まである。よって、風営法の7号営業の枠組み自体を変えなければならないのではないか?

 結局のところ、今回の自民党の議連はパチンコから税金を吸い取りたいだけなので、パチンコ屋以外の風俗営業店などどうでもいいようだ。よって、パチンコ屋だけ7号営業から抜かれて新設された別の区分に据えられ、それ以外は据え置きという形になるというのが現実的なところだろう。『時代に適した風営法を求める議員連盟』などというもっともらしい名称だからややこしくなるので、どうせなら『パチンコからガッツリ税金を取れるようにしたい議連』などに名称変更していただきたい。今のままの名称だと、対象が風営法管轄の業態すべてにならないとおかしいので、どうしても不平等さが出てしまう。

 さて、これらの問題をクリア出来たとなると、次に浮上してくるのはパチンコ業界への新規参入(及び大企業による既存店の買収など)が殺到するであろう点だ。合法化されたクリーンな業態だとなれば、これまで不透明さを理由に不可能だった国内での上場も可能になるし、そうなれば様々な大企業がパチンコ業界への参入を画策し、今まで以上に街中がパチンコ屋だらけになる事が予想される。例えば経営不振のデパートを潰して巨大パチンコ店にしてしまうといった流れが目に浮かぶが、パチンコは中毒性が高すぎる賭博なので、何か制限を設けないと実に不健全な国と化すだろう。少子化問題が叫ばれる日本で、過去にパチンコ屋の駐車場で何人の幼児が蒸し殺されたのか統計を出してみたいところだ。

 今のところ最大の懸念材料は、日本の政治家はとにかく大企業に弱いため、企業側が強く押して来たらなし崩し的に流されてしまうであろう点だ。そうなればモラルより利益を優先されるだろうから、免許制にするにしても、何か制限を設けるにしても、企業様が納得するような形にしかならない。という事は「東京オリンピックまでに健全な街を整えて~」という政治家の思惑から最も遠ざかってしまう。

 結局のところ、パチンコの法制化とは、即ち「パチンコ・パチスロという賭博を日本国が正式に認める」という事なのだから、治安の悪化や犯罪の増加は何が何でも防がなければならない。そのためには警察に頑張って貰うよりないのだが、自民議連がやろうとしている案では、その警察利権(=パチンコ業界のグレーゾーン)の解体に直結してしまうのだ。これで悪名高き日本の警察様がマジメに動いてくれると思っているのだろうか?

 これらのハードルをクリアして、パチンコを法制化できる日が来るとは到底思えないのだが、自民党議連には何か現実的な策があるのだろうか?

Written by 荒井禎雄

Photo by Batle Group: Mar Hotels, Majestic-Resorts & Lively

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