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御嶽山噴火、自衛隊出動で是非論噴出への疑問

TABLO / 2014年10月2日 23時14分

御嶽山噴火、自衛隊出動で是非論噴出への疑問

 噴火した御嶽山での自衛隊の救援活動に対し、一部の極端な連中から「自衛隊がでしゃばるな!」「戦車を出す必要なんかない!」といった声が挙がっている。また、逆側の極端な人間(例えば片山さつき)などからは「御嶽山を監視対象から外したのは民主党だ! 仕分けのせいだ!」といったデマが垂れ流された。

 どちら側も人命が失われた痛ましい災害に乗っかって、デマでも何でも自分の主義主張をアピールするのに都合のいい情報だけをがなり立てている訳で、全く同じ人種であると言えるだろう。

 今さら言うまでもない指摘なのだが、上の2つに対して簡単に反論しておくと、まず今回のような噴火災害では、地元の警察・消防などには手が出せない(致命的に装備が足りない)ため、取り残された人々を救助するにはどうしても自衛隊が必要である。仮に地元の消防や青年団の類だけで何とかしようなどと考えていたら、おそらくその救助隊の中からも多数の死者が出ていただろう。相手は人間ごときの力が及ばぬ牙を剥いた自然だという事を考えてから物を喋るべきだ。

 現在の自衛隊の最大の活躍の場は、特殊かつ大掛かりな装備が必要となる災害救助である事は、ミギの方もヒダリの方も重々承知のはず。例えば、東日本大震災の際にはこのような自衛隊の存在意義自体を否定するようなバカげた声はそれほど目立たなかったはずなのだが、なぜ今回はヒステリックな声が目立ったのだろうか?

  おそらくそれは自衛隊の車両の中に戦車らしき物があったため、常日頃の政治思想と相まって、脊髄反射的に「軍靴の音が~!」となってしまったのだと思われる。私が被災地支援で訪れた陸前高田や大船渡で、自衛隊の車両が橋を架けている場面を何度も目撃したが、そのような光景を見ただけならば今回のようなキーキーした反応は少なかったように思う。

  それはともかくとして、今回派遣された車両は知らない人間からすれば戦車に見えてしまうかもしれないが、分類的には戦車ではなく装甲車と見做すべきだろう。写真をパっと見た限りだが、あれは89式装甲戦闘車という「兵員輸送能力と最低限の戦闘能力を有する歩兵戦闘車」だと思われる。

  歩兵戦闘車などと呼ぶとまたも「やはり戦争用の兵器じゃないか!」という声が挙がりそうだが、今回のような状況では89式を選択した自衛隊の判断はすこぶる正しい。なんせ今の日本には悪路・ガス・高熱など、想定される噴火被害に耐えうる輸送車両はアレしかないのだ。他の車両では、万が一の場合のガスや熱に耐えられず、せっかく生存者を収容しても乗組員もろとも全滅という事すら考えられる。したがって、今回速やかに89式を持って行った自衛隊の判断には文句の付けようがない。

  そもそも、こういう意味の解らないイチャモンをつける連中は、日本に自衛隊があること自体が許せないのだろう。普段は「災害派遣などで活動することは否定しない」などと言っていながら、救援活動に絶対に必要な装備(今回は89式)で赴いた自衛隊に対して罵声を浴びせてくれたのだから、「自衛隊自体が気に入らないだけだろ?」という話である。お里が知れるとか、馬脚を現すといった表現が適切だ。

  では次に逆側の極論家である片山さつきなどの妄言に反論するが、御嶽山の噴火被害は民主党の事業仕分けのせいではない。御嶽山の監視を緩める方針になったのは2008年の麻生内閣時代なので、どうしても誰かのせいにしたいならば麻生閣下を批判して下さいというだけの話である。そもそも、「御嶽山は噴火の危険性があるため常時監視対象とされ続けていた」というのが正解なので、予算が減ったからどうこうという話自体が、因果関係の不明な与太話であると言っていい。 民主党を批判したい連中の前に「火山と事業仕分け」という美味しいエサが転がっていたため、深く調べもせずデマを垂れ流して赤っ恥をかいたという程度に考えるべきである。

  自民党を支持する方々は、よく「朝鮮の諺に、嘘も100回つけば本当になる、というのがある。連中はそういう民族だ」などと口にするが、それを恥ずかしい事と思うならば、なぜ自分自身が同じ真似をしてしまうのだろう? ウソはどんな民族が吐こうとウソであり、事実はどんな民族が主張しようと事実である。その手の連中が "チョウセンジン" をそれほど忌み嫌うならば、ウソをウソと、デマをデマと認めて、"チョウセンジン" よりも高尚な人間を目指してみてはどうだろう? それが出来ないならば、「あなた方が言うチョウセンジンとは、あなた方自身を指す言葉だ」と言わせていただく。

  さて、東日本大震災や原発事故を経ても全くオツムが成長しなかった両側の極論家さん達は、どちらも犠牲者を出してしまった悲惨な災害の情報に乗せて、自分が垂れ流したい思想を拡散しているだけに過ぎない。 言ってみれば犠牲になった尊い命を商売道具として勝手に使っている訳で、死者を冒涜する何よりゲスな手法である。

  本当に今回のような災害による被害を繰り返したくないと思うならば、世間の人々に山の危険性を説くとか、他にいくらでもやりようはあるだろう。 それをせずお手軽にイッチョガミするだけなのだから、こんな批判をされても反論のしようがあるまい。 とりあえず文章の最後に 「お悔やみ申し上げます」 と付けておけばいいという話ではないだろう。

  自分で言った手前、山の危険やルールについて簡単に書いておくが、そもそも山や海というのは 「人間が立ち入るにはあまりにも危険の大きい世界だ」という大前提がある。 まず、自然の中に身を委ねた時点で、常に死がつきまとうという意識が必要なのだ。よって、山なら山に行く前に絶対に知っておかねばならない知識を頭に入れて、その上でハイキングなり登山なりに赴かねばならない。 それが出来ないならばハナから行くべきではない。

 そして万が一なにか不幸が起きたとしても、それはもう諦めるしかない。御嶽山に限らず、3,000m前後あるような山とは、人間の死すらもある意味で突き放して考えねばならない厳しい場所であると知っていただきたい。山での事故とは、誰が悪いといった単純な話ではないのだ。

  私は父親が学生時代に山岳部に所属しており、母親もワンゲル部で、冒険家の故植村直己さんが地元仲間という逃げ場のない家庭に産まれてしまったため、小学生の頃に北アルプスの山々の殆どを踏破させられた。泣いても喚いても3,000m級の山の上では帰るに帰れず、奥穂高を登り、槍ヶ岳を登り、あれ以上のスパルタは他にないだろうと思える無茶な鍛えられ方である。 そんなあまりにも厳しすぎる登山修行の中で、父親に口を酸っぱくして言われたのが「天候変化や時間の予測などは悪い方に考えろ」「軽くひょいひょい歩くな」「出発の前に宿のひとに正確な道程を伝えろ」 などなど。

  山の天気は変わりやすく、突然1m先が見えないほどの濃霧に包まれたりもするので、「まだ天気はもつだろう」とか「まだ日暮れまでに時間があるからのんびりしていいだろう」といった考え方は危険である。人間ごときの自分勝手な判断・願望など大自然様には通用しないので、常に最悪の事態を想定しながら行動するくらいでちょうどいい。

  また、はしゃぎながら歩いたり、普段都会の道を歩くようなヒョイヒョイした足の運びでは、何につまずくかすべって転げ落ちるか解ったもんじゃない。 最も怖いのは延々と石だらけの斜面が続くような場所で、そのような場所で腰の入っていない迂闊な歩き方をすると、自分の足が小石を弾き、それに押されて少し大きな石が落ち、それが転がってもっと大きな石を押し転がし......と、まるでドミノのような状況になり、結果的に大規模な落石に繋がりもする。 そこまで大げさな被害が出なかったとしても、下を歩いている登山客にとってはシャレでは済まない。 小石ひとつへの注意にしても、山とはこのような危険だらけの場所なのだから、ルールを知らない人間は絶対に踏み入るべきではないのだ。

  しかし、そのような山のルールが頭に入っていたとしても、今回のようなマグマを伴わない水蒸気爆発は予測のしようがない。 それでも監視対象になっているような火山には登らないとか、とりあえず下界で一泊して地元のひとに話を聞いて安全が確認できた山にだけ登るとか、身を守る方法がない訳ではないので、とにかく 「最悪の事態を考えつつ情報収集する」 という準備が必要だろう。 今回のように自分勝手な情報を根拠にピーチクパーチク言っている連中の逆をやらねばならないのだ。

  御嶽山の噴火で被害に遭われた方は不幸だったというよりほかないが、せめて犠牲を無駄にしないためにも、山の厳しさとルールをより多くの人々に知って欲しい。 日本は自然に恵まれた国だが、それ即ち 「厳しい自然と付き合っていかねばならない」 という事なのだ。

  最後に余計な事を付け加えると、北アルプス界隈の山男が口を揃えて言っているのが「御嶽山と繋がっている火山は他にもあるんだよなあ......」ということ。プレートがどうのこうのという科学的な根拠だけではなく、地元の伝承といった形でも「あの山が噴火したらあそこもマズイ」 という情報が残っているそうなのだ。その中で御嶽山とセットで考えられているのが「焼岳」 らしい。焼岳は私が子供の頃から煙を吐いていたような山で、御嶽山と同じく常時監視対象の火山なのだが、地元の方いわく「御嶽山が噴火したなら、次は繋がっている焼岳辺りも危ないぞ」とのこと。時期的に閉山前の駆け込み登山で上高地方面に向かう方がいらっしゃるかもしれないが、今回同様の予測できない水蒸気爆発や災害にはくれぐれもご用心いただきたい。

Written by 荒井禎雄

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