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安倍政権下で数少ない光明...七生養護学校「不当介入」都議らに勝訴確定

TABLO / 2014年10月6日 19時25分

安倍政権下で数少ない光明...七生養護学校「不当介入」都議らに勝訴確定

 先日の記事で簡単に触れた「七生養護学校事件」に関して、一筋の光明とも呼べる重要な判決が下った。 七生養護学校の教師・在校生・保護者らが、都や都議らの教育内容への介入は不当だとし、また生徒に対する性教育の内容を批判・中傷されたとして損害賠償を求めていた裁判で、最高裁は双方の上告を退け、二審での判決が確定した。これにより、都及び都議らの介入は不当と認められ、被告は原告に対して210万円の賠償金を支払う事となる。今回敗訴した都議及び元都議は次の3名である。

土屋敬之(前都議・民主党~日本維新の会)

古賀俊昭(自民党・主権回復会顧問・※100人の会東京支部理事)

田代ひろし(前都議・自民党)

※100人の会とは、先日アップした山谷えり子の記事に登場した "あの会"

http://n-knuckles.com/case/politics/news001686.html

・地裁判決文(平成17年)

http://www.news-pj.net/npj/pdf/2009/nanao-hanketsu_20090312.pdf

・高裁判決文(平成23年)

http://kokokara.org/pdf/shoko/kokokara_kousai.pdf

・裁判支援サイト

http://kokokara.org/

 前回の記事の内容と重なってしまうが、改めて七生養護学校事件がいかなるものだったか説明しよう。

 七生養護学校で、知的障害を持つ在校生が性行為を行った事が発覚した。 これを受けて保護者らとの相談を繰り返した結果、生徒の問題行動を防いで安全な生活が送れるようにと、かなり踏み込んだ内容の性教育を行う事になった。しかし対象となるのが知的障害を持つ児童のため、普通の教え方では効果が見込めず、数え歌や人形を使ったり、実際に自分の身体を触らせながら性器を含めた各部位の名称を覚えさせるといった、独自の内容にせざるを得なかった。

 この七生養護学校の「こころとからだの学習」は、その内容と効果を高く評価され、他の地域の養護学校の教師が研修に訪れるなど、新しい取り組みとして期待されていた。

 ところが、2003年に土屋ら都議と産経新聞とが七生養護学校を訪れ、その教育内容を「異常だ! 常軌を逸している! 人権侵害だ!」などと非難。無理やり教材や資料を取り上げるといった暴挙に及び、挙句にこれを石原慎太郎らが「異常な教育をする教師がいたもんだ」などと支持。結果として七生学校は都に処分を受ける事となった。

 少々話が横道にそれるが、これを受けて2005年に自民党内で安倍晋三が座長となり「自民党 過激な性教育・ジェンダーフリー教育 実態調査プロジェクトチーム」が発足。 このチームの事務局長を務めていたのが山谷えり子(現・国家公安委員長、拉致問題担当相)で、彼・彼女らは七生養護学校のような踏み込んだ性教育を行っていた学校を次々と非難し、教育現場の萎縮を招く最大の要因となった。現在の教育の現場で、生徒達に教えるべき性の問題を教えられないのは、この連中のせいだと言っても過言ではない。

 最後の最後で私情混じりの文章になってしまった事を深くお詫びするが、今回の七生養護学校の勝訴確定は非常に重い判決である。自民党系・保守系の政治家にありがちな「自分の価値観をすべてと思い込み、どこにでもズカズカと強権を振りかざして踏み入れる行為」が不当であると断定されたからだ。

 担当した裁判官の言葉を手短かにまとめると以下のようになる。

・議員らの行為は、自身の政治的な信条に基づいて教育に介入または干渉するもので、教育の自主性を歪める危険がある

・教育内容を短期間で判定するのは容易ではなく、一度でも制裁的な扱いを受けたら教育現場の萎縮を招き、性教育の発展が阻害される

・都議や都教育委員会が指導または研修を経ずに処分を行ったのは、裁量権の乱用である

 この都議らがいかに無知で水準の低い人間だったかを象徴する話として、七生養護学校が教材に使っていた "人形" を、「ダッチワイフのようだ!」と大騒ぎして没収したという事実を紹介しておこう。この人形とは、アメリカの専門家が作成し、世界の性教育の現場で使用されている「スージー&フレッド」である。この人形は性器まで付いてはいるものの、普段は服を着せた状態で使用し、必要な時だけ性器の部分を露出させて男女の性器の違いや、性行為について学習する。

 ところが、都議らは自分達の主張の正しさを裏付けるのに必死だったのか、人形の洋服・下着をむしり取り、性器を丸出しにした状態の写真だけを公開して 「ほ~らダッチワイフだ~!」と大騒ぎしたのだ。まるでリカちゃん人形のパンツを脱がして喜ぶクソガキのようなメンタルである。リカちゃん人形の胸が少し膨らんでいるからといって、わざわざ服を脱がしてその部分だけを撮影して大騒ぎするアホがいるだろうか? それをやったのが今回敗訴した都議らなのだ。

 しかも話は教育に関する事だから冗談では済まない。これにより、知的障害を持つ生徒が知っておかねばならない情報を知らされず、養護学校を卒業してしまう事になったのだ。これがどれだけ不幸を招くか想像できないのだろうか?

 今回確定した判決と、2010年に確定している元校長への処分を取り消す判決とで、とりあえずは七生養護学校に対する政治家の介入は不当という結論は動かぬものとなった。しかし新聞まで抱き込んで方々から石を投げ付けられたダメージはそう簡単に癒えるものではない。また、安倍晋三や山谷えり子といった、七生養護学校事件の後に暴れてくださった連中は未だ要職にあるので、教育現場の萎縮は変わらず続くだろう。

 しかし、裁判というのは前例第一の場であるから、もし今後何か恫喝めいた圧力や暴力を受けたとしても、七生養護学校が勝ち取った判決が強い武器になってくれる。子供達が安全な人生を送るため、ひいては日本の将来のため、七生養護学校の10年以上にも及ぶ戦いを無駄にしてはならない。

Written by 荒井禎雄

Photo by 山谷えり子公式ホームページ

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