NHKニュース「児童の性被害特集」でモヤモヤした点を検証する
TABLO / 2014年10月11日 22時0分
10月5日に放送された『NHKニュース・おはよう日本』の中で、児童の性被害に関する特集が組まれた。『"子どもの性の商品化"実態は...』と題されたその特集では、主にジュニアアイドルの過激な性描写などが問題視されており「一部の悪徳プロダクションから子供を守るためには~~」といった論調で話が進められた。
だが、ここでもやはり児童と性被害を結び付ける最も重要な箇所が抜け落ちており、どうにもモヤモヤする内容のまま終わってしまったように思う。番組内容を丸ごと否定・批判したい訳ではないので、どうにもおかしい、もしくは言及が足りない点を、ピンポイントで抜き出してみよう。
(1) 一部の悪徳プロダクションだけが酷い訳ではない
番組では低年齢アイドルに注目し、彼女らの活動内容がいかに卑猥なものかを紹介していた。だが、アイドルに憧れる子供を食い物にする悪質なプロダクションもあるといった論調で、これには大きな間違いがある。
確かに地下アイドル系のファンとの接触イベントの中には "抱っこ会" など規制されて当たり前の酷いものもあるが、大手プロダクション所属のアイドルであっても、50歩100歩な可哀想な活動をさせられた子達が大勢いる。ファンとの接触といえばAKBのオハコというイメージがあるが、クリーンなイメージのあるももクロでも、メンバーの殆どがローティーンだった頃に有料ビデオチャットで荒稼ぎさせらされたりと、モラル面でギリギリの活動をしていた。またハロプロ所属のスマイレージのウリ文句は「日本一スカートが短いアイドル」であったが、その言葉の通り極端に短いスカートを履いて見せパンを見せるといった振り付けを地上波の音楽番組で披露しており、これも子供にセックスアピールをさせている点に変わりはない。
このように、大手プロダクションだから、メジャーなアイドルグループだから安全・安心だという話ではないのである。今回のNHKの特集では、ごく一部の悪質なプロダクションに気を付ければ子供を守れると勘違いする親が現れると思うのだが、それはNHKの制作陣が望むことなのだろうか?
(2) 児童への暴力・虐待の加害者となる確率が最も高いのは親兄弟である
こうした特集が組まれる際に、何故かあまり言及されないのがこれだ。 今も昔も、子供に対する暴力・虐待の加害者は、親や兄弟である比率が非常に高い。 だからこそ問題が表面化せず、子供も黙って耐えるしかなく、最悪の結末に至ってしまう。 最近も女の子が自分の母と祖母を殺してしまうという痛ましい事件が起きたが、あれも後の調べて度重なる虐待があったと報じられた。
だが、今回のNHKの特集のテーマは「子供の性の商品化」であるから、それに沿った内容にしよう。性的虐待などの加害者が親や兄弟である場合が多いと述べたが、それ以上に我が子のジュニアアイドルとしての活動内容を知った上で「解ってやらせている親」も多い。
NHKの特集では何故か「親が知らない内にメーカーが卑猥なシーンを撮影してしまう」という話だけを取り上げていたが、これは大嘘と言ってもいいのではなかろうか? 発売される作品数がそれなりにあるので、もしかすると中にはそうして撮影された物もあるのかもしれないが、であれば完成したDVDを見るなどした親がプロダクションを訴えるだろう。
その場合は民事裁判だけではなく、刑事裁判になる可能性も大きいはずだ。 ところが、そうした揉め事はなくはないが滅多に聞かない。親が我が子がどのような活動をしているのか確認しない訳がないのだから、自分でDVDを探すなり、子供が貰って来るなどした作品を見るなりして、内容をチェックしているはずである。それでも殆どのジュニアアイドルの親が何も言わないのだから、親が納得ずくでやらせていると考えるよりないだろう。
私が直接現場で見た光景では、女の子の母親が現場で口出しをし、自分の娘に対して「もっとカメラにお股を見せて!」などと声を挙げていたが、こういう事実があるという言及がNHKの特集には一切なかった。NHKが問題視していたのは、あくまで一部の悪質なプロダクションと、そうして出来上がった作品を買うオタクやロリコンだけである。
(3) 子供にSOSを発信させるのに最も効果的なのは学校での性教育である
番組では 「家庭の中だけではなく、家庭の外でも相談できる場所を増やしていくという必要があると思う」 と結ばれていたが、最も効果的なのは学校での性教育である。 そもそも家庭に問題があるケースも多いのが子供の性暴力や虐待被害なのだから、家庭の中でだけどうこうすれば子供を守れるという話ではない。
では、より多くの子供に必要な知識を身に付けさせてあげられる場所はどこだろうか? 考えるまでもなく "日本の殆どの子供が平等に通う小~中学校" である。 本気で子供を守りたいと考えるならば、肝心の子供自身に将来自分の身に降りかかるかもしれない危険を教えてあげるのが最も効果的なのだが、その点について日本は非常に遅れている。
過去何度か寄稿した記事で、自民党の女性閣僚のヤバさを紹介したが、あんな連中が中世かというような時代遅れの女性観を振りかざし、「性について学ぶのは結婚してからでいい」 と言い放つような国では、今後も子供達は必要な性知識を学べず、子供を性の対象にするオトナ(男女共に) によって食い物にされ続けるだろう。
しかし、NHKの番組内ではついぞこうした指摘はなく、結局のところ 「叩きやすい場所を犯人としただけ」 であった。 これは少し前に負の意味で話題になったTVタックルのオタク特集などと何も変わらない。
このような特集が組まれること自体は喜ばしいのだが、もう少し正確に、また覚悟を決めて、真の病巣に切り込んでいただきたい。
Written by 荒井禎雄
Photo by jeronimoooooooo
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