【橋下市長vs在特会】得られたメリットでは桜井氏側の圧勝か

TABLO / 2014年10月21日 12時38分

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Photo by 橋下徹「まっとう勝負」

 10.20大阪市役所特設リングにて、維新・橋下vs在特会・桜井という夢の対決が実現した。これは桜井(通名)の対戦要求を橋下が受け入れる形で行われ、「ヘイトスピーチ規制」を巡るシビアな攻防が期待されたのだが、王者・橋下が桜井の先手を打って感情的な挑発に出るなど予想外の展開を見せ、結果的に10分足らずで乱闘が始まりノーコンテスト裁定となってしまった。

 戦前の予想では、政治の世界でキャリアを積んでいる橋下が、政界に直接関わったことのない桜井を横綱相撲で軽くいなして終わるのではないかという声が大半だったのだが、橋下が己の感情を優先し過ぎてしまったが為に、悪い意味でインパクトのある試合になってしまったと言えるかもしれない。

 この試合について、専門家達は王者・橋下に対して手厳しい評価を下している。

 というのも、桜井にとっては、この一戦は普通では実現不可能な格上相手の大一番なのだから、勝ち負けを度外視してでも目立ちさえすれば何かと得る物がある。桜井程度のポジションであれば「あの橋下とやり合った桜井です」と名乗れるだけでも有り難いと感じるはず。試合がどんな形であれ、維新・橋下の名前を使って自分の存在を世間に広めることが出来れば最高のパブ展開になるのだから、手段を選ばず攻めてくることは解り切っていた。

 しかも、橋下のお陰で自分個人の力では絶対に見向きもして貰えないマスコミに露出できるのだから、ますますキレイな試合にこだわる必要がない。実質的に、見る人に爪痕を残せればいいという割り切った戦い方が出来れば、それだけで桜井の勝ちだったのだ。

 対する橋下は、そのような思惑で攻めてくる挑戦者に対し、まず格の違いを見せ付けねばならなかったように思う。それが出来ず、初手から「アンタじゃねえだろぉぅ!」などと怒鳴ってしまっては台無しだ。この橋下のミスに対して、桜井の方がむしろ冷静に「アンタがダメならオマエと呼べばいいのか?」と返してしまい、この時点で同レベルの選手同士の泥仕合の様相を呈してしまった。

 その後の技の応酬では、橋下が王者の貫禄を見せて流石の正論を繰り出したものの、上に挙げた初手のミスを挽回するには至らなかった。試合を見た人間の誰もが玄人という訳ではないのだから、細かい技術に詳しくない観客の中には、橋下が桜井に押されたと受け取った方もおられるやもしれない。そういう状況を生み出してしまった時点で橋下は王者として失格なのである。自ら進んで桜井と同格に落ちに行ったも同然の大失態だ。

 これについては過去に好例がある。皆さんはUインター・高田と、新日本プロレス・武藤の戦績を正確に把握しているだろうか? おそらく「高田は武藤に足四の字でギブアップ負けした」とだけ覚えておられるのではなかろうか?

 しかし実際は、初戦である 95年10.09東京ドーム『激突!!新日本プロレス対UWFインターナショナル全面戦争』では、皆さんの記憶通り武藤が高田を足4の字固めで破っているのだが、その3ヶ月後の96年1.04東京ドーム『WRESTLING WORLD in闘強導夢』で高田が腕ひしぎ逆十字固めで武藤にリベンジを果たし、IWGP王座も戴冠している。本来ならば、ベルトまで奪ったのだから高田の方が評価を上げてもおかしくない。 ところが、実際は逆だったのである。

 高田は海千山千の新日との交渉でやり込められ、最初に負けて次でリベンジ+新王者という条件を呑んでしまった。これによって「実際は武藤相手に1-1の結果になった=同格の関係を維持した」にもかかわらず、初戦での敗北のインパクトが強すぎ、人々の脳に「武藤に四の字で負けた高田」とだけインプットされてしまったのである。

 今回の10.20橋下vs桜井戦も同様のことが言え、試合序盤の橋下のミスが尾を引き、「橋下と桜井は同じようなレベル」だと思われてしまった。これでは後からいくら正論で桜井を押し込んでも正当な評価は得られないだろう。

 さらに、桜井は報道のカメラに映り込むように自著を置いていた。本当ならば、橋下側は試合開始前のレフェリーチェックの段階で、これだけは止めるべきだっただろう。これを怠り、みすみすNHKに桜井の自著が大写しになるという失態を招いた責任は大きい。王者の地位におごった橋下側の痛恨のミスだと言えよう。

 NHKは中立性を重んじるため、普段は特定商品のCMになるような放送・映像を一切認めない。その厳しさは、音楽番組で歌詞に品名が出て来る場合に詞を変えさせるほど徹底している。それにもかかわらず、今回は桜井の自著のCMと化してしまったのだ。"NHKにCMを流す"という不可能を可能にさせてしまったのだから、ミスや失敗などという言葉では表現できない落ち度だと言っていい。

 こうなると、試合自体は乱闘劇の末の無効試合という裁定であっても、お互いが得た物を比較してみると在特・桜井(通名)の圧勝である。

 今後は「橋下と互角の勝負を演じた桜井」という美味しいエサを狙って、様々な猛者たちが桜井のクビを狙いに来ることが予想される。だが、私が予想するに桜井は絶対に勝てそうな相手でない限り試合を受けはしないだろう。そうなれば、桜井はこのままヒクソン・グレイシー化してしまう。それもこれも、すべては橋下の作戦ミスの代償なのである。

Written by 荒井禎雄

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