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春日太一『なぜ時代劇は滅びるのか』読了...『ほぼ日刊 吉田豪』連載170

TABLO / 2014年10月22日 12時51分

春日太一『なぜ時代劇は滅びるのか』読了...『ほぼ日刊 吉田豪』連載170

 春日太一『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮新書)読了。デビュー作『時代劇は死なず』(集英社新書)を版元が増刷してくれないから、河出書房新社から大幅加筆した文庫版を出すことにしたら、この『なぜ時代劇は滅びるのか』の発売に便乗して集英社が増刷を決意。「それは話が違う!」と春日さんがTwitterでブチ切れまくり、そのつぶやきをボクがRTで拡散した結果、集英社サイドが増刷断念するという「RT人助け」とでも言うべき展開になったのもいい話なんですが、もちろん本の中にもすごくいい話が入ってました。
基本的には、いま時代劇がここまで落ちた戦犯をサーチ&デストロイしまくる檄文ばかりが詰まっていて、それも「これを読んで『春日、お前は間違っている!』と現場が奮起して欲しい」という時代劇愛ゆえなんですが、ボクのツボに入ったのはこんな文章。

「岸谷五朗にしてもそうだが、世間的になんとなく《名優》的な扱いを受けている近年の役者たちへの評価に対し、時代劇を中心に観てきた筆者からすると疑問を呈さざるを得ない。それを痛感させられたのが、先日とあるホームページに掲載された記事だ。大杉漣を中心に、寺島進、遠藤憲一、光石研、田口トモロヲが一同に会し、座談会をしていたのだ。彼らが今の日本を代表するバイプレイヤーなのかと思ったら、気持ちが暗くなった。というのも、遠藤憲一を除いて、他の四人は時代劇では実に稚拙な芝居を晒してきたからだ。特に酷いのは大杉漣だ。そもそも、彼が『名優』の扱いを受けているのが理解できない。いつも棒読みで抑揚のないセリフと大げさに強張った表情は、冗談なのかと思わせるほど下手くそだからだ」

 作家・和田竜氏が帯文で「この毒舌! やり玉に挙げられた人たちが気の毒になるほどである」と書いていたのも誰もが納得するレベル!

 ただ、これだけ各方面に噛み付きながらも「近年でも映画『最後の忠臣蔵』に出演した女優・桜庭ななみは、現場に入る数ヶ月前から杉田成道監督に時代劇の芝居を徹底的に特訓されたことで、まだ十代の新人にもかかわらず主演の役所広司と堂々と渡り合ってみせた」と絶賛していることにほっこりしました!

Written by 吉田豪

Photo by なぜ時代劇は滅びるのか (新潮新書)

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