地方議会が神経質になる「政務活動費」透明化問題
TABLO / 2014年10月24日 15時0分
働けど働けど猶わが生活楽にならざり......と詠んだのは石川啄木だ。反対に働かないほど儲かる仕事があるならば、それは議員という職業かもしれない。
今年7月、兵庫県議だった野々村竜太郎氏の政務活動費ちょろまかし事件が発覚した。行ってもいない城崎温泉などに頻繁に日帰り出張したと申告し、約780万円を受領していたのだ。
だが本気で城崎温泉まで頻繁に日帰りして政務調査を行うと、交通費だけではすまない。ご飯を食べないといけないし、お茶だって飲まなければならない。第一カニを買わないのか? 兵庫県人にとって城崎温泉といえば、カニのお土産が定番だ。
調査後の報告書の作成も含め、とんでもない労力だ。たまには姫路あたりで途中下車して、名物の駅そばをすすりたい。アーモンドトーストの甘い香りに癒されたい。そんな気持ちになるはずだ。
ところが何もしないでいると、そういうことにお金がかからない。交通費がまるまる懐に入ることになる。
野々村氏の件をきっかけに、多くの地方議会では政務活動費の使途について調査が行われ、改善したところもあった。たとえば高知県だ。同県議会の議会運営委員会は10月14日、県議の政務調査費の領収書や収支報告書など全面的にネットで公開することを決めた。条例を制定した上で、来年7月から実施されるという。
国政も動いた。野々村事件をきっかけに、維新の党は国会議員の文書通信交通滞在費の使途について公開する法案を提案している。他の政党はこれを渋っているので、まずは自分たちからと、10月分から12月中旬をめどに公開する予定だ。
そもそも国会議員は相場より格安の家賃で都心の宿舎に入ることが可能だ。JRパスや飛行機のチケットも支給され、地元に帰る際の費用も手当てされている。
それでも支援者に郵便物を送るなど、それなりの費用もかかる。政務で地方に行った時には、宿泊費も必要になるだろう。文書交通費はそれでいいとして......。
疑問なのは月額65万円の立法調査だ。これは議員個人に対して支給されるのではなく、所属会派に支給される。国会は会派単位で活動する。国会内に事務局が置かれるので、事務担当者を雇うなど経費もかかる。それに充てられるのが立法費なのだが、では会派に議員が1人しかいない場合はどうなるか。
実質は議員の懐に入る。しかも積極的に活動する議員なら、調査や資料作成など費用がかかるだろうが、なにもしない議員もいる。その場合、立法費はまるごと「収入」になってしまう。そうした議員の場合は、文書交通費も同じだろう。すなわちじっとしている議員の懐は豊かになり、働いていろんなことにコストをかけるほど、何も残らないことになる。
歳費については議員の生活費に充てられるので仕方ないとしても、その他の費用については「働きに応じて」ということはできないのだろうか。
臨時国会が始まった。さてどの議員が何もしないのか、がっぽりと貯め込んでいるのか。それをじっくり観察してみよう。
Written by 安積明子
Photo by Yoshikazu TAKADA
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