パリ9区で発見、欧州最古の「フリーメイソンロッジ」潜入ルポ

TABLO / 2014年10月30日 18時0分

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▲欧州で最も古い歴史を持つロッジ「GRAND ORIENT DE FRANCE」

 フランスはパリ9区、カデ通り。野菜や鶏肉を売る屋台が並ぶ、パリ市内でも古びた下町だ。その路上を歩いている途中、周囲の風景に似つかわしくない近代的なビルを発見した。ガラス張りの入り口から中を覗けば、やけに身なりのよい紳士たちが闊歩していて......。一体このビルは何かと見回したところ、「GRAND ORIENT DE FRANCE」なる文字が掲げられている。直訳すれば「フランス大東社」。

 ということは、もしやここって、フリーメイソンのビルではないか!

 フリーメイソンの起源である英国グランドロッジに並ぶ、ヨーロッパ大陸で最も古いロッジ(支部)、それが「フランス大東社」だ。しかし、そんな秘密結社の老舗ビルにも関わらず、なんだか明るくて入りやすい雰囲気......というか、明らかに一般人も出入りしているようだ。

 都市伝説でささやかれるフリーメイソンといえば「世界を裏で操る秘密結社」。会員以外が秘密を探れば消されるかもしれない、といったイメージが横行している。しかし、このロッジはなんと一般に開放されており、誰でも出入りが可能なのである。それもそのはず、エントランス部分が「フリーメイソン博物館」として運営されているのだ。

「まさか歴史の闇に隠された文書や、世界を牛耳る本当の支配者が紹介されているのか?」

 そんな風に期待する人がいれば、いたって普通すぎて拍子抜けしてしまうだろう。1733年から発足したフランス大東社の歴史資料、歴代有力者たちの肖像画や写真、過去に使われていた儀礼用のグッズなどが展示されている。まあ、フリーメイソンという観点を覗けば、どこにでもある歴史資料館である。明らかにメイソン会員らしき受付のオジさんもやけに明るく、「入場券3種類あるけど、どの絵柄がいい?」とフレンドリーな印象。

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 変わった点といえば、入り口の床に刻まれた奇妙な文様だろうか。何ヶ国語もの文字が円状に配列されている。オジさんの説明によれば、これは世界中の言葉で作った「指紋」らしい。もしや、世界の謎を解くための「メイソン・コード」か!?

 しかし「指紋」に書かれた諸外国語を解読してみると、意外に普通のことしか書いていなかった。例えば漢字で記された「政教分離」という四字熟語。これは18世紀当時、カトリック教会からの離脱を謳い、無神論者も受け入れた、フランス大東社の理念を表しているのだろう。それに政教分離は近代ヨーロッパの全体的な流れであって、ことさらフリーメイソンに限った思想ではない。

 英語の文はシェイクスピア『真夏の夜の夢』の台詞「恋は目ではなく心で見るもの」。ラテン語は古代ローマ・ホラティウス『歌集』の「あまり大衆に迎合することなかれ」といった一節。漢文は元の時代に出された官庁文書『廟学典礼』にある「学校運営はキチンとすべし」といった一文。

 う~ん、普通に有名な古典からの引用だし、そんなにフリーメイソンと関係無いような気がするけど......。「コノハナノウヘニキレイナテフノツガイヲ(この花の上に綺麗な蝶のつがいを)......」なる古めかしい日本語も一見謎めいているが、「ヨミハヂメ」と最初に書かれている通り、戦前あたりの国語教科書からひっぱってきたものだろう。どうも、全体的に当たりさわりの無い文章を持ってきているだけである。 どおりでパシャパシャ撮影してようが、誰も注意しに来なかった訳だ。

 ことほどさように、フランス大東社ロッジを見学してみても「フリーメイソン=世界を牛耳る秘密結社」なる印象は受けない。そもそも大東社は他のメイソンロッジより入会規定もユルやかで開かれた組織。だからこそ博物館として一般開放されているのだろう。陰謀論で囁かれるイメージと異なり、「本当は慈善事業も行う、普通の名士会団体なんだよ」とアピールする狙いもあるのかもしれない。

 お土産グッズも充実している。フリーメイソンも登場する漫画『コルト・マルテーズ』グッズや、小粋なポストカード、マグネットに鉛筆、マグカップなどなど。受付のオジさんも、やけに色々買わせようと気さくに話しかけてくる。これはチャンスとばかりに、「入会儀礼の部屋は見れないのか?」とiPhoneの画像を見せて訊ねてみた。ネット検索してみたら、日本人女性たちが部屋を見学させてもらったというブログがひっかかったのだ。

 その瞬間、オジさんの顔から笑みが消え、「ノン、それは無理だ」なる低い声の返答が。「いやでも、この日本人の女の子たちは部屋に案内されてるよ」と説明しても、黙って首を横に振るばかり。先ほどまでのフレンドリーさは一体どこへ......。もしかして、調子に乗ったスタッフが女の子たちに部屋を見せたことで、けっこうな問題にでもなったのだろうか。

 まあいいや、と受付を離れて少し奥の方へ。エレベーター付近の写真も撮ろうとしたところ、「ムッシュー!」と後ろで叫ぶ声が。振り向くと、屈強な黒人警備員が「ノーフォト!ノーフォト!」と怒鳴りながらこちらに駆け寄ってくる。どうやらここから先は会員限定のスペースのようだ。博物館の展示をいくら撮っても何も言わなかったのに、ちょっと通路の入り口を撮っただけでエラい剣幕である......。

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 まあ確かに、フリーメイソンの肝は「秘密結社」であること。陰謀をはたらく云々ではなく、組織の特徴として、ある程度の秘密性は確保しなければならないのだろう。それはけっこうユルい大東社でも同じことのようだ。とはいえ、博物館とエントランス部分だけなら入場も撮影もまったく可能。気になる方々は、パリ観光の合間に、このフランス大東社ロッジを覗いてみるのもよいだろう。

Written Photo by 吉田悠軌

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