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【小4なりすまし】青木大和氏の過去発言を検証する

TABLO / 2014年11月30日 18時0分

【小4なりすまし】青木大和氏の過去発言を検証する

「どうして解散するんですか?」。そうした疑問を問うサイトは、自称、小学4年生、10歳の「放送部の中村」くんが作ったものとされていた。しかし、「大人がかかわっているのではないか?」との疑問が出された。

 実はドメイン名の取得に、NPO法人「僕らの一歩が日本を変える。」の代表理事で、大学生の青木大和氏が関わっていたことがわかる。結局、自作自演だということがわかり、公式サイトで謝罪をし、代表理事を辞任した。謝罪の言葉にはサイトを立ち上げた理由を、以下のように書いている。

「なぜ解散するのか、理由がわからず、僕の頭の中には多くの疑問が残りました。そんな時に常に社会に対して疑問を持ち、どうして?なんで?と大人に問いかけていた自分の幼少期を思い出しました」

 この疑問自体は素直なものだ。大人の私だって、このタイミングで、しかも野党からの不信任案も出ていないのに、また、与党内での反安倍の動きが活発になったわけでもない。しかし、大学生が小学生になりすましたこと、その人物が政治系のNPO代表理事だったことも手伝って、「なりすまし」への批判が高まったのだろう。

 安倍晋三首相もフェイスブックで言及した。「批判されにくい子供になりすます最も卑劣な行為だと思います。選挙目当ての組織的な印象操作ではないでしょうが、選挙は政策を競い合いたいと思います」と批判した。現職の首相が大学生のやらかした行為にコメントするのに「卑怯」という言葉を使うとは大人気ないのではないか。それほど、この「解散の是非を問う行為」にナーバスになっているのだろう。

 さて、渦中の青木大和氏はどんな人物なのか。東洋経済オンラインの連載『スーパーIT高校生のTehuの未来予測』の、「若者代表は古市さんじゃない、オレたちだ!新春U20対談 日本を変える10代(前編)」(2014年1月4日)に登場している。青木氏は1994年生まれの慶應義塾大学生。2012年春、10代の政治関心の向上、政治参加の拡大を目的とする高校生の任意団体「僕らの一歩が日本を変える。」を設立。NPO化している。

 青木氏は高校1年生の15歳のとき、一年間アメリカに留学した。そのとき大統領選挙の期間だった。そこで「オバマキャンペーン」を目の当たりにする。アゴラチャンネルのネット番組「言論アリーナ 国民投票法と憲法改正」(14年6月5日)に出演した際、このときの感想を述べている。

「ハリウッドスターがCMに出て、『私はオバマを支援します』と堂々と言うわけじゃないですか。イケてる俳優が言うということは、若い子たちも日々考えないといけない。それがスタンダード」

 高校生でも政治の話ができる環境に日本とのギャップを感じ、アメリカのスタンダードが「かっこいい」と話している。同番組でこうも言っていた。

「(日本の政治には)興味自体はあったが、詳しくはない。日本で政治のことを話をしているのはオタクじゃないですか。自分の中では話してはいけないというイメージがあって。日本だとダサいですよね」

 こうしたイメージはどんなコミュニティに属しているかで変わってくると思うが、少なくとも青木氏がいたコミュ二ティは「政治話をするのはオタク」という印象だったのだろう。アメリカで政治を語る高校生のかっこよさを感じた青木氏は、日本でもそう変えたいと思ったのだろう。

 これ自体、新しい動きではない。また、若者の政治参加や18歳選挙権についても言及しているが、これまでの若者政治参加運動と変わらない。ただ、12年夏には「高校生100×国会議員」を開催している。高校生が国会議員と一緒に討論するという行動力はあった。一方で、デモという手段には古臭さを感じているようだ。東洋経済オンラインの同じ記事ではこう述べている。

「オレもそれがわからないから、デモが起きると絶対見に行くんだけど、参加者の年齢層がめちゃくちゃ高いんだ。見た感じ、定年すぎた人たちっぽくて、そのあたりって世代的に叫びたい世代じゃん。みんな時間を持てあましていて、鬱憤を晴らしに来てるんじゃないのかなって思う(笑)」

 たしかに気持ちはわからなくはない。年齢層が高いことはそうだろう。しかし、それはどんなデモかによっても変わる。子どもの貧困対策を充実を求めるデモは、あしなが育英会の若者たちが中心で、現実政治に一定の役割を果たした。また、政治的な主張ではないが、虐待で亡くなった子どもたちの追悼デモ(パレード)の参加者は比較的若い年齢層だ。その意味では、見ているデモの範囲は狭いのかもしれない。

 また、「どうして解散するんですか?」の公式ツイッターでも、署名人や朝日新聞の記者、沖縄タイムスの公式アカウント、菅直人元首相、民主くん、在特会のメンバーにメンションを送り、同一内容のコピペ文章で「協力してほしい」とつぶやいている。これだけを見ると、話題になるように仕掛けているが、自作自演のリスクを考えていなかったのだろう。

 サイトでの謝罪によれば、「僕が小学4年生を自演することで面白いとみなさんに受け止められ、より多くの方を巻き込んだ形」にしたかったようだ。インターネットが若者の政治参加を促すと、ネット選挙をポジティブに考えているようだ。東洋経済オンラインの「『若き老害』常見陽平が行く サラリーマンいまさら解体新書」(14年11月14日)の「若者に選挙は『無理ゲー』じゃないか」では、次のように言っている。

「僕はこれから変わっていくと思っています。10年、20年前だと、支持母体、地域の論理があった。その時代の若者は、親の政治思想を引き継ぐだけの存在だったけれど、今はインターネットがあるので、自分で情報収集できる。そこに可能性を感じている」

 少なくとも今の現実政治は「地盤」「看板」「カバン」に左右される。しかし、ネットがあることで自発性が生まれると感じているのだろう。そう信じたいのは私も同じだが、一定程度の情報収集ができても、政治の選択幅は変化しないのはなぜか。また、情報収集が自由にできても、集票という政治力に結びつく現象はまだ少数なのはなぜか。これらの点には言及していない。聞かれなかっただけなのか。それとも、まだ分析の途上なのかはわからない。

 こうしてみると、インターネットのポジティブさに青木氏は素直に乗ってきたのだと思う。都市部の「意識高い系」の大学生の代表、という感じがするが、若い世代が政治家とつながり、意見を言うという試みは悪くはない。以前だったら、学園祭に政治家を呼んで意見していたような存在だったのかもしれない。

 しかし、今回は少なくとも、ネガティブに働いた。若者の政治参加はこれまでのいろんな人が取り組んできた。私の印象としては、青木氏に限らず、こうした政治参加の運動は、なぜか、過去の運動やその運動における失敗に学んでいない。ただし、まだ青木氏はまだ20歳。この失敗をかてに新しい取り組みをしてもらいたい。

Written by 渋井哲也

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