安倍首相の言論統制、ファシズムは巧妙に進行する|岡留安則コラム
TABLO / 2015年1月7日 20時0分
元「噂の真相」編集長岡留安則の編集魂
2015年の幕開けは毎年恒例のようにフィリッピン・マニラで迎えている。沖縄から距離的に最も近い常夏の国であり、貧しいと思われているフィリッピンだが、年末年始のクリスマスと正月はお祭り騒ぎの国だ。カウントダウンは、マニラ市内中で花火が打ち上げられ、街中では爆竹の音が鳴り響く。国によって法律の違いもあるのだろうが、花火も市民が自由に打ち上げ、相当の火薬量と思われる爆竹もひっきりなしに「バンバン」と響きわたる。この年末・年始だけでも死者や重傷者が出たことが、新聞やテレビでも報道されるほどだ。タイとかでもカウントダウンを経験したことはあるが、フィリッピンは世界でも際立って派手な光景が見られる。一見してフィリッピン国民が不満を爆発させている行事のようだが、フィリッピンは昨年も今年も経済成長を続けており、一部の富裕層はバブルを満喫しているといわれるほどだ。とはいえ、街中にはホームレスやストリートチルドレン、渋滞の車の間を器用に動き回る物売りの人々も多い。バブルの一方で、いわゆる格差社会の光景はこの国の変わらない姿でもある。
フィリピンの事情を書いてきたのは、日本との比較をしたいとの思いである。日本は安倍総理がアベノミクスを掲げて強い経済国家づくりに意欲を見せているが、恩恵を受けているのはほんの一握りの富裕層のみである。それでも多くの国民は安倍政権に期待を寄せて、昨年末の解散総選挙では、連立与党の自民党、公明党に対して絶対安定多数の300議席を越える支持を与えた。安倍政権は2年間の安倍政策が信任されたと判断し、より強固な格差政策を継続しようと目論でいる。年末から安倍政権は法人税の減税を目論んでいる。強い経済を築きあげるには、企業が豊かになり、そのおこぼれが社員や市民にも還元されていくという主張だ。俗説としては常套的なものだが、現実としては、持てるものと持たざる者の格差は広がるのが通例である。
安倍総理の強い経済国家づくり狙いは、同時に軍事面での強化もセットとなっている。今年の議会で最大の懸案とされているのが,集団的自衛権行使にむけた安保法制備のより踏み込んだ「戦争の出来る国」への国策の転換である。すでに、憲法8条の改正を踏むことなく、米国と軍事同盟強化に邁進している。絶対的安定過半数を獲得した安倍政権が憲法改正も視野に入れていることは明白だ。すでに昨年の段階から武器輸出三原則を放棄しており、戦後日本の平和国家は大きな岐路に立たされている。原発に関しても、福島原発の収束も廃炉への途筋も見えない段階で再稼働を既成事実化していく方向性を打ち出している。再稼働だけではなく、原発技術の輸出にも意欲を見せている。昨年の12月10日施行された「特定秘密保護法」も安倍政権が狙う軍事国家への途としては不可欠の国家機密統制法である。言論の自由を大きく脅かす恐れのあるこの危険な悪法に対して日本のメディアの不感症ぶりも露わになった。
昨年は朝日新聞のバッシングが大きく報道されたが、安倍政権のタカ派軍事路線と朝日バッシングは連関している。安倍総理の大嫌い朝日新聞を叩くことは安倍路線の露払いを果たすみたいなものだ。朝日の影響力を弱めて、安倍に近い讀賣新聞や産経新聞の存在感を増せば、安倍にすれば言論統制のための一丁目一番地である。ファシズムは何時の時代も静かに巧妙に進行していくのである。最近は使わなくなったが、戦後レジームからの脱却は岸信介から受け継いだ安倍晋三のDNAそのものなのだ。
安倍晋三にとって都合がいいのは、日本社会そのものもに安倍イズムを支持する空気が蔓延していることだ。反韓、反中を煽ってきたのも安倍総理の外交政差にあった。在特会の運動やヘイトスピーチもそうした流れで出てきた鬼っこみたいなものである。自民党議員の大半は日本会議に関わっているといわれる。まさに戦前の日本が歩んできた戦争への途を日本全体の空気が後押ししているとなれば、安倍晋三がヒットラーになる日はそう遠くないのではないか。
問題は人気の薄くなった米国・オバマ大統領が、安倍政権の危険な傾向を見抜いており、何かと釘を刺していることだ。米国にすれば、従順な日本政府はウエルカムだが、戦時下の日本のような武力を使うことを平然とするような帝国主義はすべからく「NO!」のはずだ。米国だけではない。中国、ロシア、韓国、北朝鮮という日本に危機感を持つ国々も多い。オバマ大統領の任期は長くはないが、国際関係を最優先にする米国戦略と衝突すれば、日本の行く末に暗雲が立ち込めるのは自明の事である。安倍総理の外交能力は一人合点の傾向が強く、世界の指導者の中でもCクラスにすぎない。アベノミクス同様、今年の日本の行く末は安倍外交に注目すべきである。以上、マニラからの新年原稿をお届けしておきたい。
Written by 岡留安則
Photo by simonturkas
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