冬に急増する刑務所行き「志願兵」を補足した|万引きGメンの事件ファイル

東京ブレイキングニュース / 2015年1月8日 15時0分

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 いま、警視庁管内にある某警察署刑事課の取調室で、この原稿を書いている。今日の現場である大型スーパーにおいて、ふたつの惣菜を盗んだ男を捕まえて警察に引き渡したところ、執行猶予中であることが判明して逮捕されることになったのだ。実況見分をすませて、ある程度の内容を話してしまえば、我々にやることはない。刑事や警察官が手分けして作成する書類が完成するのを待つしかなく、とにかく暇なのだ。

 先ほど捕捉した被疑者は、三十代後半の男性で、この季節の風物詩ともいえる志願兵だった。志願兵とは、軽微な犯行を繰り返し、留置場などへの出入りを繰り返す者のことをいう。冬場に急増するのは寒いからで、居場所のない彼らにとっては、自由はなくとも寝食に不自由しない留置場に入れてもらった方が楽なのである。その目的を悟られて逮捕してもらえない累犯者も多数存在しており、切羽詰まって、より大きな事件を起こす事例も珍しくない。

「俺、十日前に拘置所から出たばかりで、執行猶予中なんですよ......」

 事務所の応接室で、テーブルに並べられた被害品を前に、なんら悪びれることなく告白する男に呆れる。何をして刑務所に行ったのかと聞いてみると、窃盗(万引き)や傷害、強制わいせつ、事後強盗などの罪で三回の懲役を務めたと饒舌に語った。親兄弟とは絶縁しており、頼れる身寄りはなく、住む家も金もないので、拘置所を出てからの一週間は更生保護施設に身を寄せていたという。そこで生活保護を受給して、職を探したものの上手くいかずに、施設での暮らしが嫌になって脱走してきたらしい。

 この三日間は浮浪者生活だったというので、施設に戻るよう進言してみると、よほど嫌な思いをしたのか絶対に戻りたくないと頑なに拒まれた。施設で暮らすのは耐えられないし、娑婆にいても生活できないので、懲役に行きたいと言うのである。

 被害品は弁当と総菜の二点で、被害総額は五百二十円であった。男の所持金は、八百円。商品を買い取れる状況にあるが、これが全財産なので払いたくないと主張している。あまりに身勝手な話ではあるが、買い取りを強要する訳にもいかない。店の内規に沿って警察に通報して、現場に臨場した警察官が男の犯歴を照会した結果、男の望み通りに逮捕されることになった。

 このくらいのことで逮捕されるのかと不思議に思う方もおられるだろうが、被疑者の生活状況や前科前歴によっては、被害の大小に関係なく逮捕されることになる。当たり前のことであるが、万引きは立派な犯罪なのだ。

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