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フランスの風刺画は「芸人の業」だった!?|プチ鹿島の『余計な下世話!』

TABLO / 2015年1月20日 18時0分

フランスの風刺画は「芸人の業」だった!?|プチ鹿島の『余計な下世話!』

 先週「大阪の交通標識にステッカーを貼って"アート"と主張した、フランス人アーティスト」というニュースがありました。道路交通法違反で共犯の女性が逮捕された。私は『荒川強啓デイ・キャッチ!』(TBSラジオ)でこのニュースを調べたのですが思わず「ははぁ。」とうなってしまったのです。

 というのは、このフランス人アーティストは「道路標識は権威の象徴。タブーに触れることで、言論の自由を表現したアート作品だ」と主張しているのだ。出た! 言論の自由、表現の自由! 話題のキーワードがここにも。やっぱりフランス人!

 この事件に対して日本での反応は「なんでもアートと言えばよいわけではない」とか「場所を考えろ」という声も多かった。ではフランスでは過去にこの「道路標識アート」にはどんな反応だったのだろう。フランスに詳しいジャーナリストに聞いてみた。すると「おもしろがっている人が多い」というのです。おまけに「過去フランスでは逮捕されていない」と。もし今回日本で逮捕されたら「なんて日本はウィットのわからない国だと、そっちの方がニュースになったのだろう」というのです。

 一口に表現の自由と言いますが、日本とフランスじゃほんとに温度差がある。「やはり革命で自由を勝ち取ったからですか?」と聞いてみると、ジャーナリスト曰く「自由は放っておくと守られなくなる」という意識があちらの国にはあるという。

●フランスの笑いは「差別」と「上から目線」をたっぷり含んでいる

 そして今回の風刺漫画テロ事件だ。まさに「自由を守るために」闘っているのだろう。ここも大事なポイントだが、フランスの笑いはキツイ。もっと言えば「いけすかない」。その姿勢は「笑い」を放ったあとの毅然さにも出ている。たとえば2012年にフランス国営テレビは、サッカーの試合で活躍した日本代表GK川島選手の腕を「四本腕」にした合成写真を紹介して「フクシマの影響ではないか」とコメントした。

 言われたほう(日本側)はそのえげつなさ、もっと言えばそのつまらなさにギョッとしたが、コメントした司会者は「私の冗談の対象は2つ。日本に負けたフランス代表と、原子力災害が引き起こす結果だ」と堂々と述べていた。原発事故の悲惨さという本質を問題にしているのだと毅然としているのだ。

 今回の風刺画事件をみてもわかるが、フランスの笑いは「差別」と「上から目線」をたっぷりと含んでいる。それが国の芸風だと思うしかない。これを「表現の自由」と言うとどうしても高尚な議論になってしまうので、たとえば「芸人の業」と置きかえてみたらどうだろう。

 芸人には、客前に出たらどうしてもパンツを脱いでしまう人がいる。やめろと言われれば言われるほどやってしまう。これはもう業だと思うしかないのです。

 同じくフランスという芸人は何かあればどうしても上から目線で皮肉をかましてやりたくなってしまう。パンツを脱ぐのと、テロにあうくらいの皮肉は「パフォーマンスの過激さ」と言う点ではまったく同じ。どちらも支持者がいればそれはサービスであり、自分の役目だと確固たる自信を深める。

 いってみればフランスは「表現の自由・過激派」。おまけに自分たちの笑いは高級だと思ってるフシもある。分からない奴は馬鹿。いけすかないことこの上ない。

 誰か、うっとりしてるフランスにも風刺画を書いてあげて。

Written by プチ鹿島

Photo by http://www.amusingplanet.com/

http://n-knuckles.com/serialization/img/kasimaph.jpg

プチ鹿島●時事芸人。オフィス北野所属。◆TBSラジオ「東京ポッド許可局」◆TBSラジオ「荒川強啓ディ・キャッチ!」◆YBSラジオ「はみだし しゃべくりラジオキックス」NHKラジオ第一「午後のまりやーじゅ」◆書籍「うそ社説 2~時事芸人~」◆WEB本の雑誌メルマガ ◆連載コラム「宝島」「東スポWeb」「KAMINOGE」「映画野郎」「CIRCUS MAX 」

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