安さには理由がある...摘発された激安デリヘルのカラクリ
TABLO / 2015年1月23日 20時0分
激安で知られるデリヘルチェーンに 「公式HPの女の子と実物が違いすぎる!」と苦情が殺到していたそうで、なぜか結果的に売春防止法で経営者らが逮捕されるという(個人的に)衝撃的なニュースを目にした。
今回逮捕されたのは、全国展開する『サンキューグループ』の経営者ら21人。激安デリヘルながらも年間で約4億円の売り上げがあったそうで、「30分3,900円」の価格設定から考えると年にのべ10万人の利用者がいた計算になる。全国に約100店舗あるとされているので、強引に平均すると1店舗につき年間1,000人の利用者がいたようだ。ただし地域によって利用者数にバラツキがあるだろうし、また表面上は別の店となっていても実際は1つの店というケースもあるだろうから、簡単な目安程度にしかならない数字ではある。
さて、まずは「自販機エロ本の表紙と中身が違う!」的な苦情で、どうして売防法になってしまったのかというツッコミを入れておきたい。業種がデリヘルだけに景品表示法という訳にもいかない(下手をすると国が売春を商売として認める形になってしまう)だろうし、かといって最低限のやる事がやれて価格が安いので詐欺罪の適用も微妙なところ。おそらく今回のケースでは「全く違う女の子が来る」というクレームは、警察がこのチェーンに目を付けたキッカケでしかなかったのかもしれない。風俗だからつつけば何かあるだろうと何気なく内偵を始めてみたら本番やってる女の子が見付かったとか、そんな棚ぼた的な展開だったのではないだろうか。それくらいモヤモヤするニュースである。
だがそんな話はどうでもいい。問題なのは、こうした事件が起きてしまうと世の中から「激安デリヘル」という存在がなくなる可能性があるという点だ。まずはどうして30分で3,900円という激安価格が実現できるのかから説明しよう。
経営側にも働く側にもWin-Winのシステム
デリヘルは、まず待機所を設けてそこに出勤した女の子を詰め込んでおく。そして客から注文が入ると指名された嬢や条件に合った嬢が派遣されて行くのだが、あまりに指名が入らないとか、チェンジで戻されてしまう子は、ひたすら待機所で文字通り待機する事になってしまう。これを「お茶をする」と言うのだが、激安系のデリヘルはこの「お茶をする女の子」をいかに出さないかで効率よく女の子を金に変え、それによって単価は下がっても利益が確保できるという仕組みにしている場合が殆どだ。
では、お茶をする女の子を出さないためにはどうすればいいのか。これは簡単で、チェンジやキャンセルを認めなければいい。事実サンキューグループのHPを見ると「チェンジ不可」と明記されている。デリヘルは、やって来た嬢があまりに条件と違う場合はチェンジ(女の子を変えて貰う)が出来るとされているが、このチェンジがある限りお茶をする子は減らない。1日中待機所でお茶している子であっても、さすがに無収入(むしろ店に通う分だけ赤字)で帰す訳にはいかないので、店が交通費くらいは渡すだろう。であるならば、客ひとり分の利益が減っても、チェンジなしでガンガン回れる激安デリヘルの方が、店にも嬢にも良いんじゃないですかという、いわばWin-Winのシステムなのである。ついでに言えば2~3万円当たり前のデリヘルがホテル代込み数千円で楽しめるのだから、客にしたってメリットがない訳ではない。
嬢の立場からすれば、待機所等で他の嬢とくっちゃべっていれば、嫌でも「あそこの店の方が客が多い」だの「あっちの方が取り分が大きかった」だのという情報が入ってくる。他の店の景気の良い話を聞かされたら、お茶だけして交通費を貰って帰るばかりの店に在籍するより、もっと稼ぎの良い店に移りたいと考えて当然だろう。そのようにして嬢の流出が続けば店の手駒が減るだけではなく、嬢同士の口コミで悪評を広められるオマケまで付いてくるので、ますます女の子が集まらなくなり、結果的に稼働率が悪化して売り上げが減る。店からしたらこれが最悪の悪循環だ。
そうしたお茶要員の子からすれば、たとえ客ひとりにつき2~3,000円程度しかお金にならなくても、確実に1日3人は客が取れる店があったとしたら、ツベコベ言わずに働き続けてくれるだろう。仮に他の店に移ったとしても、店が変わった途端にお茶要員から売れっ子になるなんて話は有り得ない。お茶要員はどこに在籍してもお茶要員なのだから、いずれその現実を思い知って確実にお金になる激安店に戻ってくる。激安系デリヘルとは "そういう商売" なのだ。だから「自販機エロ本の表紙と中身が違う!」程度のご愛嬌は我慢せねばならない。それが嫌ならチェンジが可能で女の子の質の高い通常価格の店を使えよという話だ。
激安系デリヘルとは、嬢にとっても客にとっても"妥協"が大事な業態である。風俗に大金を使える状況ではないが、いくら安くてもピンサロは嫌だ。かといって1万5千円程度のソープに行って自分の母親みたいな年齢の嬢に相手されるのも嫌だ。となれば選択肢はこの手の激安系デリヘルか、街角で「マッサージ、マッサージ」と声を掛けてくる中韓系の違法風俗(だいたい1万円ぽっきり)しかない。激安系デリヘルは、いわば貧乏な男と、同じく身体を売るくらいしか選択肢のない女の間を取り持つ、とても有り難い存在なのである。そんな有り難いお店に対して、金をケチった自分を棚に上げて「嬢の質が悪い」とクレームを付けるとは何事か。 それで激安系デリヘルという業態が立ち行かなくなって消滅すれば、ダメージを受けるのは「そこしか選ぶ余地のない男」と「そこしか稼ぎ口のない女」である。貧乏人が自分を含めた貧乏人の首を締めているのだ。
その昔、鶯谷で5,000円だというババアを2,000円に値切ったら、股ぐらにスライム(緑色だったので恐らくキアリー必須のバブルスライム)を飼ってた経験をした風俗好きのベテラン貧民である私からすれば、たかだか4,000円なのだから「ヒトが来ただけ良かったと思え」と言いたい。貧乏人に必要なのは、どんな相手にも感謝の気持ちを持つ心である。
これは風俗に限らずの話で、特に飲食系では死者まで出ているが、安いには安いだけの理由があるといい加減に学んではどうか。企業努力でどうこう出来るには限度があり、その限度を超えた低価格には必ずリスクが伴う。
貧乏人向けの有り難い商売を潰すのは、厚かましい貧乏人である。
Written by 荒井禎雄
Photo by Street Smitty
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