2015年、ヤクザと半グレはどこへ向かおうとしているのか
TABLO / 2015年3月20日 15時0分
全国の暴力団に対して、強烈な締め付けを行った暴対法と暴排条例。彼らの行く末はどこに向かっているのか? 暴対法はヤクザを締め付け、暴排条例は一般人を締め付けている法律だ。どちらにしても一般人とヤクザの距離を開けさせてシノギを厳しくする。
警察庁の統計でもここ数年ヤクザの構成員は減少の一途を辿っている。では、抜け出した人間の現在、そして今もヤクザである人間やそれに準ずる準暴力団、いわゆる半グレと呼ばれている人間はどうなったのか。彼らの生の声を聞いた。
まず最近、歌舞伎町でぼったくり等が問題となっている飲み屋や風俗店はどの様に変化しているのか。ミカジメでの付き合いは当然のこと、暴力団による経営も少なくない。だが、ある組織関係者は、「今はミカジメも全く払わない。俺たちが行くとすぐに警察にチンコロ(密告)されるから。だから今は貰っていない」と嘆いた。
同意見は数人から聞いた。繁華街で大きく経営している風俗業者はヤクザとの距離を置きつつあるようだ。では、ヤクザとの関わりが減ってきた歌舞伎町は安全になっているのか。
「歌舞伎町にある組織が風俗案内所を始めたよ。かつてはぼったくり飲食店にも手を染めていた誰もが知る組織だよ」
この言葉に筆者は耳を疑った。というのは、今までぼったくりに合うのはほとんどが街頭の客引きに付いて行ったのが原因で、風俗案内所に関しては安全だと思っていたからだ。風俗案内所から紹介して貰った店でサービス、時間が短くなる等の問題はあったが、料金的には問題はなかった。その「神話」が崩れてしまうのか。まだ、この案内所もオープン間もない為にトラブルが発生した等の報告は上がってはいない。だが、警察当局も把握していないため、近いうちに何かしらの問題は起こるだろう。
地方のヤクザのシノギについても述べてみたい。筆者が今まで取材した地方組織は正直「食えて」いる。それはその地方で根付いている組織のみという限定付きではあるのだが。密漁、人夫出し等、これらは肯定する訳ではないが、ヤクザのシノギではあるが正業だ。
その他、地域に密着して組長クラスがその地域の名士となっている事も多く見受けられた。地方議員は元よりライオンズクラブ、観光協会などにも食い込んでいた。そして自分の子息を代議士秘書などに送り込んでもいた。つまり官民全てに食い込んでいたのだ。
一方、大都会のヤクザはどうか。金になる都心部に関東の組織はもちろんのこと、地方の組織も事務所を構えた。そこでは色々な摩擦も起こり、シノギも当然の様にバッティングをした。その為に色々な街で「親睦会」が作られて抗争は避けられるようになったが、今でも新聞沙汰にならないだけで摩擦は少なくない。
昨今、世間を騒がせた「半グレ」はどうか。数々の事件を起こし世間を震撼させ、「準暴力団」なる新たな定義を作った彼らは、今も当然生息している。しかし、元々警察庁では統計で暴力団を「博徒」「テキヤ」「愚連隊」と分けていたのだから別段感心する訳ではない。だが、準暴力団と言う言葉を作ってしまった彼らは、今は集団として表立った行動はしていない。ある「準暴力団」に属している人間は、この様に語った。
「今までは例えば芸能界でも女の供給元とかイベントの人集めとか色々頼ってくれた。だけど世間がこれだけうるさいと、正直あまり付き合ってはくれなくなった」
――では今どの様に食っているのか?
「当時の人脈は今も生きている。それはいい意味でも悪い意味でも。それを使って正業をしているよ、色々なIT関係とかね」
――特殊詐欺はしていないのか?
「あれをしているのは時流に乗り遅れた人間ですよ。騒がれた頃にはもう違う事していますよ。それに頭のいい人間はもう表には出て来ないでしょう」
準暴力団でもある程度頭のいい人間や、金を持った人間の名前は実は表には出て来ない、それはヤクザにも言える事だ。組織の看板となっている人間はそう簡単にカタギにはなれないが、金を持った人間は組織に金を詰めてカタギになるケースは数多く見られる現象である。だが、今はカタギになっても5年間は暴力団関係者と認定される為にその様な事は少なくなった。
2020年の東京オリンピックまで、かなり締め付けが厳しくなるであろう裏社会。どの様に変化するのか警察当局は勿論マスコミも目を離せないであろう。
Written by 西郷正興
Photo by Amateur.Qin
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