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反権力志向だった愛川欽也が評価していた芸人|ほぼ週刊 吉田豪

TABLO / 2015年4月21日 12時0分

反権力志向だった愛川欽也が評価していた芸人|ほぼ週刊 吉田豪

 菅原文太&愛川欽也という『トラック野郎』(75~79年)の2人がどちらも晩年には反権力的な言動が増えていた事実が非常に興味深いんですが、そもそもキンキンが企画しているだけあって『トラック野郎』という映画自体、下ネタでカモフラージュしているけれど実は反権力映画でした......と10年前に取材したときにキンキン本人が言ってました。

「トラック野郎にとっての敵は警察しかないんだよ。トラック野郎があんまり正義感があって密輸を捕まえたとか、そういう話は面白くない。反権力となると警察しかないわけだよ。俺の役のジョナサンっていうのは、どっちかっていうと気が弱いんだけど、反権力には変わりないんだよ。で、ジョナサンは元警官だったっていう設定を作っちゃったの。これには無理があるんだけどさ(笑)。それで、その警官だったヤツが......これもある意味で、ベトナム戦争から帰って来たヤツがそれから反戦運動に走るというのに通じるんだよ。で、気が弱いんだよ。そんなヤツの権力に対する抵抗の仕方っていうのは、夜道を走ってると人形でできたお巡りみたいの立ってるじゃない、あちこちに。それで運転しながら丸太で人形の頭を『この野郎!』って叩くんだよ。そうすると人形がカチーンッていうじゃん。それ何体かやってると『痛え!』って本物がいやがったっていうのをやって。こういうのはやっぱりマズいわな(笑)。それをずっとやってるうちに警視庁が思ったんでしょうね。『あいつら、あんなものやりやがって!』って」

 しかも、『トラック野郎』と同時期に主演した『キンキンのルンペン大将』(76年)なんだから、もはやタイトルの時点でアウト。

「これもしょうもない映画で(笑)。2本、3本と続けようと思ったんだけど、やっぱりマズいだろうってことになって。だいたい、ルンペンこそが世の中で一番楽しいっていうルンペン奨励映画なんだよ、これ。俺は直接聞いたことないけど、『なんで愛川欽也の持ってくる企画はこう反権力なんだ』ってなったんだろうね(笑)」

 ちなみに、自分みたいに反権力的なポジションの司会者が久米宏ぐらいしかいなくなったことを嘆いていたキンキンが評価していたのは爆笑問題の太田光でした。

「僕は爆笑問題っていう連中をよく知らないけども、僕が爆笑問題ってヤツの番組に出たときに、彼らが『欽也さん、僕らは司会業やってて、なにを一番大事にしたらいいんですか?』って聞くんだよ。だから、『じゃあ日本もひっくるめて、世界中を見渡してみて、本当に理想の国ってあるかい? テレビやラジオでものをしゃべる人間は、いつもどんな時代が来ようとも、ユートピアが生まれない限り、野党じゃなきゃダメなんだ。野党が今度政権取ったら、また野党になれ」って言ったら、太田君が『わかりやすいですねぇ......わかりました、愛川先輩、それ考えます』って。俺、いい青年だなって思ってね」

 キンキンのこの考え方はボクも好きで、野党が政権与党を目指す必要はないし、プロレス~格闘技界では野党的なポジションだった『紙のプロレス』がPRIDEバブルで与党になった頃からおかしくなったことでそのことを痛感させられました。

Written by 吉田豪

Photo by トラック野郎 御意見無用

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