首相官邸ドローン墜落事件の深層...3年前に予期されていた「放射能テロ」
TABLO / 2015年4月24日 18時0分
首相官邸に墜落したドローンから放射能が検出されたと大騒ぎになっている。当初は事故の線も考えられていたが、放射能マークの付いたドローンが搭載していたペットボトルから本当に放射線が検出された事で、この事件は政府の原発対策などに反対するテロであるとほぼ断定された格好だ。
ここで問題となるのが、犯人はどこで放射性物質を入手したのかという点で、今回検出された放射線は福島原発と同じセシウム由来であると結論づけられている。したがって、福島原発の事故により汚染された土や泥などをペットボトルに入れて飛ばしたのではないかと言われているのだが、単に汚泥を詰めただけでは今回のような数値にはならない。仮に本当に福島原発から飛び散ったセシウムを利用したならば、何らかの方法で "抽出・濃縮" が行われているはずだ。
●3年前に福島県の除染業者が「放射能テロ」の可能性を指摘
実はこの "抽出・濃縮" という点について、今から3年も前に「テロに使われる可能性も考えないといけない」と指摘していた専門家がいる。今からちょうど3年前に、私の所属する勉強会が被災地支援活動の中で知り合った福島県の除染業者を講師にお迎えし、福島県内での除染作業の状況や、放射能測定・除染の最新技術を教えていただいた。
※参考記事 当時のレポート
福島県での除染活動および放射能問題について(涼風会第34回勉強会)前編
福島県での除染活動および放射能問題について(涼風会第34回勉強会)後編
余談になるが、なぜEARTHSHIELDの持つ技術が世界でもトップレベルと言い切れるかというと答えは簡単だ。 人類の歴史の中で、福島原発の事故と同規模の深刻な放射能事故が起きた例は、強いて言えばチェルノブイリ程度しかない。さらに政府の対応の遅れやつまらない隠蔽のせいで、民間企業レベルでどうにかしなければならなくなった例となると、そんなバカな話は他に見当たらない。EARTHSHIELDを含め、除染活動を続けている企業は先人の知恵もへったくれもない状況下で戦って来たのだから、経験・知識の蓄積と、それによって編み出された技術レベルの高さは世界一と断言していい。 しかも、彼らは金儲けの為ではなく「自分や家族や仲間達が健康に暮らせるように」といった動機で、国が何もしてくれないから、自分達で死に物狂いになって放射能測定や除染活動をして来たのである。
本題に戻るが、この2年前の勉強会で講師の平山氏はこう述べている。
「これは今後の課題になると思うんですけれども、産業廃棄物にはトレーサビリティ(追跡可能性)が求められます。二次被害三次被害を無くすために大事なのは、「ここから取って来た放射性物質をどこに持って行ったのか?」がはっきり解るようにしておく事です。我々が考えているのは、道路も10平方メートルごとにナンバリングをし、そこから集めた物を全てタンクの中に入れます。それをタンクから出して圧縮してバケツ等に入れて保管するんですが、移動した放射性物質が今どこにあるかがすぐ解るように管理します。今ならばバーコード等を使えばすぐ出来ますから、そういったところまで考慮して取り組んで行かねばならないだろうと考えています。」
なぜトレーサビリティが必要かと言うと、まず頭に浮かぶのは「二次的な汚染を防ぐため」といったところだろう。 しかし平山氏は3年前の段階でこう指摘していた。
「そんな酔狂な人は日本人にはあまりいないと思いますが、仮置き場にある廃棄物は、全て放射性物質を含んでいます。なので、これらをさらに精製すると、セシウム134・137等が入っている純度の高い放射性物資になります。これが何に使えるかというと、いわゆるテロに使えるのです。例えば誰か弱らせたり殺したりしたい人がいた場合に、相手の玄関先にでも強烈な放射線が出る物を置いておけば、1年後には間違いなくガンになっているでしょうから、何の証拠も残さずテロができると。また他にも『こういう物を持っていますよ、浄水場に投げ込みますよ』と言うだけでテロや脅迫ができます。この『不法投棄される』『不法に持ち去られる』という2つの問題から考えても、『ここから取って来た放射性物質がどこにあって、それをどこで始末したか?』というトレーサビリティが出来てないと、これまでの産廃業界にあった不法投棄の問題とは全然違った問題や事故が起きるのではないかと、非常に危惧しているところです。」
●汚染された物質を燃やすだけで純度の高い放射性物質になる?
平山氏が危惧していた「放射性廃棄物を精製すれば、純度の高い放射性物質が抽出でき、それをテロに使える」という点について、ではどれだけ純度の高い精製が可能なのかというと、これが非常に恐ろしい結論になる。
「焼却灰というのは当然焼却炉から出て来るのですが、燃やす物に放射性物質が含まれていると、燃やされる前は体積が大きいのでそれほどのベクレル数はないのですが、燃やすと体積が100~200分の1の灰になり、凝縮された放射性廃棄物になってしまいます。コンパクトになって減量が出来るのはいいのですが、結果的に放射線量は膨大に上がります。」
なんと通常のごみ処理のように汚染された物質を燃やすだけで、純度の高い放射性物質になってしまうのだ。 さらに、この勉強会を開いた段階でEARTHSHIELDは汚染された焼却灰に含まれる放射性物質を、1日で92%ほど低減させる技術を編み出していた。 さらに10日ほどかければ "ほぼ0%" にする事も可能だという。 という事は、ほぼ汚染されていない焼却灰と、ほぼ100%に近い純度の放射性物質とに分けられるという事である。これが3年前の時点での最先端技術だったので、今ではさらに進歩していると考えるべきだろう。
そうした技術によって生み出された高純度の放射性物質が間違って世に出回れば、果たしてどうなるだろうか。 政府が意味の解らない隠蔽を繰り返したお陰で、人目につかない場所で「放射能テロやり放題」 な土壌が生まれていたのである。この件については、見て見ぬふりをすれば事態が良化する訳ではない。放射能汚染された汚泥や焼却灰の問題は、国民に広く伝え注意喚起し、また国家が責任を以って徹底管理すべき事案であろう。
これは最悪の予測になるが、例えば豊富な資金力を持つ暴力団などが、ハナからテロ(恐喝)や売買目的で放射性物質の濃縮技術を手にしたらどうなるだろうか。高純度のセシウムの結晶など、試薬として出回っている固定線源の価格を元に考えたら覚醒剤のような高値で取り引きされ兼ねない代物だ。それを元にすれば力のない国家であっても恫喝外交が可能になるのだから、世界中に放射能テロの種を撒く結果にもなる。 先にも述べたが、今回取り上げたEARTHSHIELDは、元々ビルの外壁の測定を仕事にしていた企業であり、最初から放射能の専門家だった訳ではない。生きるために仕方なく知識と技術を身に付けて行っただけである。であるならば、邪心を抱えた人間が同等の技術を編み出さないと誰が保証できようか。
アウトローな連中であれば、ホームレスにいくばくかの金を握らせて、山奥の小屋で精製作業をさせるくらいの無茶をすぐに思い付くはずだ。なんせ政府がまともな情報を発しないのだから、測定器を持って歩き回れば放射能汚染された土など取り放題であるし、汚染されたゴミの管理も裏に潜む危険と比較したら緩すぎる有り様である。 ネットにも放射性廃棄物の仮置き場の写真がいくつも出回っているが、袋に入れられて野ざらしにされており、周囲には防壁も何もない。 これでは夜中にトラックで乗り付けて何袋か盗んで来るくらい簡単だし、もしかすると表面化していないだけで、すでにそうした事件が起きているかもしれない。
●すべての日本人がテロ被害に遭う可能性を最優先して考えるべき
今回のテロは、最前線で放射能問題と戦っていた人間があちこちで声を挙げていたにもかかわらず、民主~自民と政権が変わっても、実に呑気な臭いものに蓋の対策しか講じてこなかったツケとも言える。しかし、この一件は「ざまあみろ」では済ませられない。 民主も自民も政府がどうしようもない点はさておき、我々すべての日本人がテロ被害に遭う可能性を最優先して考えるべきであろう。今やるべきは、より深刻な被害が出る前に、放射性廃棄物の厳重な管理システムを作る事だけであり、その為には放射性廃棄物の盗難といった犯罪に対する厳罰化も必須だ。
日本には被災地を中心に、何年も前からEARTHのように優れた技術を持った民間企業がいくつもあったのに、政府は後始末をゼネコン任せにしてしまい、そうした末端の企業に全然お金が落ちず、より効果的な活動をしたくても出来ないという酷い状況を生み出した。しかも、そのような背景があった事はまともに報道されず、国民には知らされていない。 こんな腐り切った "日本のやり方" がいかに大間違いか、このままではより本格的な放射能テロという形で、嫌でも思い知らされる日が来てしまうかもしれない。
Written by 荒井禎雄
Photo by 官邸に墜落した機種といわれる「Phantom 2」
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