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安倍政権が持つ「嫌な雰囲気」の正体|岡留安則コラム

TABLO / 2015年5月11日 17時0分

安倍政権が持つ「嫌な雰囲気」の正体|岡留安則コラム

 最近の安倍総理をニュースで見るたびに嫌な気分になる。ついでにいえば、安倍総理を番頭として支える菅義偉官房長官もである。二人を青年将校と呼ぶのは不適格かもしれないが、先の大戦に向けて日本帝国主義が戦争と海外侵略に向けてイキイケドンドンで前のめりになっている状況と重なって見える。

 二人とも、頑固で冷徹で、国民に対する思いがよく見えない。官僚の悪しき側面も併せ持つタイプであることは確かだが、目指す先は国民の安全や幸せではなく、国家の体裁とメンツに集約される。しかも、何が何でも米国頼みという歴史的な依存心はいささかも揺るがない。これが、敗戦国日本のトラウマからくるものならばまだしも、あれから70年たった世界情勢に関する分析としては盲目状態だ。

●盛り上がらない統一地方選、民主主義の根本が崩れかけない危機的な状況へ

 すでに、米国が世界の国々をリード、支配する時代ではない。最近の事例で言えば、中国が持ちかけたアジアインフラ銀行にしても、当初の予測に反して57か国の参加が集まり、米国一辺倒の日本は世界の流れから零れ落ちる可能性もでてきた。米国は中国主導の国際金融システムに対抗することが、国策としてベストと判断しているのだろうが、国際的に言えば、米国の一元支配はすでにあちこちで行き詰まりをみせている。イスラム国やウクライナしかりだ。

 とはいえ、安倍政権の至上命題だった集団的自衛権行使に向けた安保法制も公明党幹部や高村副総裁らによる与党協議でほぼ合意を見ている。唯一の歯止めと思われた自衛隊派兵における事前の国会決議も建前としては認識されたものの、自民党側の要求により、あいまいな結論となった。公明党の顔を立てつつ、実をとった自民党の圧勝という図式である。

 統一地方選も後半戦に入ったが、盛り上がりに欠けること甚だしい。無投票当選の地方も少なくない。地方の人口減少や過疎化という事情もあるのだろうが、民主主義の根本が崩れかけない危機状況だ。もっと、問題なのは、スキャンダル議員を抱える安倍政権の支持率が落ちないことだ。いまでも45%ほどの支持率を保持する安倍政権には大きな疑問がある。これまでの自民党政権ならば、崩壊していたはずである。それが、ある程度の数字で収まっているのは、安倍―菅体制によるメディア介入が功を奏しているという事ではないのか。

 最初に話題になったのが、NHKの籾井勝人会長だった。歴代のNHK会長と比べても、知的レベル品性も劣る人物だった。安倍総理の推薦だから、この程度の人物だったのだろう。しかし、NHK会長となれば、世界に向けた日本の顔でもある。放送現場への介入が危惧されるところだが、今のところそうした事例は公然化していないが、こうした人物がトップに就くことで、放送現場が委縮したり、自主規制してしまう可能性は否定できないだろう。NHK「ニュースウォッチ9」の大越健介キャスターも今春で降板となった。大越氏は原発再稼働に批判的な発言があったとされる。更に、官邸はテレビ朝日の「ニュースステーション」のコメンテーター・古賀茂明元通産官僚も官邸からバッシングを受けた結果、番組のコメンテーターを下された。古賀氏が番組内で圧力の構図を暴露したために、キャスターの古館一郎氏と言い合いになり、テレビ局の舞台裏の一端が明るみに出た。政府はNHKの「クローズアップ現代」のトラブルにも介入して、テレビ朝日とNHKを事情聴収するという行為にまで及んだ。明らかな、政府による言論機関への介入である。

 個別メディアだけでなく、「中立公正な報道を望む」という申し入れを各メディアにも申し入れている。こんな政権は今まで見たことがない。戦争の出来る国づくりを政権の命題とする安倍政権の焦りと傲慢さの産物でもあるのだろう。

 報道に問題があれば、正式な抗議でも、名誉棄損ででも訴えればいい。放送法や電波許認可権を振りかざしてメディアに圧力を加える手法は、独裁国家の手口である。こうした政府の介入が日常化しているために、メディアの批判力が衰退しているのではないか。

 その安倍政権が陣取る官邸の屋上にドローンが墜落するという事件があった。無人機には100グラム程度の放射性のセシウムが装着されていた。その後、犯人が名乗り出たことで、福島原発事故によって排出された物質であることが判明した。犯人は原発再稼働への反対のメッセージを込めていた。政府は大あわてで、ドローン飛行の規制策をうちだしたが、これがイスラム国のテロだったら、官邸は非常事態である。どこか間抜けな安倍―菅体制もアベノミクスの陰りで失速する可能性もでてきた。今こそ、メディアの逆襲が期待されるところだ。最後に船戸与一氏の逝去に黙とうしておきたい。

Written by 岡留安則

Photo by Kevin Dinkel

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