『新型コロナ騒動』と『オウム・サリン事件の相似点』 ワイドショー常連のコメンテーターが今日も分からない専門用語で語る|中川淳一郎
TABLO / 2020年3月17日 10時56分
サリン事件と似ている今回の騒動。
新型コロナ騒動で世の中が不安に包まれているが、東日本大震災の時と同様の空気を感じる。
当時は東北と関東の人々が「終末感」を覚えたことだろう。関西に当時行ったら「そんなに大変だったの? 私ら何にも変わってない」と言われ、ホッとした。あぁ、オレらは第二の強力なエンジンを持っていたのだ、日本はまだ大丈夫だ、と。
東日本大震災も平成だったが、平成7年(1995年)といえば、1月17日に阪神淡路大震災があり、3月17日にオウムによる地下鉄サリン事件があった。この時の雰囲気と今が非常に似ているのだ。
今、感染症の専門家として、白鴎大学の岡田晴恵氏が連日のようにテレビに出ているが、当時もオウムの専門家が多数出演していた。実はこの時の「専門家」の登場が現在のワイドショーの「型」を作ったのでは、という気がしている。世間の関心があるジャンルに詳しく、喋りも上手でテレビ局の無茶ぶりにも応えられる人材が重宝されるようになったのだ。
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オウムの専門家として頻繁に登場したのは江川紹子氏(ジャーナリスト)、有田芳生氏(ジャーナリスト)、島田裕巳氏(宗教学者)、紀藤正樹氏(弁護士)、伊藤芳朗氏(弁護士)、滝本太郎氏(弁護士)の6氏だと記憶している。
「いつものメンバー」が朝のワイドショーに登場し、その意見を聞く。そして翌日も「また○○さんが出てるね」なんてことを家族で言い合っていたのだ。
オウムについては、「拉致」「VXガス」「ポア」「水中クンバカ」「尊師の入った風呂の湯」「ヘッドギア」「サティアン」「ホーリーネーム」「オウムシスターズ」などあまりにも過激過ぎるネタが多く、当時の日本はこの件で熱狂していた。
当時大学3年生だった私もワイドショーでオウム関連の話題を見るのが日課となっていた。当時、大学の一限は8時45分に開始していたが、自宅で8時30分までワイドショーを見て、自転車に乗って12分ほどで大学に着いていた。
火曜日の1限は「ベトナム経済」という講義だったのだが、この講義を取っているのは12人ほど。唯一同じ3年生のAさんという女性とは毎回オウムの話をしていた。彼女も大学近くにアパートを借りていたため、ギリギリまでワイドショーを見ていたのだという。
2人が見た番組の情報を共有するとともに「クシティガルバって誰のホーリーネームだったっけ?」などと被害者の辛い気持ちを考えずに芸能ネタ的にオウムの話題を話していた。“尊師”たる麻原彰晃が逮捕される5月までオウム報道は過熱を究め、我々も毎週オウムについて授業開始前は話し続けていた。担当教官が遅れてきたらラッキー! とばかりにオウムについて話していた。
テレビのワイドショーは連日妙な高揚感があった。何度も盛り上がるタイミングはあったが、何度もテレビに出演し、オウムの無実を訴えていた村井秀夫氏が右翼団体構成員に刺殺された時や、上祐史浩氏が番組中、フリップを放り投げてオウム批判を一蹴した時はすさまじかった。
ネットがなくともこの行動は誰もが知ることになり、「上祐ガール」が登場する事態にも。その後も「○○逮捕!」といった報道が出る度に人々は興奮した。ホーリーネームも「アーナンダー」やら「ミラレパ」などを覚えるようになった。
関連記事:200人を超える報道陣の前でオウム真理教幹部・村井秀夫を刺殺した徐裕行氏をインタビュー | TABLO
今回のコロナの件にしても、「PCR検査をやれ!」「いや、PCR検査は医療崩壊をもたらす!」「岡田晴恵さんが好き」「ダイヤモンド・プリンセスの隔離状況酷過ぎワロタ」「韓国のドライブスルーPCRすごい!」「頭から袋をかぶって麻雀をする中国人はアホ」「しかもその雀卓をぶっ壊す中国の警官、強い!」「イタリアのウイルス、殺傷能力高過ぎ!」などと、日々新ネタが登場してはネット上で消費され続けている。
オウムの頃は職場や学校でこのネタを消費してはいたずらに好奇心が満たされていたが、令和になってもあまり人間は変わらないな、と思わされた。(文◎中川淳一郎 連載『俺の昭和史』)
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