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自民党議員の「女子高生の中絶は禁止すべき」発言についての考察

TABLO / 2015年6月30日 21時0分

自民党議員の「女子高生の中絶は禁止すべき」発言についての考察

 毎度毎度切れ味するどい失言を提供してくれる自民党議員だが、今度は今津寛衆院議員が特大ホームランを放った。 なんでも「女子高生の中絶はけしからん!」のだそうで、文脈から「女子高生の人工中絶を禁止すべき」とも受け取れる発言をしたのだ。

 これは民法における "成人年齢" の引き下げを議論する委員会でのもので、話の例えとして「高校生がセーラー服を着て産婦人科に入り、子供をおろすことができるというのは世間だれもが認めないだろう」と述べた事が批判の的になっている。 これは今津議員個人の考えという訳でもなく、自民党内の議論として、人工中絶を人生の重大な決断であるとし、年齢制限に下限を設けるべきではないかという声もあるという。

●人権という概念が欠落している?

 さて、色々とツッコミを入れるべき案件なのだが、現状では人工中絶の年齢制限に 「○才以上」 といった規定はない。それは当然の話で、仮に「親の了解なしに人工中絶の決断を下せるのは18才以上」 といった一文を付け加えでもすれば、望まない妊娠をしてしまった子供は人生が台無しになる可能性が高い。

 例えば、女子小学生がレイプされて妊娠した場合を考えてみよう。 世の中には数多くのロリコン・ペドフィリアが生息しているが、女児が性被害に遭うケースでは親を含めた親族が加害者である場合が特に多い。 これにより事件が表面化せず、子供は長い時間苦しみ続ける事になるのだが、果たして我が子を犯すような親が、万が一があった場合に適切な処置をするだろうか。

 ケダモノのような親ならば、学校を休ませ、病院にも行かせず、自宅出産(場合によってはそのまま赤子を殺す事も) させるといったシナリオが容易に思い浮かぶ。 また、過去の事件で女子中学生や女子高生が、父親の解らない子供をトイレ等で出産し、そのまま殺してしまうといった事件が数多くあった(その全てが親に犯されたとは言わないが)。

 何にせよ、こうした過去の事実・現実を元に考えるならば、親ではない第三者(専門家) による心のケアが必須と解るだろう。

 間違っても 「親と相談して中絶するか否か決めてこい」 などと、少女をさらに追い詰めるようなシステムにしてはならないのだ。 妊娠してしまった少女の心の不安を和らげ、背景にどのような不幸があったのか少しずつ聞き出し、場合によっては親と切り離し、自分の意志として決断をさせる。 そうした配慮が絶対に必要だというのに、今津議員はまったくもって思慮が足りなすぎる。 さすが自民党の政治家様だと言うよりない。

 どうすればこのようなトンデモ発言が出来るのか不思議でならないが、まず第一に考えられるのが "人権" という概念が欠落しているという点だろう。 また男尊女卑が根底になければ、女性から 「自分の身体をどうするか」 といった決断をする権利を奪うような考え方は不可能だ。 少女が中絶について考えなければならないという事は、孕ませた人間がいるという事でもあるのだが、そうした連中に対しての発言が何一つないところからも本音がうかがい知れる。

 他の政策や失言の類を踏まえて考えるに、どうも自民党は日本人女性が憎くて仕方ないらしい。 自民党からしてみれば、女など力のある男に依存して生き、自分一人では子供を堕ろす決断さえ出来ないような、奴隷であるべきという事なのだろう。

 さらにツッコミを続けるが、今津議員は 「高校生がセーラー服を着て産婦人科に入り、子供をおろすことができるというのは」 と言っておられるが、そもそも産婦人科にセーラー服を着て行く場面を想定している時点で狂っている。

 もし中絶の相談をする場合は、帽子にサングラスにマスクというマンガに出て来る銀行強盗のようないでたちの方がより現実に近いだろう。 少なくともセーラー服よりは。 また彼の口ぶりでは女子高生がコンビニやファストフード店に行くような感覚で気軽に中絶しに行っているように思っていると受け取れるが、どこの誰がそんなライト感覚で手軽な中絶ライフをエンジョイしているというのか。 バカも休み休み言え。 この先生様にはどれだけ現実が見えていないのかという話である。 女子高生が中絶を決断する際の心理すら理解できないのであれば、貧しさや絶望によって国民が漏らす怨嗟の声など、そりゃ気づくはずもない。

 何より恐ろしいのは、これほど世間が見えていない政治様が 「世間が許さない」 などと口走り、自分の主張・正義・価値観に世間の多くが賛同すると思い込んでいる点である。 自民党はこんな思考の政治家ばかりよく取り揃えられるものだと、もはや嘆きを通り越して感服してしまう。

Written by 荒井禎雄

Photo by Luis Marina

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