戦闘が激化するアフガニスタンで「ヘロイン」が堂々と売られていた
TABLO / 2015年7月23日 16時15分
アフガニスタンへ行ったことがある。同時多発テロのあとアメリカ軍が侵攻する前のタリバーン政権時代の1997年5月のことだ。
カンダハールという街を歩いていた。ここはタリバーンが本拠地としていた第二の都市だ。顔を出して歩いているのは、ターバンにひげもじゃの男、または子どもだけ。女性の顔は一切ない。というのもブルカという布で全身を覆うことが当時、命じられていたからだ。ロケット砲でも打ち込まれたのか廃墟となった建物があちこちにある。使われている建物にしても、どれもガラスがなく、透明のビニールが貼り付けられているという有様。戦後まもなくの焼け跡の時代、日本の大都市はこんな感じだったのだろうか。
●地べたに何か野菜のようなものを山積みにして売っているが...
そんなことを思いながら歩いていると、地べたに何か、野菜のようなものを山積みにして売っているのが目に入った。葱坊主かと思ったが、表皮は緑色で、固そうだった。触ってみると、やはり固い。何だろうこれは。その植物の表面を見ていると、ブッチャーの頭のような傷がついていることに気がついた。
70年代前半、アフガニスタンにはヒッピーたちが集まった。というのもアフガンは麻薬の一大生産地だということが一因だった。その麻薬は芥子の実の表面に傷をつけ、出てきた汁を原料にして作られる。汁がアヘンとなり、それを生成するとヘロインとなる。
出がらしのお茶ではないが、ちょっとぐらいは成分が残っていて、ひとかじりすればトリップしたりするんではないか。こんなもの売ってていいのだろうか。それとも戦乱の続く日常から逃れるために市民たちはこれを食べて開けっぴろげにトリップしたりするのだろうか。
そんなことを思っていたら、6歳ぐらいの子どもが芥子を一本買い、おもむろにかじり始めた。ぎょっとしていると、店主のおやじが、実を割って中のものを手にとって見せてくれた。
おやじの手にのっていたのは、あんパンの表面にくっついているごま状の種だった。
「食べてみろ」
半信半疑で食べてみた。しかし一向にトリップする様子はない。
世界中の多くの人たちの人生を台無しにする芥子が、この地では子どものスナックになっていることを僕は知った。
Written Photo by 西牟田靖
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