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【五輪ロゴ問題】同業デザイナーからの反論「この程度の差異は盗用ではない」

TABLO / 2015年7月31日 17時0分

【五輪ロゴ問題】同業デザイナーからの反論「この程度の差異は盗用ではない」

 2020年に開催される東京オリンピックだが、新国立競技場に続き、世間を騒がせる問題が出て来た。マスコミでも報道されている、ロゴマークの盗用問題である。佐野研二郎氏の東京オリンピックのロゴに対して、ベルギー在住のデザイナーのリエージュ劇場のロゴとが「似ている」という報道。新聞報道等では「似ている、似ていない」についての論評は避けているようだが、ネットでは「盗用だ」との意見の人が多いように見受けられる。

 筆者はデザイナーであるが、出版等の仕事が多い。ロゴのデザインは専門ではなく、個人デザイナーとしての意見であることは前置きしておくが、二つの画像を見た時「まるで違う」という感想を抱いた。似ている部分はあるが、配色が違うし、劇場のは全体を黒い丸で囲い、単色である点が佐野氏のと異なる。「TL」と読める部分の大きさも違うし、縦棒と三角形(と表現するが)の間のアキも違う。

 下の欧文は、ネットでは、「同じフォントだから、盗用だ」との指摘がある。しかし、この2つのフォント(おそらく、フォントではなくレタリングだと思われる)は違う。「T」の形を観察すれば納得できると思う。似ているが、この程度の差異で「盗用」とはならない。なるのであれば、日本語の明朝体はほとんどが「盗用」という事になってしまう。

 佐野氏のは右下の三角の必然性がないという意見もあるが、このデザインの真の主役は背後にある「白い円」だと気がつけば、その三角がなぜそこにあるか納得いただけるのでは。しかし、筆者が「まるで違う」と判断した理由は、もっと直感的なことだ。

 劇場のロゴには、文学的な気配がある。黒い円の中の図形は、演劇の中の不安定な人間の肉体のようにも見える。対して、佐野氏のロゴは、反対に「力強さ、未来、明るさ」を感じさせる。普段の仕事の中で、わかりやすい理屈でデザインを批評されることはよくある。しかし、私自身は商品を眺める人の無意識に訴えるような、「思わず手に取ってしまう」ような仕事をしたいと思っている。

 その視点でこの2つのロゴを見ると、別の気配が感じられる。この2つのロゴをモニタの中で眺めたら、類似点に目が行くかもしれない。しかし、街中でこのロゴを、別々に見たときに得られる感情は同じものだろうか? 盗用と騒ぐ人たちに、先入観を捨てて、街中でこの2つのロゴと出会って欲しいと思うのだが。

Written by 長久雅行(http://my.reset.jp/nagahisa/

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