NHKのど自慢にSMAP参戦で起きた化学反応|プチ鹿島の『余計な下世話!』
TABLO / 2015年9月1日 18時18分
数年前「NHKのど自慢」が実家近くから中継というので久しぶりに見た。「こんな風景がまだ残っていたのか」と驚いた。街ではなく番組の風景のことだ。
「のど自慢」と言えば、地元役場の女性2人組が「あみん」を熱唱するとか、花嫁募集中を高らかに宣言する明るい農家の男だとか、そいつを拍手で称える客席だとか、年齢を聞かれ「91歳」と答えて会場をどよめかす婆さんだとか、いつ見てもその風景は不変だ。静かに出てきて歌い上げる女に多いのが一青窈というのも不変。「普遍」といってもいいかもしれない。
こういう人たちってどこにいるんだろうと不思議に思う。でも「のど自慢」という善意のフィルターをかければぞろぞろ出てくるのだ。意外と私たちの近くにいるのである。そして、どんな無意識の怪物が出てきても穏便に見守るのがNHKアナだ。番組には独特の安心感が漂う。
●不変だった「のど自慢」がふつうのバラエティ番組に
そんななか、8月30日のNHKのど自慢は歴史的な日だった。「番組開始70年」でゲストにSMAPというスペシャル。神奈川県秦野市から放送時間を拡大して生放送。SMAP参戦でどんな化学反応が起きるのか。
まず最初にザワザワさせたのは「46歳会社員」が歌う「宇宙刑事ギャバン」だった。 大人になったのび太が宴会芸のときだけは弾けている感じ。独特の振り付けで会場を沸かす。熱唱後にSMAPの中居正広が笑顔で感想を言う。「友だちにいないタイプ」。ウケる会場。
ここで早くも今日がスペシャルな意味がわかった。バラエティの王様・SMAPが絡むことによって、のど自慢の出場者へのツッコミが発生したのだ。「のど自慢」がふつうのバラエティ番組になった貴重な瞬間である。
このあとも「会社同僚40代3人組のおじさん」が歌う「仮面舞踏会 」(少年隊)があった。すると今度は香取慎吾が「なんで見せないんですか、背中を」とにこやかに3人組に問う。実はおじさんたちの背中には「中年隊」と書いてあったのである。容易周到なギャグをうまく見せられなかったのだ。そこをちゃんと拾ってあげるSMAP。
しかし興味深い瞬間が訪れた。「社交ダンスで地元を盛り上げている」という紹介であらわれた真面目そうなペア。
社交ダンスをしながら歌ったのは、なんと長渕剛 の「乾杯」。クルクルまわりながら乾杯を歌うという様子のおかしさで特別賞を受賞した。ここで注目すべきは、それまで順調に機能していたSMAPの安定のバラエティ感が崩れ、出場者のナチュラルな素材の強さが圧倒したのである。会場のざわつきがおさまらなかった。本来の「のど自慢」がSMAPを凌駕した瞬間であった。
しかしSMAPはそのあと安定感を取り戻す。中居君は「らいおんハート 」で合格した人に「 その歌唱力がほしい 」とコメントしつつ、自分たちが「SHAKE」を披露したあとに「鐘が鳴らなくてよかった」と言って場内を笑わせた。で、今週のチャンピオンを中居君が発表したのである。のど自慢のチャンピオンの発表を、中居君がしたのである。
見応えがあった「のど自慢とSMAP」でした。
Written by プチ鹿島
Photo by NHKのど自慢ホームページより
プチ鹿島●時事芸人。オフィス北野所属。◆TBSラジオ「東京ポッド許可局」◆TBSラジオ「荒川強啓ディ・キャッチ!」◆YBSラジオ「はみだし しゃべくりラジオキックス」◆NHKラジオ第一「午後のまりやーじゅ」◆書籍「うそ社説 2~時事芸人~」◆WEB本の雑誌メルマガ ◆連載コラム「宝島」「東スポWeb」「KAMINOGE」「映画野郎」「CIRCUS MAX 」
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