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【AV出演拒否】AV業界を食い物にする新アウトロー"海外配信系"の正体

TABLO / 2015年9月30日 18時0分

【AV出演拒否】AV業界を食い物にする新アウトロー"海外配信系"の正体

 先月アップした『AV業界で人身取り引きが行われている』といった告発に対する反論記事に関して、その後の情報が明らかとなった。

◇参考記事

AVや風俗業界で人身売買はあるのか?告発系記事への反論【後編】

 上の記事中で触れている 「望まないAV出演をさせられ、出演を拒否したらプロダクションに多額の違約金を求める裁判を起こされた」 という一件だが、東京地裁がプロダクション側の訴えを退ける判決を下した。 当然の事ながら、プロダクションと女性との間で交わした契約は無効で、本人に出演の意思がない以上は、契約を解除できると判断されたようだ。

 今現在のAV業界の内情を知る人間として、こうした事実を突き付けられても、なお上の記事に書いた疑問はそのまま残っている。 やはりこの一件は "AV業界" という単語で括るのは非常に危なく、無理に "AV業界" と言い続けると、真犯人を取り逃す事になってしまう事がハッキリしたのだ。

● AV業界を喰い物にする新勢力の出現

 業界の外の方にはクソミソ一緒にされても仕方ないとは思うが、既存のAV業界は明らかに落ち目になっており、いまさらや無茶をヤラかしてリスクを背負う余裕が無い。したがって、最低限のルールやマナーは暗黙の了解として守られているのだが、それをハナから問題としない連中があちこちで騒動を巻き起こし始めている。これは上の記事を書いた後の調べて発覚した事なのだが、これまで業界内で見たことのない明らかにアウトローな連中が、プロダクションやメーカーと揉めるケースが続発しているのだ。

 例えば、プロダクションに通常のAV撮影だと言って女優を出させ、撮影が終わってみたら「海外配信系の無修正でした」と発覚したという一件がある。これなどプロダクションを騙し討ちした訳だから、今までであれば水面下でアレやコレが起きて何らかの形でお仕置きされて手打ちという展開になっただろう。ところが、そのケースではプロダクションがコワモテに逆ギレされて追い込まれるまさかの展開になってしまったのだ。最終的には落とし所が見付かったようだが、これは既存のAV業界が新興勢力に狙われた典型的な例だろう。他にも、苦情を伝えたプロダクションの人間がいきなり暴行を受けるとか、さらわれるだとか、今まででは考えられないキナ臭い話が聞こえてきている。

 AV業界の内情を少しでも知っている方ならば "プロダクションが狙われる"という事態の異常さをご理解いただけると思う。AV業界において、プロダクションとは怒らせたら何が出て来るか解らない最も怖い存在である。これはAVに限らず芸能界でも似たようなものだろう。しかし、そのプロダクションに対して平気で仕掛ける輩が増えているというのは、非常に危険な兆候だと言える。

 何故ならば、後の報復も恐れずに平気でプロダクションに仕掛けられるという事は、仕掛ける側の連中も "戦争覚悟の本職"か、もしくは"攻めて平気な場所を裏も表も熟知している裏稼業"という前提あっての事だからだ。

● 海外配信系のエロがルール無用の狩場になっている

 参考記事にも書いたが、こうした理解不能な騒動を巻き起こしている連中は、私が調べた限りでは全て海外配信系のサイトで荒稼ぎしている連中だった。久田編集長の媒体なのでハッキリ書いてしまうが、それが新しい暴力団のシノギになっていると見てもいいだろう。参考記事では「不良系かも」と書いたが、調べた限りではそうではなかった。

 例えば、今やエロ業界の某不良系など、準暴力団指定されて締め付けが厳しくなった事と、完全に業界に根をおろしてしまっている事とで無茶ができず、業界内ではむしろ"優良"と看做されているほどで、ヤケっぱちな騒動を起こすとは考えづらい。やっているのはこれまでのAV業界とは関わりが薄かった、もしくは無かった、モノホン達と見るべきなのだ。

 だが、いざ新興のヤクザ者が海外配信系のエロで稼ごうと思っても、裸仕事をしてくれる女性はすぐには手に入らない。中には無茶なやり方で女性をさらって来て裸にひん剥く連中もいるだろうが、それでもシノギに必要なコンテンツ量を考えたら絶対数が足りない。ではどうするかと言えば、多少の面倒事は覚悟の上で、脱げる女を抱えた既存のAVプロダクションに仕掛けるのだ。こう考えると例の弁護士達が主張する「人身取り引きが~」という話も、私が実際にAV業界で見聞きした話も、すべて辻褄が合う。

 しかし、この問題について新たな法規制を施そうにも、手順や目標設定を間違えると目も当てられない悲惨な状況に陥ってしまうだろう。

●注視すべきは"AV業界"ではなく、無法地帯の "海外配信"

 この問題について考える際に、まず認識すべきは「AV業界という単語で考えるべきではない」という点である。何故ならば、悪事を働いている主だった連中はAV業界の中にいるとは言い切れないからだ。それなのに"AV業界をさらに規制する法律"を整えてみたところで、犯人を捕まえる事も、被害者を減らす事も出来やしない。 事件の現場はそこではない。

 とはいえ、AV業界人の中に小遣い欲しさに手伝っている連中がいる可能性は否定できないし、むしろいると思うべきなのだが、それでもAV業界全体として語ってしまっては目を向ける場所が違いすぎる。いま早急に手を打たねばならないのは、法の整備が間に合っておらず、警察も手をこまねいている、海外配信に特化したエロ屋(プロダクション・制作会社・広告代理店など業態は様々)であり、彼らに対しても既存の法律で雁字搦めになっているAV業界と同等の安全弁(=法の縛りや監視)を義務付ける事である。すぐにそこまで辿り着けずとも、そのようなグループの構成図や金の流れを正確に把握し、いざという時に口座を押さえられるようにするといった処置だけは急務だろう。

 実は、海外配信の素人系のエロ動画というのは、何年か前から食える商材だと一部で注目されていた。しかしそれにも旬があり、何らかの新法や改正法が成立するまでの期間限定の商売と見られている。中には今年~来年で全盛期は終わるだろうと予測する人間もおり、言ってみれば今が最後の駆け込みチャンスなのだ。だからこそ多少の無茶は承知の上で、金欲しさに暴れる連中が急増したのだと思われる。

 ところが、こうした背景があるのに「AV業界を!」とやってしまうと、真っ先に縛り付けられるのは国内で法律を守ってセコセコやっているメーカー達である。具体名を出すならば、DMM(CA)やSODといった大手グループなどだが、AV業界への法規制となれば、仕事の容易さや目立ち具合から、彼らが酷い目に遭わされて後はグダグダという展開が安易に予想できてしまう。ただでさえいくつも倫理団体があって、警察OBなども受け入れている "AV業界" を更に規制したところで、海外配信系のエロ屋達に何か影響を及ぼせるはずもない。

 むしろ通常のAVが今以上に弱まる事で、病巣である配信サイトに客が流れて活気付くだけだ。よって、迂闊に"AV業界"という単語を使わず、面倒くさくても "海外配信業者" などと呼び方を考えるべきではなかろうか。

 こうした問題点は、児童ポルノ問題において「何でもかんでも都合よく児ポという単語を使っていると、守るべき子供達が守れなくなる」という、過去何度も東京BNで書いてきた話と全く同じなのだ。人に強烈なイメージを植え付ける簡単・便利な言葉は、このような危険と隣り合わせになっていると認識して欲しい。イメージが強烈過ぎるが故に、それに引きずられ、現実に何が起きているかの判断が曇ってしまうのだ。

●AV業界はむしろ味方に付けて監視に協力させるべき

 さて、これも業界外の方には中々理解されない事なのかもしれないが、国内のAVメーカーにとって、海外配信系のエロ屋は不倶戴天の敵である。違法アップロードのせいでAVの売り上げが激減し、業界全体が沈没寸前に追い込まれている話は冒頭の参考記事の中にも書いた通りだ。

 にもかかわらず「AV業界が人身取り引きを!」と言ってしまっては、敵を間違えている上に味方を減らすという意味不明の話になり兼ねない。女性問題を扱う方にとっては嫌悪感を感じるであろう事は重々承知しているが、既存のAV業界は敵に回すのではなく、むしろ共通の敵を持つ味方として協力を求めるべきである。

 AV業界からしても、ただでさえ落ち目のこの時代に、女性を騙したり脅したりで問題を起こす連中は、業界全体を危機に陥れる敵であり、大きな事件を起こす前に排除せねばならない対象だ。本来ならば、外からつつかれる前に自浄作用を見せねばならない案件だったはずである。だからこそ、今回のような騒動が起き、それが全国ニュースで報じられるまでになったとなれば、嫌でも協力せざるを得ない。弁護士という立場では、アンダーグラウンドな裸商売の業界は訳が解らないだろうし、ぜひ『蛇の道は蛇』という言葉を思い出していただきたい。AV業界人であれば、法律も人権も度外視して暴れる見知らぬ連中が現れたら、即座にアチコチに通達が回って尻尾を捕まえられるのだから、便利な監視要員として有効活用すべきだ。そちらの方が、被害者の救済という目的を考えてもだいぶ近道が出来るはずである。

 最後に、こうまでAV業界の肩を持っておいて何だが、今回の一件は大手プロダクションや大規模なグループ企業といった一部の勝ち組が、自分達の儲け至上主義に陥るあまり、メーカー・プロダクション・ショップ・AV嬢......といった業界に関わるすべての人間に対する安全管理や保障を怠ったツケとも言える。衰えたとはいえ、未だにそれ相応の金が動く業界ではあるのだから、ごく一部が醜くガメるのではなく、業界をより良い環境にするために還元すべきだったように思う。そうしたやるべき努力を無視し続けて来たから、こうしたトラブルが起きても何も手を打てず、外から好き放題にヤラれるのだ。

 今回の騒動の主はAV業界に含むべきではないと言ってはみたものの、AV業界の自業自得という面も見落としてはならない。一昔前に裸商売と同等のヨゴレと看做されていたパチンコ業界やゲーム業界が、ある時点からクリーン化を推し進めて今に至っているという歴史を思い出すべきである。「裸商売なんだからこれくらい良いだろう」という業界の甘えが、そもそもの病巣なのかもしれない。

Written by 荒井禎雄

Photo by Thomas Leuthard

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