【ラグビー日本代表】途中退場の山田章仁選手に見る「低いタックルの意味」
TABLO / 2015年10月4日 17時20分
![【ラグビー日本代表】途中退場の山田章仁選手に見る「低いタックルの意味」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/knuckles/knuckles_2078_0-small.jpg)
サモア代表に対しては、とにかくボールを持たせて5m以上走らせない事。天性のものであろうハンドリング技術と、ステップワークには世界のトップチームが翻弄されてきた。日本代表とて同じである。それをこの試合では、日本代表の特徴である「殺すつもりでいく低いタックル」で潰す事に成功。ランキングが上のサモアだけに、もしかしたら日本は負けるのではないかと、危惧していたが持前の精神力でサモアの猛攻を抑えたのは特筆すべき。
※因みにラグビーのルールをご存じない方は、よく観戦ハードルが高いと言われるが人と人のぶつかりあいを単純に堪能し、「ボールを前に落としてはいけない。前に投げてはいけない」という最も分かりやすい反則だけ頭に入れて観てはいかがだろうか。
●山田選手が見せた前半最後のトライは"ウィング"の見せ場
前回のスコットランド戦では、激闘の南アフリカ戦から中三日しか置かないで臨んだ為、恐らく疲労が残っていたに違いないと思われる。が、今回は休みを取り、またスターティングメンバーも変え、疲労にも対応。
この試合を録画でご覧の方がいらしたら、まず右ウィングの山田選手の前半最後のトライに注目してはいかがだろう。山田選手は前半でもボールを持って、突破を図ったシーンがあったが、「腰が強く中々倒れないな」という印象を抱いた。そして、トライシーン。流れの中で一対一(正確には横から相手が追い付いてきた)になる。この場面こそ、ウィングの見せ場である。
よく一対一になった時、「勝負!」とか「勝負しろ!」と試合中でも選手が声をかける時があるのだが、ウィング対ウィング、ウィング対フルバックという「一対一」の場面ではステップを踏んで外を抜くのが一番「美しい」とされている。「勝負」はラグビーの醍醐味の一つだ。山田選手も勝負した。タックルを振り切ったのは持前の「粘り腰」だった。そこからダイビングしてのトライは「トライゲッター」のウィングらしいトライだった。
今回の日本代表選手の特徴として、タックルした後、すぐ立ち上がり寝ている選手がほとんどいないというタフネスさが挙げられるが、山田選手も後半、タックルした後またタックルにいった。その際、相手の膝がテンプルにあたったのか、失神状態のまま退場してしまった。僕も三、四回、試合中に脳震盪の経験があるのだが膝というより、タックルする際、相手の太腿が自分の頭にぶつかった場合に脳震盪を起こす場合が多い。
人間の裸拳よりも少し弾力があった、ボクシングのグローブで殴った方が失神しやすい原理と似ている。日本代表の特徴である「低いタックル」を仕掛ける際、どうしても相手の膝が顔の位置に来てしまう。あるいは相手のサモア選手の固くて面積が広い太腿に頭が当たって脳が揺れてしまう。結果、脳震盪を起こす。だから「低いタックル」は「殺すつもりでいく」ぐらいの勇気が必要なのだ。山田選手の失神退場は今回の日本代表のタックルを象徴するようなシーンだった。山田選手の一日も早い回復を祈ってやまない。
日本代表の前にオールブラックスの試合があったが、主将で世界一のフランカーのリッチー・マコウがあまり目立ちはしないが、相変わらず真っ先にボールに行く勇敢なプレイを見せていたが日本代表のフランカー、リーチマイケルも負けていない。猟犬のようにボールに向かっていく、「ボールハンター」の役割を十分に果たしていた。彼の存在は大きい。突破役やポイントを作る為に突進していくペネトレーターとしてはフッカーの堀江選手が目立っていた。フッカーとは思えないステップとスピードは凄いの一言。また、山田選手の反対側の左ウィングの松島選手もタックル一発では倒れず、勝利に貢献した(と、いうか出場選手全員が貢献しているのだが、初心者の方に画面上、目立った選手を挙げています)。
後半に出場した、次の試合でもキーマンとなるであろう、レレィ・マフィ選手(前回のスコットランド戦で途中退場)が、復活したのは安心した。さほど時間がない中での登場だったがそれでも随所にセンスのあるプレイ、突破を見せていた。
スターティングメンバーで同ポジションNo.8のホラニ選手のタックルも良かった。ボールを持って突進し、ポイントを作る、あるいは相手を突破するペネトレーターの役割をロックのトンプソン選手と共にこなしていた。マン・オブ・ザ・マッチの五郎丸選手のキックは神ががっていたほどだ。日本ラグビー史上、これほどのキッカーがいただろうか。
全体的に言えるのが、前半・後半通して、低空タックルを徹底させる集中力・精神力が今回の日本代表の特徴ではないだろうか。これらは、当然、総司令官であるエディ・ジョーンズヘッドコーチの存在が大きい。ヘッドコーチによってこれほどラグビーが変わるのかと、改めて今回の日本代表を驚きながら観ている。逆にエディ・ジョーンズがヘッドコーチを止めた後を少し危惧するのである。勿論、杞憂である事を信じているが。次の試合に勝利しても条件次第では、決勝に進めなくなる可能性が高くなってしまっている。が、日本代表の今回の試合での精神力は想像を超えている。必ず、良い結果を出すだろう。
Written by 久田将義(東京ブレイキングニュース編集長)
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