山口組分裂、清原容疑者逮捕で注目される西成・あいりん地区の現在
TABLO / 2016年3月1日 11時5分
清原和博容疑者が逮捕されて、野球界は元より芸能界も含めて各方面に激震が走った。その中には覚せい剤の売買の最前線である大阪の西成も含まれている。橋下元大阪市長の掛け声で始まった「西成浄化作戦」の中には覚せい剤は当然、泥棒市等様々な違法な商いが含まれていた。何が変わって何が変わっていないのか。そんな"清原逮捕後"の西成のあいりん地区を覗いてみた。
■泥棒市、覚せい剤の売人、すべてがスケールダウン?
まずは泥棒市であるが、頻繁に場所を変えて行われる形態は変わっていた。買えないモノは無いと豪語されていた西成の泥棒市は当然注文販売もあった。例えばモルヒネが欲しいと言えば数日後には調達されるし、拳銃が欲しいと言えば場所を変えて入手できたのだ。
今では事情は変わったが、泥棒市は前と同じ場所で朝方1~2時間と言う短い時間に行われている。だが以前と比べて規模は小さい。最盛期には300店舗程があったのだが、今ではスケールも小さくなり、ブルーシートを四つ折りに以下にして、いつでも逃げ出せる状態だった。需要のある湿布薬等の薬品はあるが、睡眠薬、向精神薬は注文販売に変わっている。
一昔前は薬局通りと言われる路地もあったが、今では10店舗ほどが残るのみ。扱われている品物は先に上げた薬品のほか偽ブランド、賞味期限切れの弁当である。逆輸入のタバコ、違法DVDは見当たらなかった。一方、賭博場は常に行われている常盆、決まった日に行われる約盆、関係者の引退の際に行われる花会などが行われていたが、今は一切ない。公営ギャンブルの私設売り場であったノミ屋も今ではほぼ全滅していた。
三角公園周辺で常にシキテンと呼ばれる見張りが立っていた地域も全滅である。今では喫茶店のほんの一角で小さく数人で行われる小さなノミ屋しか存在しないのが現状だ。これでは動く資金も少なく暴力団の資金源にはならないであろう。
暴力団事情も探ってみた。貧困ビジネスのモデルケースでもあるあいりん地区は様々な利権を狙って多くの組織が乱立していた。大きい抗争事件も過去には勃発している。
その中でいくつかの大きい事務所の前で張り込みしたが、人の気配が全く見られない事務所もあり、玄関口に水が巻かれて清掃はされてはいるものの、誰かが見張りをしている等の動きは見られなかった。 今の時代、防犯カメラがあれば事足りる、と思うかもしれないが、それでは意味が無い。暴力団事務所の前に人が立つということは、すぐに動けるという姿勢のアピールであり、周囲への威圧行為もあるのだ。
そして最後に冒頭で触れた覚せい剤事情に触れておきたい。以前は四六時中、"売り子"と称する売人が路上に立ち、ドライブスルー形式で客が車から降りずに購入する光景が見られた。その評判は関西だけではなく、遠方からも常連客が訪れていたが、今では絶滅状態にあるようだ。
山口組分裂騒動で、複数の事務所が密集する地域だけに、当局が厳しく警戒していることもあるだろう。今では売人は路上には立っていなかった。取材協力者を通じて数人の売人に連絡を入れて取材を試みたが、電話は殆ど繋がらなかった。
長くこの地域に居住する信用ある人間にもそのような対応である。初見の人間ではまず彼らに接触するのは難しいであろう。今年に入ってから何回も売人が検挙されているとも聞いた。売人が定宿にしていたドヤも検挙されて以来、動きはない。報道はされないが、通報、検挙、逮捕はこの地域では日常の世界である。
西成浄化作戦は山口組分裂騒動との相乗効果で一段と進んでいる印象だった。清原容疑者の逮捕の影響も少なからずあるだろう。西成の姿は今後もリポートしていきたい。
Written by 西郷正興
Photo by K-SAKI(コラージュ)
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