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悪ふざけの"恒心教騒動"が一転、児童ポルノ禁止法の問題点を浮き彫りに

TABLO / 2016年3月4日 12時35分

悪ふざけの"恒心教騒動"が一転、児童ポルノ禁止法の問題点を浮き彫りに

 2ちゃんねる発の炎上案件の中に『恒心教騒動』というものがある。それがどういう代物かは、あまりに幼稚でくだらないため各自で調べてみて欲しいが、簡単に言うと2ちゃんねらーと、彼らに玩具にされた弁護士との戦いである。

 この騒動に乗じ、標的となった弁護士を誹謗中傷する目的で、Googleマップ上の施設名などを書き換えて遊んでいた30歳の男が逮捕・書類送検された。これだけならばネットの悪ふざけでアホが逮捕されたというだけの話なのだが、男が所持していたPCやHDDに保存されていた90万点を超えるエロ動画や画像の中に、海外の有料サイトで入手したとされる10歳前後の女児のわいせつ動画があり、児童ポルノの単純所持容疑でも書類送検された事をキッカケに、笑い話では済ませない展開を見せることになった。

■押収物として無関係の"フィギュア"が置かれる疑問

 この事件が報道された際に、警察は押収物としてPCなどを並べていたのだが、それらの目立つ場所にフィギュアが置かれていたのである。TBN(東京ブレイキングニュース)で私の記事を読んでくださっている皆様には今さら説明の必要もないが、現状の児ポ法にはマンガ・アニメ・ゲームは含まれない。ましてやフィギュアが含まれるはずもない。にもかかわらず「児ポ法違反で逮捕」という情報を伝える場に、押収物として無関係なフィギュアが置かれていた事の重大さをご理解いただきたい。

 警察は宮崎事件の昔から何も変わらず、未だにこの手の事件を起こす人間を「フィギュアのようなオタクコンテンツを好む人種だ」とレッテル貼りをし、意味不明な印象操作をしようとしているのである。事件と無関係なフィギュアを押収するというリスクを負ってまで、彼らにはそれをせねばならない理由があるのだろう。

 これに対して、さっそく参議院議員の山田太郎氏が追求。山田氏の報告によれば、警視庁生安課のサイバー犯罪担当者は(山田氏の事件と無関係な物品を押収していいのかという問いに対して)「できない。関連性が認められるものしか押収できない。実際に関連性があるからこそ押収物として公開した」と答えたという。この担当者の受け答えが事実とすれば、日本の警察は児童ポルノの概念はおろか、捜査のルールすら正しく認識できていない事になる。もしくは、ルール違反・法律違反とわかっていても、誰も文句は言わないだろうと国民をナメてかかっているかのどちらかだ。

 次に問題なのが、今回の捜査は最初から児童ポルノに関する容疑で捜査が進められていたわけではないということ。たまたま別件で捕まえた男が児童ポルノを持っていたから、それもついでに送検したというだけでしかない。そんな何ら被害児童の為になっていない経緯に加えて、児ポと無関係なフィギュアを押収し、晒し者にしてまで、オタクやオタク文化とされる物に対して悪印象を植え付けようと画策したのだ。もはや何が目的なのか理解不能である。

 今回の事件の教訓は、警察からすれば、こんな意味不明な、麻雀でいう「裏ドラ乗ったラッキー!」的な使い方をするための法律が、児童ポルノ法なのだと解釈しておくべきだということだ。したがって、現状の児ポ法をいくらこねくり回そうと、肝心の警察の思想がこうなのだから、絶対に児童を性被害から守る方向へは向かわない。ましてや、被害児童に対するケアといった流れには向かうはずもない。

 警察は児ポ法の真っ当な使い方を拒んでいる。おそらくその理由の中には「真っ当な使い方だけでは面倒臭くて実績を作り難い」といった事情も含まれているだろう。だから次々としょうもない児ポ違反ばかり裏ドラ的に取り締まっている。その目眩ましに使われているのが、世間に嫌われやすい(同情を集め難い)オタクだ。それでも数字上は「児童を性被害から守るための法律」による逮捕実績が増えて行く。よって「児童と性被害」というテーマに対する法律はこれで問題ナシとされてしまう。その結果、いつまで経っても性被害に遭う児童は減らせず、また事後のフォローもおざなりにされる。これが児ポ法に潜む最大の問題点だと、過去にどれだけ大勢の人間が指摘していただろうか。

 今回の事件は、当初は同情の余地のない2ちゃんねらーがヤラかしたというだけだったのに、警察のその後の対応により、本筋とは全く無関係な部分がフィーチャーされる事となった稀なケースであろう。

Written by 荒井禎雄

Photo by Skley

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