山口組分裂で生活が激変した組員の嘆き「待機状態で毎日張り詰めている」
TABLO / 2016年3月5日 17時0分
昨年秋に分裂した六代目山口組。六代目山口組と神戸山口組の争いは報道されている以外でも連日、小競り合いは起こっている。先日来ニュースで流れている、今月15日の神戸山口組の親睦会の最中に、歌舞伎町・区役所通りで起こった騒動。神戸山口組組員を六代目山口組の組員が暴行している事件で、両者の顔もはっきり映っているものの、未だに解決はしていない。
その後、2月末に掛けて、首都圏では埼玉県八潮市にある神戸山口組三次団体組長宅に銃撃、足立区の同組織幹部組員襲撃。さらに厚木市にある六代目山口組三次団体の元組事務所にトラックが突っ込む等、首都圏ではきな臭い事件が頻発している。お互いの主力組織である、弘道会と山健組の傘下組織同士の騒動だ。
■分裂騒動で緊張が続くなか、末端組員はどう過ごしているのか?
このような状況の中、当事者である組織の人間はどの様な日常生活を送っているのだろうか。六代目山口組の四次組織幹部に電話で話を聞いてみた。決まった太いシノギを持っている組織幹部よりも、より一般人に近い人物だ。
◇◇◇
――ヤクザになって何年目か。
「自分は今年で11年ですね」
――その間に破門された経験は?
「そうですね、私事で懲役に行きましたからね」
――山口組の分裂騒動が連日マスコミを騒がせているが、実際に緊迫しているのか。
「去年の秋、つまり分裂するまではヤクザならではの緊張感はあったが、それなりの余裕のある生活をしていた。だけど分裂で変わりましたよ。今まで同じブロックでいつも顔を合わせていた人間と敵と味方になる事など想定していなかったから」
――以前とは夜の過ごし方も変わったのか。
「そりゃそうですよ、毎日でもありませんけどね。飲みに行って派手に金を使うのもヤクザの見栄でしたから」
――山口組分裂騒動で景気は変わったのか。
「分裂とは関係ないが、今のシノギは正直言ってきつい。それは何をしても逮捕されちゃうご時世でしょ。だから後一歩踏み出せない部分が大きい。それが出来ないからきついですね。金は使えばそれなりに見返りはありますね。100万使っている人間にはそれなりの儲け話は来ます。だけど1万しか使っていない人間には儲け話などは来ない。来たとしても先が見えない詐欺同然のブローカー話が関の山」
――一歩踏み出せないとは?
「今、自分のシノギで身体掛けたら破門になりますよ、そんな事をしたら塀の中に逃げた、と一生烙印を押されますから」
――いまは分裂騒動で緊張感ある状態が続いている。普段は何をしているのか。
「今はずっと待機状態で、周りもピリピリして張り詰めている。何か起こったらすぐに動ける様に。精神的にはかなり疲れている。だから携帯が繋がらない場所にはまず行かない。どうしても行かざるを得ない場合には携帯が繋がる場所に誰かを待機させて、直ぐに連絡が取れる状態にしておく。抗争が起きる前は連絡が3日取れなかったら破門になったけど、今は1日連絡が取れなかったら謹慎で事務所番させられて、それが続かなかったら破門処分でしょう」
――大量の犠牲者が出た山一抗争の再来を誰もが恐れている。
「マスコミは恐れてないでしょ。むしろ『煽っている感』満載じゃないですか。時代背景も何もかも全く違うから相手組織の人間を見たら、誰でも弾くとかあり得ない。それにあの頃と違って今のヤクザは鍛えている人間が多いですよ。自分も含めて格闘技とか筋トレやってますから。人を傷つけたりする事に刃物とかチャカは要らないです。罪も重くなるし、罰金も凄い。まぁ、払えないから1日いくらで労役になり、余計出るのが遅くなりますからね。それに使用者責任もあって、上の人に迷惑が掛かる場合もありますから」
――現状はどう分析しているのか。
「悔しいけど、神戸山口組が優勢でしょうね。だけど東京、大阪も含めてその他の大都市はうちが圧倒的に人数も多いし、その地域に組員が少なくても、その為にブロック制があり、動員はできる。だから東京で何かあっても、すぐにブロック制で動きます。だから動きが速いんですよ」
――抗争を嫌って辞めていく組員はいるのか。
「そりゃ多いでしょ。上が辞めたら縛りも無くなって辞める事も出来るし。微罪で捕まって脱退届出したら、警察は喜んで受け取ってくれますからね。それを持って事務所に来て、その組織の長にハンコ押させますよ」
――いつまでこの状態が続く?
「明日が見えないのがヤクザですよ。だけどこれは誰もが思っていると思いますが、この様な状態は我々だって好ましいとは思ってはいない。自分で自分の首を絞めるような事ですから。だけどヤクザだから行く道は行きます」
◇◇◇
最後はこの様に言って電話が切れた。当事者たちも抗争は歓迎していない。だが、彼らヤクザは引くに引けない部分もあり、意地でぶつかっている。そんな本音が垣間見えた。
Written by 西郷正興
Photo by K-SAKI(コラージュ)
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