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人権団体の「AV女優強制出演」報告書が各方面から非難される理由【1】

TABLO / 2016年3月10日 19時5分

人権団体の「AV女優強制出演」報告書が各方面から非難される理由【1】

 人権NGO団体『ヒューマンライツ・ナウ(以下HRN)』が発表した報告書「日本:強要されるアダルトビデオ撮影 ポルノ・アダルトビデオ産業が生み出す、 女性・少女に対する人権侵害」と、その記者会見の内容に対し、AV業界のみならず様々な方面から批判の声が挙がっている。

 HRNの主張は、これまで何度かネット上で話題になったものが殆どで、AV出演の強要や、人道的に問題のある撮影内容により、AV女優が多大な被害を受けているというもの。それを理由として、内閣府や各省庁などに対してAV業界を規制する法の整備を要求している。HRNによると、AV業界に関係する相談は増加傾向であり、この4年間で93件あったという。

 このHRNの報告書のどの部分が批判を受けているのか、またどの部分がおかしいのか、細かく見ていこう。(先に申し上げておきますが長くなります)

■HRNが発表する数字のおかしさ

 まず数字の問題から指摘すると、日本では毎年約2万本のAVが発売されている。1本辺りの売り上げはセルAV全盛期とされる10年前と比較するとだいぶ減っているのだが、それでも発売ペースはそこまで落ちていない。それだけの数が出せるということは、それなりの人数のAV女優が働いている業界だということだ。では今現在活動しているAV女優が何人いるかというと、これはざっくりした計算でしか数字が出せないのだが、1人が年間10作品に出演したとして2,000人。だが年間10本も仕事が入る子ばかりではないので、平均値ということで年間5本で計算すると4,000人。この辺りが今現在現役で働いているAV女優のおおよその人数ではないだろうか。

 HRNは相談件数が増加していると騒いでいるが、それでも4年間で93件であり、1年間に直すと23件(人)だ。少なく見積もって2,000人、多目に見て4,000人はいるであろう現役AV女優の人数に対し、0.5%~1%程度の比率でしかない。これでは、過去に何度か騒ぎにしてAV業界のマイナス情報が集まりやすい状況になっているのに、その程度の件数しか相談が寄せられなかったと考えるべきではないだろうか。

■疑われる"本当の目的"

 ただ、こうした問題は人数が重要ではなく、今そこに不当な扱いを受けている、人権を侵害されている、危機に瀕している人間が存在していることこそに重きを置くべきなので、この比率を持ち出して「問題ない」と強弁するつもりは欠片もない。しかし、同時にこの程度の数字しか掴めなかったにもかかわらず、まるでAV業界すべてに問題があるかのような口ぶりで喧伝し、なおかつ国連など外圧を使ってどうこうしようという性根は気に入らない。数字がそれだけ小さいならば、被害者からの情報をまとめて証拠として突き付け、警察の尻を叩いて悪人をとっ捕まえて見せしめにでもすれば済む話ではないのだろうか。それを何故わざわざ外圧などという七面倒臭い手段が必要なのか。それでは遠回り過ぎて被害者の救済が遠のくではないか。

 以前、女性弁護士の「秋葉原で児童売春どうのこうの」という妄言に対しても同じことを言ったが、人権団体らが自分達で言っているほどの証言や被害の証拠を集めているというならば、なぜ警察に通報しないのか。なぜ世のため人のために事件化させようとしないのか。何かそれが「出来ない理由」でもあるのだろうか。だが、それをしないからこそ「AV業界の悪人」は減ることがないのではないのか。

■バッキー事件の正しい経緯

 また、この手の報告書や記者会見で鬼の首を取ったかのように持ち出される「通称・バッキー事件」についても再度書いておく。あの事件はNGO団体などのお陰で解決したのではなく、あくまでAV業界の人間(所属女優に大怪我を負わされたプロダクションの経営者)が「ヤクザが出て来ようと殺されようと構わない」と覚悟を決め、業界内に情報提供を求めたり、警察に掛けあったりして、やっとのことで事件化し、逮捕に辿り着いたという経緯がある。

 かく言う私が当時Jというプロダクションの某氏の要請に応じたひとりなのだから、これ以上の証言はないだろう。その時にこの手の人権団体からは何の助けもなかった。したがって、業界のルールを無視した悪辣なメーカーが、あくまでもAV業界の自浄作用によってそれ相応の報いを受けさせられたのだと言える。それなのに、HRNいわくAV業界には何ら自浄能力がなく、外部から手を入れないと健全化されないのだという。冗談もほどほどにした方がいい。

■AV業界の村ルールの厳しさ

 次に、このHRNの根本的な勘違いや調査不足について、先ほど述べた「業界のルール」という面から解説する。まず頭に叩き込んで欲しいのが、これはウソでも何でもなく、AV業界では「女優は神様、それ以外はゴミ」であるということ。

 女優といえども雇われる身なので、金を出す立場の人間が一番強いのは事実だが、それでも好き勝手やっても許されるのは女優だけである。万が一、業界内の男性が世間のルールでも許されないようなバカな真似をしたら、あまり表立っては書けないような怖い目に遭うだろう。

 しかし同じようなことを女優がやっても、最悪の場合でも飛んでチャラである。飛ぶとは、突然事務所と連絡が付かなくなるとか、現場に来ないとか、いわゆる行方をくらませておしまいということだ。中にはそうやって揉め事を起こして事務所を去ったはずなのに、名前を変えて、何だったら顔もちょっと変えて、のうのうと別の事務所に履歴書を持って行く女性までいる。

 だがそれでも(そんな人間に仕事の依頼が来るかどうかは別として)業界は許す。わざわざ取り囲んで怒鳴り散らすなんて真似は女性に対してはしない。

 もしHRNが言うような暴力的な言動で女性の自由を奪うプロダクションがあったとしたら、それはハナから業界のルールを守る気がない連中であり、決して主流ではない。外から見たら同じ業界に見えても、実際はまったく別の世界の出来事だからこそ、業界の人間でも被害実態がわからないのだ。

※ もしこの記事を読んでいる方の中にAV女優になってみたいと考えている女性がいたら、所属する事務所は絶対に下調べをしてから決めること。相手が本当に "AV業界" の人間かどうかわからないので、絶対にその場で契約書にサインしてはならない。また個人情報の類も教えないこと。もししつこく付き纏われるようなら、遠慮無く警察を呼ぶか、近くの通行人に助けを求めるべきだ。

 AV業界には他の業界では通用しないような厳しい村ルールが存在している。だが、それが適用されるのは原則として男だけである。よって、もし仮にAV業界で酷い人権侵害を受けている人間がいるとしたら、それは若手の男性ADなど立場の弱い下っ端スタッフだろう。彼らが予算の都合でペラペラの安いサンドイッチをかじって空腹を凌いでいても、1食1,000円を超える仕出し弁当を用意してもらえるのが "女優さん" なのだ。もし仮に現場に弁当やツナギ(撮影の合間に摘む軽食・菓子・飲み物など)も満足に用意されておらず、女優が「扱いが悪い」と感じたとしたら、その現場のスタッフは確実にそれ以下の扱いを受けている。それがAV業界のヒエラルキーである。(続く)

Written by 荒井禎雄

Photo by Brett Jordan

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