【山口組分裂抗争】 各地で起こる衝突事件の背後に浮上する「リニア利権」
TABLO / 2016年4月6日 15時3分
日本最大の指定暴力団である六代目山口組が分裂して約半年の月日が流れた。今もテレビで流される史上最大且つ最悪であった山一抗争の様な悲劇は訪れるのか?
※山口組分裂騒動がついに「抗争状態」へ...警察庁が緊急会議
筆者は上記でも指摘しているが、今後も抗争が終焉しない限り、至る所で小競り合いは起こるであろう、と指摘した。
思った通り、日本各地で小競り合いは毎日の様に起こっている。先日、やっと警察庁が六代目山口組と神戸山口組が抗争状態にある事を認めて、いずれかの組織がある全国44都道府県の警察本部に集中取締本部の設置を指示し、全国の警察に関連情報の収集などを進めている。
しかし、こんな事で両組織の抗争は収まる訳は無い。3月は、これまで毎月15日に今まで3回行われていた歌舞伎町で行われていた神戸山口組系の関東組織を集めての食事会は行われなかった。
神戸山口組関係者に聞くと、「あえて無理に摩擦の起こる場所で開く必然性がない。今まで行った食事会だけで十分だ」との話を聞いた。だが、その後に渋谷で行おうとした形跡もあったがこれは噂で終わった。前日くらいから警察関係者の動きも激しかったのは事実である。
この食事会に集まっている組織は直参ではないが、50組織以上である。しかしその動きとは関係なく、六代目山口組側は直参組織である落合金町連合本部に置いて先日、関東の食事会を行った。この際、同じ直参である横浜に本部を置く二代目浜尾組の最高幹部の神戸山口組側を挑発する言動がニュースを通じて全国に放映された。
これを放送し、無理矢理挑発的な言葉を引き出すマスコミもどうかと思うが、その直後から取り締まり側は警備を強固にしている。
■分裂による小競り合いが頻発する地域に"リニア利権"の影
果たして、今後の展開はどうなるのか? 煽るような記事は筆者の望む所ではないので俯瞰して今まで起こった、あるいは今後起こりえる事態を推測したい。果たして六代目山口組、神戸山口組側はどの様な行動を起こすのか。お互いに考えている事は相手をヤクザとして認めていない事であり、筋はこちら側、と言う点が重要だ。この筋論に関して筆者は無関係なので、論評は控えたい。
今まで激しく抗争が起こった場所を考えて見ると一部例外はあるが、大きな特徴があることに気付く。お互いの勢力がある名古屋、神戸、拮抗している大阪も含めそれ以外の地域でも小競り合いが続くのは当然だ。移籍した組織への攻撃も想定内であろうし、緊張感が高まってもいる。しかし、最近、各地で群発する小競り合いは、ある大きな利権を巡って衝突していることが想像出来るのだ。
それはリニアモーターカーの利権である。リニアモーターカーの東京、名古屋間の開通は2027年の予定。その停車駅は、東京を始発として、品川、相模原、甲府、飯田、中津川、名古屋である。現在は開発の真っ只中である。
停車駅の中で地方に目を向けると、甲府は稲川会と分裂した山梨侠友會が5年近くに渡り小競り合いを続け、九州の道仁会小林哲治会長が仲裁に入り、先日山梨侠友會が解散し、佐野組として稲川会に復帰した"因縁の地"でもある。
一部報道では、この事実を「何も得たモノはなかった」と解説した向きもあるが、実際はそんな事はない。今は稲川会の直参である佐野組長は、山梨一家の三代目を剥奪されたのにも関わらず復帰をなし得ている。絶縁が破門に切り替わったり、その反対も珍しくはない世界だが、筆者は寡聞にして、跡目剥奪された人間の復帰は聞いた事がない。
この復帰は甲府という町を落ち着かせたかった以外に想像が付かないのだ。今は甲府の駅前は閑散としているが、リニア工事や開通の際は巨額な資金と人が集まってくる。このような場所にはヤクザが蠢くのは至極当然の事なのだ。
そして、飯田市。組員移籍前とされていて大きな問題にはならなかったが、一番初めに分裂抗争によって死者が出た地域だ。中央道の封鎖事件が起こり、報道されない小競り合いは何度も起こっている未だに緊張が続く地域である。
中津川周辺には六代目山口組、稲川会が進出している。厳密な縄張りが決っていない一地方だが、トラックが突っ込んだり、車が破壊される等の実力行使が起こっている。
先日も厚木で六代目山口組側の事務所に車が突っ込んでいる。その数日後に、相模原市南区の神戸山口組側の組員の車が破壊される事件も起きた。南区はリニアの停車駅建設予定地であり、厚木は相模原の商業圏内である。2020年に行われる東京オリンピックの前さばき、つまり談合は終わっていると考えるのが妥当だろう。
東京オリンピックでの利権争いは、建物や道路建設等の巨額な金が動く範囲のものは終わっていて、残されているものは工事への派遣業などに限られている。だが、リニア利権は土地の買収は終わっているが、その周辺の開発はそこまでは進んではいないのが現状だ。
都内の品川周辺では再開発が進んでいるが、それは以前から進んでいる別案件である。名古屋も今の勢力図では六代目山口組以外に新たに入れる余地は少ない。そう考えると、自ずと危ない地域が浮かび上がってくるのだ。
Written by 西郷正興
Photo by K-SAKI(コラージュ)
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