日本の大手メディアが頼る「ネットでは~」という情けない"逃げ口上"
TABLO / 2016年5月21日 17時0分
東京ブレイキングニュースに4月26日に掲載されたプチ鹿島氏の記事は非常に鋭い指摘だった。
http://n-knuckles.com/serialization/pkashima/news002228.html
この中で鹿島氏は、戦う姿勢も責任を負う覚悟も見せず、万事外圧頼みのマスコミの無様さについて述べているが、マスコミが "逃げ" に使う道具は外圧だけではない。私が十数年前から拠点としているインターネットも同様である。
もしかすると過去に何かの記事で言及したかもしれないが、2002~03年辺りから、世間でも知られている有名出版社などが、少し危ない記事を書く際に「インターネットではこう言われている」 という決め文句(逃げ口上とも言う)を使うケースが目立つようになった。場合によってはネットではなく「2ちゃんねるでは」という恥ずかしいセリフを堂々と紙面に載せるケースすらあった。
今では考えられない話かもしれないが、当時はPCやネットの専門誌どころか "2ちゃんねるの専門誌" がコンビニ売りされていた時代だったため、リスクの高い内容の場合は2ちゃんというアングラの代名詞に責任を被せ、保身しつつ記事を書こうと企む輩がアチコチにいたのである。
かく言う私の元にも当時は様々な打診があった。その大多数が 「有名週刊誌の手伝いができるんだから請けて当然だろう」 という態度だったため殆ど断っていたのだが、依頼の内容はどれも似たり寄ったり。早い話が 「今からウチがやろうとしているネタの触りの部分をネットで広めてくれ」といったもの。それが広まった段階で、週刊誌が「ネット上で驚くべき情報が話題になっている!」とぶちまけるという寸法だ。これにより、万が一大手プロダクション等が怒って訴えて来たとしても、出版社は「だってネットにある情報を拾って来ただけですもん。 ウチが第一報じゃないですもん」と言い逃れようとしたのである。
今では「情報の拡散を手伝っただけであっても正犯と同等とみなす」という判例がいくつも出来たため、この手法は使えなくなったが、当時はまだインターネットという新しいメディアをどう扱うべきか司法も混乱していたため、こんな浅はかな方法論がまかり通っていたのだ(ちなみに、その後少し遅れてTVが同様の手法を取り入れるようになった)。
私個人が実体験したケースの具体例を挙げると、最も酷かったのはライブドア騒動がスタートした辺りである。その時点ではライブドアが白か黒かハッキリしなかったため、とにかく危ない部分を我々に押し付けようとして来た。試しにほんの何回か某TBSと某テレビ朝日に情報提供という形で協力した事はあったが、その際はワイドショーなどでネタを使われはするものの......。
「ネットにはこのような過激な情報が流布されている」
→ 「だが、信ぴょう性の点で疑問が残るので、しばらくの間は動向を見守りたい」
といった、あまりに雑な両論併記の出来損ないのような内容で愕然としたものだ。本音では我々が流してやった面白ネタを大々的にやりたいのに、それだと名誉毀損で訴えられる可能性があるため、このような逃げを打ったのである。
ここで不思議なのは、このように雑誌もTVも都合良くネットを保身や話題作りに使って商売して来たのに、何か事件の類が起きると「これだからネットは!」といった論調で、反ネットに回る点である。思い付く限り最悪のネットの使い方をしていたのはお前らだろうと言いたい。
そんなヘタレた連中が正義漢ぶってネットを悪しざまに叩くのだから、そりゃ信用を無くして視聴率がダダ下がりし、企業もスポンサードしなくなって当然というもの。大手メディアのネット叩きなど「お前が言うな」という話でしかなく、戦うべき時に腹をくくって戦えないのならば、電波にしろ紙にしろ、もはや守られる価値などない。
とはいえ "ネットDE真実" にも問題が多く、ネットの情報を鵜呑みにするくらいならば、残念ながら「既存の大手メディアの発する情報を信じ込んだ方がまだマシ」というのが現状だ。ここからさらに次の段階へ進むためには、自分の頭で物事を考えられ、なるべく安全に情報の取捨選択が出来る人間をもっと増やさねばならない。それが実現できれば、情けない大手メディアであっても、覚悟を決めて戦わねば 「情報を手に取って貰えない→食えない→渋々戦う」 という時代がやって来る......はずである。
本来ならば、潤沢な予算がある分だけ、TVや大手誌の方がネットより濃くて当たり前なのに、何故あそこまで甘ったれていられるのだろうか。
Written by 荒井禎雄
Photo by USDAgov
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