小金井ストーカー刺傷事件の報道に感じるモヤモヤについて|ほぼ週刊吉田豪
TABLO / 2016年5月24日 17時54分
最初に「女性刺され重体、男確保 アイドルとファンか」という第一報が入ったのが、ちょうどボクが大阪でアイドルイベントの司会業を終えて、いわゆる地下アイドルイベントに顔を出しているタイミングだったから、衝撃もさらに大きかったわけですよ。で、事件の詳細がわかってきてまずモヤモヤしたのが、被害者の冨田真由さんが「地下アイドル」と報じられていること。
冨田真由さんはもともと女優で、ドラマ『シークレットガールズ』でアイドルグ ループのメンバーを演じた結果、期間限定の企画物ユニット『シークレットガールズ』としてEYEという役名で握手会やライブもやることになったけれど、アイドル的な活動はCDを1枚出しただけで終了。その後はシンガーソングライターとして活動している人なので、彼女をアイドルと呼ぶのは不適切というか。たとえるなら1枚でも企画でアイドルめいたCDを出した女優なり女子アナなりを全部アイドル扱いするぐらい雑な行為だと思うし、もっと言えば犯人もアイドルヲタじゃない。あの犯人のTwitterアカウントを見ても、アイドルではなく女性シンガーソングライターのことしかつぶやいていなかったし、ジャンルでいえばファンというよりストーカーなわけですよ。
つまり、今回の件は「シンガーソングラ イターがライブ会場前でストーカーに待ち伏せされて被害に遭った」ケースなのに、なぜか「アイドルが交流イベント時に距離感を失ったアイドルファンに襲われた」と報道されているから、これまたモヤモヤするわけです。「交流イベント」というのは握手会とかサイン会とかチェキ会とかのことであって、シンガーソングライターのライブを「交流イベント」呼ばわりするのはさすがに失礼すぎ。
NHKが「芸能活動をしていた女子大学生が刃物で刺された事件」という表現にある段階から変わったり、TBSラジオやニッポン放送の吉田尚記アナも彼女のことを「アイドル」と呼ぶのをやめたりと、一部のメディアはわかってくれてるみたいだけれど、大半はそうじゃないわけです。
そんなとき某テレビ局からボクがこの事件について電話取材されることになって、「大手アイドルと地下アイドルの違いについて教えて欲しいんですけど、やっぱり距離感が近いと危ないんですよね?」と聞かれたから、「そもそも彼女はシンガーソングライターで、犯人もアイドルヲタとかじゃないから、地下アイドルの問題とはまた別」と説明。しかし、何度説明してもピンとこないのか「でも、やっぱり地下アイドルの世界はファンとの距離が近くて危ないんですよね?」と聞いてくる某テレビ局スタッフ。「いや、地下アイドルの世界も危ないかもしれないですけど、彼女が活動していた女性シンガーソングライター的な世界のほうが、マネージャーもなく1人で行動することも多いから、もっと 危ないんですよ」と言ったけど、果たしてどれだけ伝わったのか......。
そもそも、地下アイドルでも女子シンガーソングライターでもどこのジャンルでもそうだけど、世の中には他人の感情を理解できない、常識も通用しない、自分のことしか考えていないタイプの人間が一定数紛れ込んでいて、今回の事件はそういうある種の病を抱えた人間によるストーカー犯罪だから、「やっぱりアイドルの接触ビジネスには問題がありますね」みたいな話に着地させてもしょうがないんですよ。AKBの襲撃事件にしてもアイドルヲタの犯行じゃなかったように、世の中に一定数存在するヤバい相手に、どう対処するべきかを考えなきゃいけないのに!
結局、なぜそういう感じの報道にならないのかというと、それによ ってある種の病の偏見を助長することになったらマズいって判断で、「地下アイドルとアイドルヲタの問題」という、ある意味では無難なところに着地させようとしてるんだろうなと思ってます。
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