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AV業界は自滅する?大規模なガサ入れをした警察の"真の目的"とは【4】

TABLO / 2016年6月21日 20時1分

AV業界は自滅する?大規模なガサ入れをした警察の"真の目的"とは【4】

 大手AVプロダクションが労働者派遣法違反の容疑で摘発された件について、未だに情報が錯綜しているようなので、改めて "正しく" 伝えようと思う。とはいえ重ねて言っておきたいのはただ一点だ。

「今回のケースでは、AVへの出演に騙しや強制性があったか否かはほぼ無関係である」

 これはプロダクションにかけられている容疑から解るのだが、もし仮に強制的に女性にAV出演をさせた事に対して捜査が行われているのであれば、労働者派遣法などではなく、それこそ強姦罪などのより重い容疑がかけられなければ話がおかしい。今後そうなる可能性がゼロではないし、この原稿を書いている今から、実際に掲載されるまでのタイムラグでどう進展するかは不明だが、少なくとも現時点(6月19日)では労働者派遣法違反の容疑のみであり、であるならば強制・騙しといった要素は無関係と断言しても良い。

 なぜならば、労働者派遣法の有害業務うんぬんだけならば、強制性などを持ち出さずとも、性行為や準性行為のあるAV作品への女優の派遣はすべて該当(抵触)するからだ。よって、この事件を伝える際にやたらと「強制出演」と煽る記事は、内容に問題があると看做して良い。

 加えて言うと、この法律には
「女性は常に被害者として扱われる」
「女性が被害者として親告すれば、現在のAVはほぼ間違いなく有罪に持って行ける」
「女性(出演者)が被害者の立場でなければ成立しない」
 という特徴がある。

 この法律が持ち出される場合は、女優を「雇用していた」プロダクションが、有害な業務と知って斡旋や紹介などをしたという容疑になるため、この容疑で逮捕者が出た場合は、ほぼ確実に「女優=被害者vsプロダクション=容疑者」という図式になる。今のところこれに例外はない。

 ではAVメーカーはどうなるかというと、実は無修正作品や、参加者から金を取るといったあまりにバカな真似をしない限り、これという法律がない。今回、水面下で問題視されているのが実はこの点で、「実質的にヤラせているのはメーカーだろう」という声が挙がっている。が、この辺りはまだ表面化しておらず、捜査も続いている状況なので、申し訳ないが詳細は伏せさせていただく。

 また、ついでに記事内容の訂正もしておきたい。先日アップされた連載2回目の記事中で、「性行為をしていない事で労働者派遣法・職業安定法をクリアしているという建て前だ」といった説明をしたが、それには一部誤りがある。

 過去の判例では、性行為ではなく、準性行為(ズバリ言えば口淫や手淫)をしていただけであっても「有害業務に女性を斡旋した」として有罪判決を受けた例がある。これをヤラれた人物は、私と仲良くしてくださっている大先輩で、その方から直接聞いた話なので間違いない。

 したがって「性行為をしていなければ、即ち疑似本番ならば、完全に合法なので安全だ」といったロジックは成立しない。それはあくまで「逮捕・摘発の可能性が減らせる」というだけでしかないのである。

 このように、セックスワークはただでさえモヤモヤした法律で雁字搦めになっているのに、さらに "準性行為" という何を指すのか不確かなものでも逮捕・有罪が確定(プロダクションに限る)してしまう。これが "有害業務" という単語の持つ怖さだと言えよう。

 この点を訂正すると共に、間違った解説をしてしまった事についてお詫び申し上げる。

 このような事情があるので、今後何件かプロダクションが摘発される事件が起きた場合は、その容疑に注目してもらいたい。もし有害業務うんぬんしか発表されていなかったら、警察は「AVに出演させた」以外のネタを持っていないか、もしくはそれ以外では立件が狙えなかったと考えて良い。

 長くなったが、本題に移る。

■目くらましになった海外配信系の摘発劇

 今回のプロダクションの摘発と、大手メーカーへの捜査は、一説によると100人体制だったというから、かなり大規模かつ広範囲に行われたようだ。元AV女優の告発が元になった過去の同様の例では、ここまで大規模な捜査は行われなかったので、メーカーもプロダクションも、どうして今回に限って警察がこうまで本気なのか理解できなかっただろう。

 いくらAV業界が危機感を持たなさ過ぎたとはいえ、ここまで無防備に好き放題ヤラれてしまった事には理由がある。その大きな要因として、昨年から激しくなった海外配信系のエロサイトの摘発が挙げられる。あの騒動によって、AV業界はブレーキを踏みはしたが、同時に「海外配信の無修正に手を貸さなければOK=今まで通り表AVだけは安全」と思い込んでしまったのである。

 その際に「無修正サイトの作品に女優を派遣していても、過去作品を遡れるのは1~2年が限度だろうから、その期間の分にだけ注意してればよかろう」と考えていたプロダクションが殆どだったのではなかろうか。

 また、無修正と知って女優を派遣していたのであれば自業自得だが、中には制作者がプロダクションを騙し、モザイク入りのAVのフリをして無修正を撮るなんてケースも非常に多い。その場合は被害を申し出ようにも、そもそもがグレーな業種であるから、AV村の掟にしたがって"法とは違う方法"で無修正メーカーに対してナニをアレする事になる。

 プロダクションからすれば、この程度の注意をしておけば安全だと考えていたはずで、まさか「引退済みの元AV女優が数年前の表AVを告発する」なんて事態になるとは想像も出来なかったに違いない。海外配信系の無修正サイトと、それらを目くじら立てて追い回す警察の動きとが、完全に目くらましになってしまったのだ。

■AV業界の最大の失敗

「女性の性・裸を売る女衒商売が真っ当な訳がない」とは、私が常々言い続けて来た事ではあるのだが、そうは言っても女性にとってのセーフティネットという一面がある以上、なるべく安全かつクリーンな業界を目指さねばならない。その上で法の不備や時代に合わない部分を改めるべく運動しなければならなかったはず。

 ところが、最もそうした動きをし易かったはずのAVメーカーの経営陣・上層部の人間達は、儲け至上主義に走り過ぎてしまった。売れればいい、売れそうな女を裸にひん剥けばいい、自分の会社さえ潤えばいいと、社会に対する建て前や業界に対する責任から逃げ続けて来た。そのツケを一気に払わされようとしているのだろう。

 もし仮に、業界に金がうなりまくっていた十数年前に、天下りを入れた審査団体などの人脈を活用し、法の改正といった方向へ進めていたなら、パチンコやゲームセンターのように、「昔はブラックでヤクザ者や山師のような連中が蠢いている界隈だったのに、気付いたら明るく健全なアミューズメントになっていた」といった結末すらあったかもしれない。AV業界は、このような味方を作る重要性と必要性とを理解していなかったのである。

 加えて、レンタルAV~セルAVの転換期、もっと言うとVHS時代からDVD時代への移り変わりの時代に、他業種から山師のような連中が多数流入した点もマイナス要因として考えられる。あまり詳しく言うと特定しているも同然になるのでボカすが、AV参入前の業種がすでにグレーだったり、今では法的に許されないものだったりする連中が多く、そういう人間達が金儲けのために都合よく作り上げて来た業界なのだ。

 そうした土壌が整ってから、今度はセックスワークが抱えるリスクも知らずに、無防備に入り込んで来る人間が増え、そうした新人にマトモな教育もできず、気付けば「現役の業界人がそもそもの話を知らない」という状況になってしまった。

 この辺りがAV業界が一撃でここまで追い込まれた理由になるだろう。

Written by 荒井禎雄

Photo by StephaniePetraPhoto

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