かつての"首相候補"加藤紘一氏の死去で自民党ハト派が絶滅危惧種に!?|プチ鹿島の余計な下世話!
TABLO / 2016年9月13日 17時45分
加藤紘一氏が亡くなった。一時期は「将来の首相候補」というお題が出たら必ず名前が出た人だった。
あなたは「YKK」という称号は覚えているだろうか。当選同期の山崎拓、加藤紘一、小泉純一郎の3人をまとめてこう呼んだのだ。似たようなものでは「コンチクショー」(金丸・竹下・小沢)というのもある。加藤氏が活躍した時代は、永田町発「うまいこと言ってやった感」をありがたがって発信したオヤジジャーナルの絶頂期でもあった。
2年前、加藤氏個人というより、加藤氏が所属した「宏池会」、もっと言えば「自民党ハト派」の存在感はどこに? という記事をいくつかみた。まずはこれ。
『絶滅危惧種?自民ハト派の意地 タカ派幅きかす安倍政権、だからこそ聞きたい』(毎日新聞・2014年04月08日)
《「ハトも鳴かずば撃たれまい」ということか。安倍晋三政権の下、ハト派の存在感が限りなく薄い。集団的自衛権を巡る議論も、限定的行使容認でまとまりそうな勢いだ。》
《自然界でもタカばかりが増えてしまえば生態系は崩れる。ハトの少ない政界はやっぱりおかしい。》
同じ年の2月にはこの記事も。『保守「本流」誰の手に のまれるハト派』(朝日新聞・2014年2月9日)
《東京都内のホテルに3人の自民党幹事長経験者が集まった。加藤紘一、古賀誠、山崎拓。加藤と古賀は名門派閥「宏池会」の元領袖(りょうしゅう)。山崎は加藤の盟友だ。「今の自民党は右に寄りすぎだ」「『保守本流』を担う世代を育てないと」。3長老は危機感を吐露し合ったが、名案は浮かばぬまま別れた。》
ここで言う「保守本流」とは、吉田茂が進めた軽軍備・経済重視路線を引き継ぎ、所得倍増計画で高度経済成長を実現した元首相池田勇人の流れをくむもの。「穏健な政治手法や所得再分配、アジアとの友好を重んじ、大平正芳、鈴木善幸、宮沢喜一という首相を生んだ」(同)。
オヤジジャーナル的言説では、「宏池会」といえば「お公家集団」とも言われた。エリート揃いだが、政局での勝負勘の無さ、ケンカの弱さを揶揄してのものだ。それを体現したのが加藤紘一氏でもあった。自民党リベラルを標ぼうし、理念や理屈は美しいが、いざ実戦となると勝てない。
2000年の「加藤の乱」では、森喜朗内閣打倒で盛り上がったが結局は失敗。森降ろしの気運をつくったことは確かだが、そのあと小泉純一郎がおいしいところをかっさらって首相の座につき、「清和会」は森、小泉、安倍、福田と2000年代に4人も総理を生んだ。
そう考えると、あの加藤の乱は大きな分岐点だったのかもしれない。保守本流から、保守傍流だった清和会の時代へ。それは今も続く。
今の「1強時代」を面白くしてくれる宏池会系は今後出てくるのだろうか。谷垣貞一氏は自転車で転倒し運の無さをみせた。あとは岸田文雄外務大臣か。
岸田氏がこれからちゃんとケンカができるのか、ひとつの見どころである。
Written by プチ鹿島
Photo by erykan
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