背景に巨大な司法の力が?元女優・高樹沙耶が大麻取締法で逮捕された"本当の理由"
TABLO / 2016年11月8日 20時0分
日本国内においては、大麻取締法で処罰される医療用大麻だが、その推進を訴え、夏の参院選に立候補した高樹沙耶こと益戸育江容疑者が10月25日、厚生労働省麻薬取締部の合同捜査本部により所持の現行犯で逮捕された。
本人はその後の取り調べにより、「私のモノではない」と否認。共に捕まったのは大麻取締法第四条廃止勝手連代表森山繁成容疑者と、バックパッカーの小見裕貴容疑者。そして元参議院議員である平山誠氏、和田英幹氏などと奇妙な同居生活を石垣島で送っていた。
ところで高樹容疑者が選挙で訴えた、医療用大麻と大麻の違いは何か? 答えは「同じモノ」だ。ではなぜ今回、「合同捜査本部」という大げさな捜査態勢が設けられたのか? これは憶測の域を出ないが、一つにはこの石垣島を拠点として全国に大麻を売り渡された、とも想像される。さらになぜ「今になって逮捕」なのか。そのウラにある捜査陣の狙いとは?
参議院選挙で大々的に医療用大麻の推進を訴え、マトリ(厚労省麻薬取締部)に目を付けられたのも一つの要因だろうが、被告が死亡して終わった、あるひとつの裁判の存在が大きいとみられている。それは、末期がん患者の男性が医療用として大麻を使用し、大麻取締法違反で逮捕されてしまった事件である。
逮捕された男性は裁判で「医療用大麻の使用は、憲法で定められた生存権の行使にあたる」として無罪を主張していたのだが、注目している全ての人間が危惧していた様に、裁判中に亡くなってしまった。この男性が裁判所に提出したデータによれば、自らが大麻を使用した後の健康状態を示す数値は良好になっていた。だが、これが全ての人間に当てはまるとは考えにくい。たとえば鎮痛剤などでも、家族には効いても自分には効かない、という実例がいくらでもあるからだ。
そして、この裁判の行方は司法関係者よりも厚労省が注目していた。それは、今年から来年中にかけての期間に、カナダでも嗜好用の大麻が解禁されるといった観測のためである。
カナダのトルドー首相は2015年の選挙期間中、「娯楽用の大麻を合法化する」という公約を発表している。トルドー首相は合法化の時期については言及していなかったが、2016年4月20日に行われた麻薬問題に関する国連総会会合において、カナダの保健相が「2017年春ごろに大麻合法化に向けた法整備を予定している」と発言した。
一連の動きを取り上げていたメディアは少ない。だが厚労省は、カナダの動向と国内の裁判にかなり注目していた。何しろ判決次第では、日本がカナダのように「娯楽用大麻解禁」まであと一歩、という事態に陥っても不思議はなかったのだ。
それは進みすぎだとしても、仮に司法が「医療用大麻の使用は憲法の生存権の観点に鑑みて合法」との判決を下せば、1948(昭和23)年に制定された大麻取締法が根本から見直される事態となる。厚労省はこうした可能性を「危惧」していたようだ。その様な先例を厚労省は避けたかったのも一因だろう。
大麻解禁ではカナダより先を進むアメリカを見てみよう。現在、医療用と嗜好用大麻の両方を共に合法としている州はコロラド、ワシントンの2州だ。医療用大麻のみ合法は20州と1特別区になり、条件付きで医療用大麻を合法化したのは2州。「喫煙や植物の状態での所有は禁止」のミネソタ州、「喫煙は禁止」のニューヨーク州である。
アメリカ全50州のうち、約半数の24州が何らかの形で大麻の使用を許可しているのだ。その中で特に注目したいのは、麻薬取締りに関してアメリカ国内でも最も厳しいスタンスをとっていたニューヨーク州と、首都であるワシントンDCの合法化だ。この大麻合法化という流れは、麻薬に対する規制緩和ではなく、「大麻は麻薬ではない」という認識がアメリカ国民全体の間に拡大したことの結果である。また、多額の税金が大麻の取締りに使われることに対しての疑問の声が上がったからだともされる。
このような動きは当然アメリカだけのものではない。ドイツ、ベルギー、オランダ、フランス、イタリア、イギリスといった、ヨーロッパなどの21ヵ国で医療用大麻が合法、もしくは非犯罪化(所持量や所持、使用の方法など、条件を設定して許可する)されている状況である。さらに、一部の国では嗜好用大麻が合法及び一部合法の国もある。
医療用大麻と嗜好用大麻の中身も成分も前述した様に、実際は全く同じモノである。そして日本は政策、法律のかなりの部分を今まで、欧米先進国を例に進めてきた。「長いものには巻かれろ」主義である。
末期がん患者に対しては、今までモルヒネなどが合法的に使われてきた、これは当然、医療従事者として、麻薬及び向精神薬取締法といった法に基づいてのことである。そして、大麻の栽培が一部認められているのも事実である。
しかし、当然ながら現場での行為は厳重に管理されている。医療機関を流出元とする薬物の闇売買はモルヒネを含めて存在していたのは間違いない。ただ覚醒剤の「横流し」はかなり簡単に行われていたのに対し、モルヒネの敷居は大麻より高かったというのが実感だ。
背景には、モルヒネはアヘン由来とはいえ、覚醒剤と同じくケミカル系の薬物であり、化学合成して作られることがある。そもそも誰にでも作れるものではないのだ。しかも覚醒剤のように大規模な密輸ルートが整備されていないことも大きい。
ところが大麻は極論を言えば、そこらに自生している植物だ。条件させ整えば、誰でも簡単に栽培できると言ってよい。余談だが、夏前になると、北海道厚生局麻薬取締部は山に入り自生している大麻を刈る。これは彼らの大きな仕事の1つでもある。そんな前提条件を考えれば、仮に大麻取締法が見直しとなると、大麻の管理態勢にほころびが出るのではないか。筆者が危惧するのは、その点だ。
高樹沙耶こと益戸育江容疑者も参議院選挙で堂々と医療用大麻を推進していたのだから、今回の逮捕でも否認をせずに、堂々と持論を展開してもらいたいものである。所詮初犯は執行猶予だからいい機会でもあると思うのだが。当然、筆者は現行法を指示しており、大麻の解禁には反対の立場である。
Written by 西郷正興
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http://n-knuckles.com/media/img/thumbnail/2016/11/lgf01a201406290500-thumb-600x400-4796.jpg日本国内においては、大麻取締法で処罰される医療用大麻だが、その推進を訴え、夏の参院選に立候補した高樹沙耶こと益戸育江容疑者が10月25日、厚生労働省麻薬取締部の合同捜査本部により所持の現行犯で逮捕された。
本人はその後の取り調べにより、「私のモノではない」と否認。共に捕まったのは大麻取締法第四条廃止勝手連代表森山繁成容疑者と、バックパッカーの小見裕貴容疑者。そして元参議院議員である平山誠氏、和田英幹氏などと奇妙な同居生活を石垣島で送っていた。
ところで高樹容疑者が選挙で訴えた、医療用大麻と大麻の違いは何か? 答えは「同じモノ」だ。ではなぜ今回、「合同捜査本部」という大げさな捜査態勢が設けられたのか? これは憶測の域を出ないが、一つにはこの石垣島を拠点として全国に大麻を売り渡された、とも想像される。さらになぜ「今になって逮捕」なのか。そのウラにある捜査陣の狙いとは?
参議院選挙で大々的に医療用大麻の推進を訴え、マトリ(厚労省麻薬取締部)に目を付けられたのも一つの要因だろうが、被告が死亡して終わった、あるひとつの裁判の存在が大きいとみられている。それは、末期がん患者の男性が医療用として大麻を使用し、大麻取締法違反で逮捕されてしまった事件である。
逮捕された男性は裁判で「医療用大麻の使用は、憲法で定められた生存権の行使にあたる」として無罪を主張していたのだが、注目している全ての人間が危惧していた様に、裁判中に亡くなってしまった。この男性が裁判所に提出したデータによれば、自らが大麻を使用した後の健康状態を示す数値は良好になっていた。だが、これが全ての人間に当てはまるとは考えにくい。たとえば鎮痛剤などでも、家族には効いても自分には効かない、という実例がいくらでもあるからだ。
そして、この裁判の行方は司法関係者よりも厚労省が注目していた。それは、今年から来年中にかけての期間に、カナダでも嗜好用の大麻が解禁されるといった観測のためである。
カナダのトルドー首相は2015年の選挙期間中、「娯楽用の大麻を合法化する」という公約を発表している。トルドー首相は合法化の時期については言及していなかったが、2016年4月20日に行われた麻薬問題に関する国連総会会合において、カナダの保健相が「2017年春ごろに大麻合法化に向けた法整備を予定している」と発言した。
一連の動きを取り上げていたメディアは少ない。だが厚労省は、カナダの動向と国内の裁判にかなり注目していた。何しろ判決次第では、日本がカナダのように「娯楽用大麻解禁」まであと一歩、という事態に陥っても不思議はなかったのだ。
それは進みすぎだとしても、仮に司法が「医療用大麻の使用は憲法の生存権の観点に鑑みて合法」との判決を下せば、1948(昭和23)年に制定された大麻取締法が根本から見直される事態となる。厚労省はこうした可能性を「危惧」していたようだ。その様な先例を厚労省は避けたかったのも一因だろう。
大麻解禁ではカナダより先を進むアメリカを見てみよう。現在、医療用と嗜好用大麻の両方を共に合法としている州はコロラド、ワシントンの2州だ。医療用大麻のみ合法は20州と1特別区になり、条件付きで医療用大麻を合法化したのは2州。「喫煙や植物の状態での所有は禁止」のミネソタ州、「喫煙は禁止」のニューヨーク州である。
アメリカ全50州のうち、約半数の24州が何らかの形で大麻の使用を許可しているのだ。その中で特に注目したいのは、麻薬取締りに関してアメリカ国内でも最も厳しいスタンスをとっていたニューヨーク州と、首都であるワシントンDCの合法化だ。この大麻合法化という流れは、麻薬に対する規制緩和ではなく、「大麻は麻薬ではない」という認識がアメリカ国民全体の間に拡大したことの結果である。また、多額の税金が大麻の取締りに使われることに対しての疑問の声が上がったからだともされる。
このような動きは当然アメリカだけのものではない。ドイツ、ベルギー、オランダ、フランス、イタリア、イギリスといった、ヨーロッパなどの21ヵ国で医療用大麻が合法、もしくは非犯罪化(所持量や所持、使用の方法など、条件を設定して許可する)されている状況である。さらに、一部の国では嗜好用大麻が合法及び一部合法の国もある。
医療用大麻と嗜好用大麻の中身も成分も前述した様に、実際は全く同じモノである。そして日本は政策、法律のかなりの部分を今まで、欧米先進国を例に進めてきた。「長いものには巻かれろ」主義である。
末期がん患者に対しては、今までモルヒネなどが合法的に使われてきた、これは当然、医療従事者として、麻薬及び向精神薬取締法といった法に基づいてのことである。そして、大麻の栽培が一部認められているのも事実である。
しかし、当然ながら現場での行為は厳重に管理されている。医療機関を流出元とする薬物の闇売買はモルヒネを含めて存在していたのは間違いない。ただ覚醒剤の「横流し」はかなり簡単に行われていたのに対し、モルヒネの敷居は大麻より高かったというのが実感だ。
背景には、モルヒネはアヘン由来とはいえ、覚醒剤と同じくケミカル系の薬物であり、化学合成して作られることがある。そもそも誰にでも作れるものではないのだ。しかも覚醒剤のように大規模な密輸ルートが整備されていないことも大きい。
ところが大麻は極論を言えば、そこらに自生している植物だ。条件させ整えば、誰でも簡単に栽培できると言ってよい。余談だが、夏前になると、北海道厚生局麻薬取締部は山に入り自生している大麻を刈る。これは彼らの大きな仕事の1つでもある。そんな前提条件を考えれば、仮に大麻取締法が見直しとなると、大麻の管理態勢にほころびが出るのではないか。筆者が危惧するのは、その点だ。
高樹沙耶こと益戸育江容疑者も参議院選挙で堂々と医療用大麻を推進していたのだから、今回の逮捕でも否認をせずに、堂々と持論を展開してもらいたいものである。所詮初犯は執行猶予だからいい機会でもあると思うのだが。当然、筆者は現行法を指示しており、大麻の解禁には反対の立場である。
Written by 西郷正興
Photo by Lara Cores
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