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高級食パンが評判のパン屋には万引き癖が… コロナ禍で大打撃を受ける今、彼は衝動を抑えられるのか?|裁判傍聴

TABLO / 2020年5月15日 8時30分

高級食パンが評判のパン屋には万引き癖が… コロナ禍で大打撃を受ける今、彼は衝動を抑えられるのか?|裁判傍聴

この写真はイメージです

 

都内に以前からとても評判になっている一軒のパン屋があります。この店の目玉商品は食パン。1日に10本ほど数量限定で販売される食パンは1斤1000円という値段にも関わらず、すぐ売り切れてしまう人気商品です。

『地球の将来に自然と健康を残す』というキャッチフレーズを掲げているこの店の商品は、糖尿病やアレルギーを持つ人、生後6ヶ月の赤ちゃんでも安心して食べられるようにと開発されたものです。口コミサイトでは、小さい子どもを育てているという方が

「ここのパンがないと困る!」

とコメント、その味も絶賛していました。ヤフーニュースなどにも取り上げられた人気店なのです。

このパン屋を経営しつつ、他にも数店舗のプロデュースを手がけている佐藤裕太(仮名、裁判当時56歳)に、多数の前科があるという事実は誰も想像もできないと思います。

 

彼の成功の裏側にはどん底に堕ちた過去がありました。そして今もなお、以前の過ちを繰り返してしまうかもしれない危うさは消えてはいません。

「美味しそうだな、と思って…」

それが犯行動機でした。目の前には商品のフランクフルト。その時、財布には現金が3000円ほど入っていました。

彼はためらうことなくフランクフルトをカバンの中に隠しこみました。そして精算を済ませることなく店外へ出ていきました。

彼にとって万引きは初めてのことではありません。平成16年から20年にかけての4年間に、彼は何度も万引きで捕まっています。犯行は手慣れたものでしたが、それを目撃されていたために彼は現行犯逮捕されました。

 

参考記事:ここはラブホテル!? いや、パン屋だ!! ありえない振り幅の居抜き物件を北九州で発見したぞっ!|Mr.tsubaking | TABLO

 

この時、彼の生活は逼迫していました。独立してパン屋を開業したものの売上が上がらず、息子からの仕送りで生活をしている有り様でした。

新商品の開発をしても、売れる見込みはありません。明日どうなるかもわからない日々の中で、昔手を染めていた悪癖が甦ってしまいました。

逮捕された日からおよそ3か月後、彼の店はヤフーで取り上げられました。それから都内でも有数の人気店となったのです。

 

「以前に何度も万引きで捕まりました。あの頃は父と母がいっぺんに亡くなって精神的におかしくなっていて、投げやりになってました」

平成20年を最後に、一旦は万引き癖は鳴りを潜めました。

「勤め始めたこともあって、収入も精神も安定しました。妻も子どもも応援してくれていて、万引きをすることもなくなりました」

その後に独立して生活が不安定になったことで、一度は安定を取り戻した彼の精神はまた平衡を崩してしまったようです。もしまた平衡を崩したら…検察官も弁護人もその点を不安視していました。

――もしまた経営難に陥ったらどうしますか?(検察官)

「昔は失敗をいつも誰かのせいにして投げやりになってました。今はもう他人のせいにはしません」

――次またやったら今度は前とは違った意味でヤフーに載ります。それはわかりますよね?

「もう絶対やりません。店の名前に傷はつけません」

――もし自分の店のパンが万引きされたらどう思いますか?

「…子どもたちのために心をこめて作っています」

――きっと今は仕事が軌道に乗ってるからやらないと思います。でもあなたは追い込まれた時に犯罪に走る傾向があること、これは自覚してください。経営が傾けばまたやるかもしれない。有名になればなるほどマスコミに騒がれます。奥さんでも息子さんでも頼れる時は頼ってください。申し訳ない、なんて思わなくていいですから。弱いところは出していいですから。もう絶対にやらないでくださいね。

 

関連記事:「お金がない…」を理由に犯罪に走る老人の裁判は毎日のように行われている “明日、死ぬかもしれない”という人々に虚しく響く裁きの声 | TABLO

 

コロナ禍の中で、飲食業界は大きな打撃を受けています。彼の店も例外ではないはずです。もしまた彼が窮地に追い込まれたら、その時にどんな行動を取るのかはわかりません。

彼は弱い人間です。その弱さゆえに過ちを犯しました。しかし人は誰であれ失敗をするものです。法に基づいて人の行いを裁くことはできても、彼の弱さを裁くことは誰にもできません。(取材・文◎鈴木孔明)

 

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