NMB48須藤凜々花が総選挙で結婚宣言した背景を考えてみた|ほぼ週刊吉田豪
TABLO / 2017年6月19日 20時2分
須藤凛々花がAKB48選抜総選挙のスピーチで結婚宣言をブチかました、このタイミングで彼女の哲学書『人生を危険にさらせ!』(16年/幻冬舎)を読み直してみたら、非常に興味深い記述を発見しました。彼女がセンターになったNMB48のシングル『ドリアン少年』について、政治社会学者の堀内進之介とこんな会話をしていたわけです。
「わたしは現に、この人を愛している。それはもうどうにも動かせない事実。そう、恋は『落ちる』ものなんです。わたしにとっては、その事実こそが大事。誰かと比較して、世間一般の尺度で考えて、彼がどんな人かってことは関係ない。彼がそこにいて、もうその存在から目が離せなくなっていて、愛おしい。そしてわたしは、その事実に殉じよう。わたしはこの人が好き! そういうメッセージが、この曲には込められているんです」(須藤凛々花)
「ふむふむ。わたしはこの人と現に恋に落ちてしまっている。愛してしまっている。そしてそのことに誠実でありたい、ってことですかね」(堀内進之介)
「そうなんです。まあわたし自身、世の中からズレることにそんなに抵抗がないっていう性格もあるんだと思うんですけど、でも、この自分の底から湧き上がってくる思い? みたいなものを、他人の評価を気にして誤魔化すのはやっぱりよくないと思うんですよね。だってわたしたちみんな、いつかは死んじゃうんですよ? 後悔しないように生きなきゃ!」(須藤凛々花)
......もはや今回の結婚宣言に対する解説でしかない気がしてくる、この発言。恋に落ちたら相手の職業も年齢も関係ないし、自分のアイドルという職業も関係ない。彼女は基本的にこういう考え方をしている人だったわけですよ。
そして今回の結婚宣言で、彼女のみならず裏にいるはずの大人に怒っている人も多いみたいなんですけど、これは別に大人がやらせたってことではないとボクは思っていて。
当時、『ドリアン少年』でセンターになったのは枕営業をしたからじゃないか、りりぽんじゃなくて枕ぽんだ!とネットで叩かれたとき、彼女はこうつぶやいていたわけですよ。
「操り人形になるのは嫌。
扱い辛い爆弾で結構。
大人や権力に背を向けてでも
私は私のことを私として接してくれるみんなの方を向いていたい。
そして、みんなと自分に正直でいたい」
「バカを見たって枕ぽんと言われたって正直でいますぜ。
一生懸命、美しい嘘で塗り固めて生きたってどうせ死ぬんだから。
経験はありません。処女です」
日本語ラップが好きで、MC漢 a.k.a. GAMIの『ヒップホップ・ドリーム』(15年/河出書房新社)に共感し、ここまで言っていた人が、果たして大人の操り人形になるものなのかなー、と。
ボクはNMBの木下百花という人と交流があるんですけど、あの人を見ている限り、どれだけ好き勝手なことをやっても、それが面白いものでさえあれば大人が黙認するグループに見えるんですよね。彼女が結婚宣言することがわかっていたのに、そこにゴーサインを出した大人に対して怒るメンバーの気持ちもわかるんですよ。
でも、48グループというか秋元康自身が「面白ければ全て良し」的な発想の人だし、そもそも「誰かが総選挙のスピーチで結婚宣言したら面白い」と公言していたぐらいなので、いまこうして彼女の結婚宣言が議論になっていることも、あの人は「面白いことになった!」と思っているはず。
あと、『人生を危険にさらせ!』では「ファンの皆さんには、永続とは言わないまでも、できるだけ長く、しかも、変わっていくわたしも含めて、それとして愛してほしいなぁ」という発言も印象深かったんですけど、結婚して子供もいる80年代アイドルのコンサートに中年ヲタが多数集まっている光景を見ている人間からすると、それも不可能じゃないと思ってます。
Written by 吉田豪
Photo by ドリアン少年
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